市比野温泉は、九州新幹線川内駅から車で20分ほどの薩摩川内市樋脇町にあります。江戸時代に薩摩藩の島津氏によって温泉が開かれたのが始まりといわれ、およそ300年にわたり湯治場として広く愛されてきた、由緒ある山間部の静かな温泉地です。
規模の大きい温泉旅館もありますが、いわゆる「温泉街」は形成されておらず、どちらかというと、住民が暮らす一般的な町中に小さな温泉旅館が点在している感じです。過度な賑やかさのない静かで素朴な温泉地に滞在したいという方には、向いているかもしれません。「上之湯」「下之湯」をはじめとした格安で利用できる市営の公衆浴場もあるので、気軽に立ち寄り湯を楽しむこともできます。
市比野温泉内の数ある温泉旅館の中で、格安で宿泊可能な温泉旅館でありながら、気軽に立ち寄り湯も可能な「元湯・丸山温泉」。
市比野の中心部、県道39号線沿いに立地していて案内看板も建っているので見つけやすいと思いますが、逆に案内看板が無ければ此処が温泉だとは決して分からない程に温泉旅館らしくないというか、外観は一般家屋のようです。
県道沿いの駐車場から坂道を下っていくと、ちょっとした洋風庭園のような一角に辿りつきます。手前の建物が受付で奥の建物が湯小屋になります。入浴料金は150円也。
それでは肝心のお風呂をご紹介☆
浴室は青を基調としたタイル張り。浴場は城後川のすぐ脇に建っていて、窓の外から心地よい風とともに適度に採光されていて、中央に配置された浴槽の湯をキラキラと照らしています。
常時ドバドバと注がれている温泉は、源泉かけ流しの正真正銘の本物の温泉。浴槽はやや深めで、床に腰掛けると口元あたりまでしっかりと浸かることができます。お湯は無色透明で「しっかり熱い」というのが印象で、短時間浸かっているだけでも体が火照ってきます。因みに源泉は48℃。
市比野温泉の最大の特徴は、お湯の透明感です。湯口から注がれる新鮮な温泉は清冽で一切の濁りがありません。まるでローションのようにツルツルスベスベで、いかにも肌に優しそうな爽快感たっぷりの湯は、一度浸かると病みつきになることでしょう。
丸山温泉では飲用も可能。湯口のお湯を口に含んでみると、とっても美味しいお湯であることが分かります。まるでミネラルウォーターを温めたものを飲んでいるかのような美味しさで、持ち帰って冷やして飲んだらどんなに美味しいだろうと誰しもが思うはずです。因みに温泉の脱衣所には、「お湯の持ち帰りは禁止いたします。2Lペットボトル2本まで」という持ち帰りОKなのかどうなのかよく分からない張り紙がされています。ペットボトル2本までは持ち帰り可能という意味ですが、飲用のため持ち帰るお客が後を絶たないほどに、人気のお湯であることの何よりの証拠だと思います。
市比野温泉の源泉は33箇所もあって薩摩川内市が集中管理しており、何処の温泉でも品質の良い湯を楽しむことができます。一般家庭への分湯も行われていて、こんなに美味しい温泉を日常生活の中で惜しみなく利用できるなんて羨ましいことこの上ないのですが、来訪者が温泉の持ち帰りたい場合は、道の駅『樋脇』の温泉スタンド「湯の滝」を利用しましょう。
無料で利用できますが、取水時間や取水量などのマナーを守りましょう。ご協力いただける方は、お気持ち程度の寸志を「ご縁箱」へお願いいたします。
温泉はそのどれもが飲用可能というわけではなく、安全で美味しく飲める温泉となると随分と限られてくると思います。その中にあって、あくまで私の経験則上の話になりますが、市比野温泉ほど清冽なミネラルウォーターのような美味しい温泉を私は他に知りません。飲用温泉としては全国屈指であると思います。
地元の人々によって大切に守られてきた豊かな自然の恩恵を、地元の人以外も気軽に享受できるなんて最高の贅沢だと思うのです。どうかこの先も住民の生活に根付き、多くの人に愛される温泉であってほしいと願います。
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