村上市が今のように鮭で有名なったきっかけは江戸時代にさかのぼります。村上藩の財源として鮭漁の運上金は大きなものでしたが、江戸時代中頃に鮭がとれなくなるという事態が発生してしまいます。その時、村上藩士青砥武平治が鮭の自然保護増殖「種川の制」を考案し、財政危機を救ったという歴史があります。
(種川での鮭の自然ふ化増殖というのは、世界で初めての偉業でした)
そんな村上市には日本最初の鮭の博物館「イヨボヤ会館」があります。初めて名前を聞く人は「鮭の博物館なのにイヨボヤ?」と不思議に思う事でしょう。「イヨボヤ」とは村上の方言で鮭のことを指します。他にも鮭のオス、メスのことをそれぞれ「カナ」「メナ」と言ったり、サケのぬめりのことを「ナジ」と言ったりと、鮭に関する独自の言葉が多く存在します。
鮭と深く関わってきた地域だからこそ根付き伝承された言葉は今も使われているのです。
鮭を増殖させるための鮭漁では、人工的に採卵、授精、洗浄を行い、そして、卵に直射日光や紫外線が当たらないように暗い室内で飼育します。ここイヨボヤ会館では、鮭の人工ふ化の様子を公開している「サケのミニふ化場」があります。そこでは、発眼し卵の中に黒い目が見えるものや、卵から尾が飛び出している状態、産まれた稚魚など、時系列に鮭の成長を追う事が出来ます。
感動的な鮭のふ化の様子がみれるのは、10月上旬〜1月頃までの鮭漁の時期限定となっているので、興味のある方はお早めに!
地下1階の「三面川鮭観察自然館」ではなんと種川(三面川の支流)を遡上するサケをガラス越しに観察することが出来ます!
悠々と泳ぐサケの群れに加え、アユなどの他の小さな魚たちの姿もみえますね。自然のままの川の様子を直接横から覗けるのは貴重な体験です。
季節や天候に左右され、川の水量や濁り具合によっては川の中の様子が見えづらいこともあります。もしも川が見えにくい日でも人工河川の水槽もあるので川の状態に関係なく鮭の様子をクリアに観察可能です。時には鮭がクルクルと回って川の底を掘り産卵床を作っているところや、産卵シーンに出会えることも!
鮭の生態以外にも、昔の人々が鮭にどの様に関わり生きてきたのかが展示されています。鮭の歴史についてのミニシアター、漁具の展示、また、子供向けのクイズコーナーなど、鮭にまつわる内容が盛りだくさんとなっています。
(写真は昔の鮭漁に用いられた舟)
イヨボヤ会館の近くには和食処「悠流里(ゆるり)」があります。地元産の鮭やはらこを用いたメニュー、また、名産「村上牛」を用いた料理など、村上の美味しさを舌で感じる事が出来るお店です。写真は、こちらのお店の看板メニュー「はらこたっぷり丼」(2,000円)です。モンドセレクション3年連続金賞を受賞した特製のはらこをたっぷりのせています。
「はらこ」とは前述の「イヨボヤ」と同様に村上に古くから伝わる言葉で、一般的には「イクラ」のことを指します。丼ぶりいっぱいのはらこは一粒一粒がキラキラ輝きを放っていますね!新鮮なはらこは口の中でプツンとはじけ、コク深い旨みが口に広がります。
村上の人が手間暇かけて人工的にふ化させた鮭の稚魚は、三面川に放たれ、その後、オホーツク海やアラスカ湾など広い海を旅して、また三面川へと戻ってきます。鮭に母川回帰という不思議な性質があったからこそ、今もなお村上の人々にとって鮭は身近なものであり続けています。
神秘的な魚の鮭が今にもふ化する様子やガラス越しに種川で自由に泳ぎ回る鮭たちの様子を間近で観る体験はなかなか出来ません。イヨボヤ会館で鮭の生態や歴史を学び、その後に「悠流里」で鮭の美味しさを堪能するコースを体験してみてはいかがでしょうか?
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