写真:万葉 りえ
地図を見る神戸市から西宮市の瀬戸内海側にたくさんの酒造メーカーが集まり、「灘(なだ)の生一本」として全国的に知られている灘五郷。ここを本拠地とするメーカーだけでなく、じつは灘以外の酒造メーカーもおいしいお酒を作るために灘五郷に工場を置くほどなのです。
もちろん、日本一の酒どころとなっています。
ここでおいしいお酒が生まれるのには、ちゃんとした理由があります。
まず、最高の酒米といわれている「山田錦」に代表される酒米の生産が、兵庫県は全国一であること。
そして、日本の名水百選になっている六甲の山から運ばれてくる宮水が、日本酒の仕込み水になっているのです。六甲の水はミネラルウオーターとしてペットボトルで売られていて、おいしい水の代表の一つとして知名度もありますよね。
そんな灘五郷のうちの御影郷にあるのが、ノーベル賞の晩餐会で提供される日本酒を醸造する株式会社 神戸酒心館(福寿)です。
写真:万葉 りえ
地図を見るこちらでは、早くから日本酒のある文化を広めるために東明蔵(入館無料)という施設を作っていました。
落ち着いた趣の庭先をぬけると、福寿の名前がついたこも樽がお出迎え。ほんのりと木の香が移ったお酒の良い香りがしてきそうですよね。
ここでは福寿の様々な味を試飲できるだけでなく、お酒に合う食べ物なども厳選して販売しています。また、予約をすれば醸造蔵の見学もできるようになっています。
福寿は創業から260年。
ここのお酒の特徴は、伝統製法を重んじていること。酒造りには「一麹(こうじ)、二酛(もと)、三造り」という有名な格言があります。麹造りが最も重要であるということで、麹造りを二百年以上前と変わらず今も完全手作業で行っているのです。
写真:万葉 りえ
地図を見る七福神の一柱「福禄寿」に由来し、飲む人に「財運がもたらされますように」という願いも込めてつけられたという「福寿」のブランド名。現在は日本だけでなく、世界各国へ出荷されています。
いろいろな価格帯がある福寿の中で、最高級の大吟醸酒は1.8Lで一万円を超えます。これがノーベル賞の晩餐会で提供されたのなら「高ければおいしいのは当然」と思う方も多いでしょう。しかし、晩餐会で提供されたのは、福寿の中では中間クラスの「純米吟醸酒」なのです。
それなのに世界で認められた理由の一つとして、「生産量を追わず、おいしさを極めるために手造りによる丁寧な酒造り」をしてきたということが挙げられるでしょう。
また、このお酒は桜桃のようなフレッシュな香りがとても豊かで、和食だけでなくチーズやクリームを使った欧風の料理にもよく合うのです。それも、晩餐会の華やかな席に薦められた理由でしょう。
提供元:(株)神戸酒心館
地図を見る神戸酒心館(福寿)へは、阪神電鉄の石屋川駅で降りて、歩いて8分ほどで行けます。
りっぱな門構えに、灘の歴史がひしひしと感じられるのではないでしょうか。
御影郷には白鶴酒造や菊正宗酒造があり、それぞれに記念館や資料館があり見学施設も充実しています。酒造りの歴史を知るだけでなく、建物のつくりなどから懐かしい日本の風景も感じていただけるはず。
大手酒造会社の名前は全国的に知られているし、近くの酒店やスーパーでも手に入るとお思いでしょう。
しかし、灘まで足を運んで初めて、おいしくても量産しないお酒、蔵元まで来ないと飲めないお酒がいろいろあることを知る方が多いのです。
季節限定などもあるので出会いが楽しみですね。
提供元:(株)神戸酒心館
地図を見る灘五郷には、沢の鶴や松竹梅、他、全国新酒鑑評会で金賞をとっている所がいくつもあるので、おいしいお酒を探す楽しみが待っています。
神戸酒心館・福寿も、ノーベル賞晩餐会の日本酒に選ばれただけではありません。「全国新酒鑑評会 6年連続12回金賞受賞」という輝かしい実績を持っているのです。
また、全国区の酒造メーカーだけでなく、長く愛されている地酒のメーカーもたくさんあります。「酒蔵めぐり」という言葉がつかえるほど個性のある酒蔵が集まっているのです。
若い女性の間でも日本酒を楽しむ人が増えてきている昨今。蔵めぐりをしながら自分の好きな味が見つけられる場所など、そうそうないはずです!
市場に出回る前の「過熱していないお酒」がいただけるのも、蔵元ならでは。生まれたてのお酒だけがもつフレッシュなおいしさを、ぜひ味わってください!
行きたいけれど新酒が出る時期は忙しいという方のために。
灘の酒蔵では、新酒のままのおいしさを保つために冷蔵して保管している蔵元もあります。福寿ではそれをもっと進めて「凍結酒」というお酒も出しているんですよ。
創業は1751年。
地元神戸では、会社名もお酒の名前も同じ「福寿」として親しまれてきました。
しかし、この灘の地も阪神淡路大震災で甚大な被害を受けます。福寿も木造の蔵がすべて倒壊してしまうという大打撃を受けたのでした。
それでも、努力と支援により(株)神戸酒心館として再出発します。
そんな経緯をたどってきたので、ノーベル賞の晩餐会で提供されることが決まった時の喜びはひとしおだったことでしょう。ほかの酒造メーカーも同じように大きな被害を受けながら、おいしい日本酒を提供するために日夜努力しています。
灘は、仕込みの時期になるとほのかにお酒の香りが漂い、環境省がつくった「香りの風景100選」にも選ばれています。
愛飲者が世界へと広がっている日本酒。
ぜひ、神戸へ、灘五郷へ、世界でも認められたおいしさを味わいにいらしてください。
この記事を書いたナビゲーター
万葉 りえ
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