『山小屋』に泊まる本格登山体験〜立山連峰一泊二日の旅

| 富山県

| 旅の専門家がお届けする観光情報

『山小屋』に泊まる本格登山体験〜立山連峰一泊二日の旅

『山小屋』に泊まる本格登山体験〜立山連峰一泊二日の旅

更新日:2014/06/15 12:23

SHIZUKOのプロフィール写真 SHIZUKO 舞台演出者

山小屋…、冒険心を駆り立てる響き。一度は泊まってみたいと思われる方は、少なくないのではないでしょうか。不便なことも多いけれど、山小屋だからこそ味わえる時間があります。
目指すは、北アルプスの立山連峰の主峰・雄山。
登山基地の室堂から出発して『一の越山荘』に一泊。翌日、3003メートルの雄山にアタックするプランをご紹介します。

立山黒部アルペンルートの中間地点・室堂からスタート

立山黒部アルペンルートの中間地点・室堂からスタート

写真:SHIZUKO

地図を見る

北アルプスの中央に位置する立山連峰は、3000メートル級の山々が連なる『天空』ともいえる場所。日本有数の高地です。そこには、普段は写真でしかお目にかかれない極上の風景が広がり、まさに『別天地』と呼ぶにふさわしい場所です。

登山経験がないと「自分の目で見るのは無理!だって、登山のためのトレーニングを積んで、テントに寝袋、食糧と、重いザックを背負って歩くかなくちゃいけないんでしょう。そんな厳しい行程は無理…」と、思いがち。

でも、ありがたいことに立山は、登山家でなくても、これから始まる素晴らしい景色を堪能させてくれる準備が整っています。

酷暑の地上を離れ、爽やかな空気の中で過ごす2日間は『室堂(むろどう)』から始まります。『室堂』は、人気の『立山黒部アルペンルート』の中間点であり、最もにぎわっている場所。室堂へは、『立山有料道路』を使っていきます。マイカー規制がされているので、起点の『桂台料金所』から、高原バスに揺られておよそ1時間。

バスを降りた瞬間から空気が全く違うと体感できるはず。7月・8月の平均気温が14度ですから、まさに『天空の別天地』です。日差しがあれば、寒くもなく、乾燥した爽やかな風に感動。

室堂の標高は2450メートル。いきなりバスで標高の高い場所に到着するので、すぐに歩き出すのはやや危険。『高度順応』をかねて、1時間ほど室堂でゆったり過ごしましょう。

室堂ターミナルには、コーヒーショップやお土産物屋さん、展望台もありますから、慌てずにちょっと休憩。目の前に広がる『雄山(おやま)』や『浄土山』の風景に、これからの素晴らしい時間のイメージトレーニングをするのもいいですね。また、『立山』の看板のそばには『立山玉殿(たまどの)の湧水』があり、日本名水百選の美味しい水を楽しめます。

時間に余裕があれば、多数整備されている散策コースの風景も素敵ですから、体力に自信のある方は歩いてみて下さい。

でも、まずは欲張らず、翌日の雄山登頂のために体調を整える方が得策かもしれないですね。

一の越山荘へ向けて、雪渓を超えて

一の越山荘へ向けて、雪渓を超えて

写真:SHIZUKO

地図を見る

高度に慣れたら、今夜の宿である山小屋『一の越(いちのこし)山荘』に向けて、歩き始めましょう。ゆっくり歩くと1時間半。ガツガツせずに風景を楽しみながら進みます。

整備された登山道は石畳。おかげで、風雪に荒れることなく登山者を頂上へと導いてくれます。気軽に行ける場所だといっても、底の厚い登山靴は絶対に必要です。室堂散策だけなら軽装でもいいですが、目指すは、霊峰立山の山頂・雄山ですから。旅が快適で楽しいものになるかどうかは、準備が8割。足元はしっかりと固めましょう。

しばらく歩くと、左手に日本最古の木造山荘『室堂山荘』。国の重要文化財に指定されています。

室堂山荘から、左下に降りていくと『玉殿の岩屋』があります。立山が修験道の場であったころには、修験者の宿泊所であった場所。手前の『虚空蔵窟(こくうぞうくつ)』には、十数体の石仏があり、強いパワーを感じられる場所。でも、今回は寄り道せずに、真っ直ぐに一の越を目指します。

夏でも消えない万年雪の雪渓が広がる登山道。足元に注意して歩きましょう。大小の雪渓を数か所通過した後、いよいよ山荘前の急坂。

山荘が見えて、さあ、あとひと踏ん張り!と思うのですが、風がかなり強く吹く場所でもあるので、寒いと感じたら、ザックを下ろして上着を1枚着ることをお勧めします。こまめな体温調節は、山歩きの肝心かなめです。

山小屋での過ごし方

山小屋での過ごし方

写真:SHIZUKO

地図を見る

『一の越山荘』の標高は2700メートル。室堂から約250メートル高度があがりました。

山小屋に到着したら、まずは、荷物を解いてほっと一息。寒風に吹かれて冷えた身体を温めたいのですが、残念ながらお風呂はありません。3000メートル近い高山にある山小屋、水の確保は容易ではありませんから当然ですね。そのためにも、大判のウエットティッシュを持参。全身をさっと拭いて、着替えてすっきり。ごみはもちろん持ち帰りです。

さっぱりしたところでゴロンと横になって休憩したいところですが、翌日の登頂に向けて、まだまだ高度順応を意識しましょう。防寒対策をして、山小屋のそばを軽く散策したり、ストレッチをしたり、晩御飯までの時間を有意義に過ごします。ご飯を食べた後は、すぐに眠くなるので、翌日の準備もこの時間にしましょう。縦走するのでなければ、山小屋で荷物を預かってもらえるので、登頂に必要なものと置いていくものを仕分け。

ご来光登頂をする人は、暗い道を歩くことになるので、ヘッドランプも必携。夜間出発しなくても、山小屋ではいつ必要となるかわからないので、必ず枕元に置いておきます。

ビールを買うこともできますが、もちろん山値段。高度が高く、気圧が低い場所では、いつもより酔いやすいので、控えめにいただいて下さいね。

山小屋の消灯時間は21時。眠い人も眠れない人も、布団に入って、体を横たえ、静かに眠りがやってくるのを待ちましょう。

360度の眺望を心に刻む、雄山山頂

360度の眺望を心に刻む、雄山山頂

写真:SHIZUKO

地図を見る

日の出とともに、山小屋の中はざわざわとにぎやかに。物音一つしない夜が明け、人々の活気が感じられます。

まずは飛び起きて、外へ出てみましょう。ご来光は一の越山荘からは見られませんが、遠くに見える『槍ヶ岳』や『笠ヶ岳』の稜線が赤く染まるさまは、それはそれは素晴らしい。山に泊まったものだけが味わえる、最高の瞬間です。それも、たった15分くらいの天体ショー。刻々と変わる山の彩りを見逃さず、心に刻んでおきましょう。

朝食のあとは、いよいよ『雄山』へ。

山小屋の前からガレ場(ゴロゴロの石だらけの道)が、垂直とはいかないまでも、かなりの急角度で続いています。目指す山頂の『雄山神社』は、ここからは見えません。登り切れるのか、ちょっと不安になりますが、ゆっくりゆっくり、カタツムリのように足を出していけば、必ず登頂できるはず。

高所ですから、何を着ていくかがかなり重要です。
お勧めは、速乾性の長そでシャツの上に半そでシャツ、その上にゴアテックスの上着という出で立ち。寒さに備えて薄いダウンやフリースも必ず持っていきましょう。夏場でも風が強くてかなり寒く感じる場所がありますので。

山小屋のある場所が『一の越』。山頂が『五の越』標高3003メートル。標高差303メートル。いよいよ、3000メートル越えの世界に突入です。

登るにつれて、眼下の世界がどんどん広がり、さっき出発した一の越はかなり小さく、遠くには富山湾が曲線を描く日本海。槍ヶ岳の向こうには、かすかに『富士山』も見えています。空気が薄く、もう、足がだるくて…と思う頃に、山頂の社務所が見えてきます。

やっとのことで登り切ると、自然と「ばんざーい!」「ヤッター!」と笑顔があふれます。

360度の眺望。この解放感と達成感。登り切ったものだけが見ることのできる風景。この感動が、人々を山へと駆り立てるのでしょう。

社務所で500円を収めて、山頂のお社で祝詞をあげていただき、お祓いを受けることができます。澄み切った清浄の空気と光の中で手を合わせていると、この地に立つことができた幸せと感動がジワーッと全身に染み入ってきます。

向かい側にある『浄土山』にも登頂し、登山を満喫

向かい側にある『浄土山』にも登頂し、登山を満喫

写真:SHIZUKO

地図を見る

雄山で感動体験をしたのち、いま登ってきた道をゆっくり下ります。山は、登りよりも下りが足にダメージを与えますから慎重に。さっきまであんなに苦しい息で歩いた道が、まるで別の道のよう。

山小屋まで下ったら、向かい側にある浄土山にも登頂してみましょう。雄山ほど厳しくはない山です。

登りながら振り返れば、さっき登った雄山の全容を見ることができます。苦しんだ登山道もくっきり。「あんなところ、よく登れたなー」と感慨もひとしおのはず。

登山家の方から見たら危なっかしい観光客なのでしょうが、山のマナーとルールを守れば、比較的簡単に本格的な山岳体験(写真は、山小屋前から見た朝焼けの山々)ができることはとてもありがたいです。

こんな体験ができるのも、長い年月と多くの人の血のにじむような努力のおかげです。

かつては前人未到の地として、また、神が宿る山として信仰の対象だった立山。現在のように、多くの人が気軽に雄大な自然を体感できるようになったのは、今からほんの50数年前。1956年には、室堂手前の追分までバス道が作られ、本格的な立山観光が可能になりました。

その後、日本の高度成長期の深刻な電源不足を解消するために計画された『黒部ダム』。その資材搬入のために『大町トンネル』が作られ、幾多の困難を超えて1963年に黒部ダムが完成。

そして、いよいよ『立山トンネル』という、立山の主峰・雄山の真下を貫くトンネル工事がはじまり、予定より2年遅れた1971年『立山黒部アルペンルート』が開通しました。巨額の費用と、多くの人々の力によって、今、我々は3000メートル級の山々を間近に感じることができます。

先人の偉業に感謝しつつ、極上体験できる天空の別天地への旅、思い切って一度お出かけ下さいね。

おわりに

山小屋ってどんなところだろうと興味を持っている方も多いと思います。本格的な登山の方も泊まっているので、迷惑をかけてはいけませんが、立山の一の越山荘なら、比較的簡単に山小屋体験ができます。
もちろん、登山靴と服装は手を抜いてはだめですが、山々に囲まれた中で過ごす一夜は、とても素晴らしい時間です。暮れゆく山と朝日に輝く空気、天気が良ければ満天の星があなたのものになりますから。

掲載内容は執筆時点のものです。 2013/07/15−2013/07/16 訪問

- PR -

条件を指定して検索

トラベルジェイピーで一緒に働きませんか?

- PR -

旅行ナビゲーター(在宅ライター)募集中!
この記事に関するお問い合わせ

- PR -