草円は、江戸晩期に建てられた 飛騨の古民家を移築再生した宿で、国の有形文化財にもなっています。特に、間口11間半、桁行7間半の存在感たっぷりの切妻入り母屋は、決して重苦しい感じは受けず、雪国の過酷な条件下でも力強く、且つ心優しく私たちを向かい入れてくれる趣があります。
源泉湯宿を守る会の会員宿でもあって、源泉掛け流し100%の異なる3つの源泉があり、炭酸浴も楽しむことができます。敷地内には、大浴場、貸切露天風呂(3つ)、少し離れた場所にある森の湯、更に敷地外には、休憩所にもなっている宿泊者専用の足湯「舎湯(やどりゆ)」もあり、1日中入りたい放題。
また、もらい湯という制度も導入されていて、時間制限で他に宿のお風呂に入る事が出来ます。
建物にはいると、広々したフロント前に囲炉裏付きの大きな座敷が2ヵ所。まずそこに通され、お茶とお菓子を頂きながらチェックイン。雪の季節は、冷え切って固まった体が溶けていく思いがします。
宿に置かれている家具調度品は、どれも歴史ある物で、1つ1つとても綺麗に使われているのがわかり、その家具たちに、可愛い手作りの和小物が飾られていて、この宿のセンスの良さが感じられます。囲炉裏の横にはそれらの小物類が購入できるコーナーもあり。
廊下には、薪ストーブにあたりながら休憩できるスペースや、ドリンク類が冷やされている水舟なども設置されていて、遊び心も忘れていません。
3タイプ全15室ある部屋は、一部屋一部屋違う間取りでそれぞれ異なる造りとなっています。
母屋内のフロントの一番近くにある、開放感たっぷりの客室「煙香庵(えんこうあん)」は、風格と落ち着きのある部屋。広々とした2部屋と、明るい日差しが差し込む板の間、心地よい古き良き雰囲気を纏い、静かな時間が過ごせるでしょう。
少し大きめのこたつの上には、これもこちらのおもてなしの1つ、3段になったお茶うけが。お茶うけと言っても、よくあるお土産用のお菓子などではありません。煮豆や塩コンブなど、宿で手作りされた物が出されます。更に「どうぞ、ごゆっくりお寛ぎくださいませ」のメッセージも。
なんとニクイ演出!
自慢のお風呂は、自家源泉の大浴場(福の湯)と、福地温泉の共有源泉の三つの貸切露天風呂がありますが、中でもオススメは、宿の前を流れる平湯川に沿って少し歩いた所にある「森の湯」。
巨石と杉の枕でできた「岩の湯」と近隣の神岡鉱山で利用していた、肉厚の鉄釜を利用した「釜の湯」があり、森の静けさと澄んだ空気に包まれた贅沢なロケーション。川のせせらぎや風の音、鳥の声を楽しむ事も出来る露天風呂です。
寒い季節は、入るのに多少勇気が要りますが、星空を眺めながらじっくりとお湯に浸かれば、体の芯からポカポカと温まる事間違いなし。
夕食、朝食ともに木庵という別棟の1階にある、個室風の囲炉裏で頂きます。
地元の食材と季節を活かした郷土料理は、煮物、汁物、鍋物、焼き物、造りなど10種類ほど。素朴ながらもひと手間もふた手間もかけられ、1つ1つの量は少なくても満足感があります。特に飛騨の特産でもある飛騨牛は、炭火で焼くと旨さ倍増!
また、ご飯は昔ながらの釜戸で、薪を使って炊かれており、食事処の横にある2つの釜戸からは、ふんわりと美味しそうなご飯の香りが漂ってきます。
釜戸炊きのご飯は、ほっこりとした仕上がりと甘みがあって絶品。何よりのご馳走ですね。
福地温泉は、雪の季節のみならず、新緑の季節、花の季節、紅葉の季節とそれぞれに趣があり、違う顔を楽しむ事ができるでしょう。
多少交通の便が悪くても、静かに過ごすには絶好の場所。
東京からはバスを使うことも可能で、少し足を伸ばせば、穂高岳や飛騨高山、白川郷などの観光スポットへも行ける、意外と利便性の良い所なのです。
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