写真:井伊 たびを
地図を見る東武野田線の「豊四季駅」から、県道を西へ徒歩3分。うっそうと繁った森の入口に、第一鳥居がある。その横にいる大きなブロンズの馬が、まず出迎えてくれる。こちらが、「駒木(こまぎ)のおすわさん」という名で親しまれている「諏訪神社」の入口だ。
ちなみに、この「神馬」は、当神社に伝わる「源義家献馬」にまつわる記録に基づいて、社殿葺き替えの際に出た古銅を利用して鋳造された。
写真:井伊 たびを
地図を見る「諏訪神社」の創建は、平安時代のはじめ、大和国から高市皇子の後裔となる部族たちが、新天地を求めてこの下総の大堀川のほとり、森も水も豊かで肥沃なこの地に移住し、田畑を耕し農業を営んで集落を形成した時まで遡るとされる。
西の都から移住してきた人々は、新しい土地の心のよりどころとして、ここ東方へ行くにあたり、信濃国諏訪大社より御神額を授かった。これがここ「諏訪神社」の始まりで、記録によると平城天皇の大同2年(807年)のことである。
それ以来、「諏訪神社」は住民の信仰の中心となり、深い信仰に支えられて、平成18年には御鎮座からちょうど1200年を迎えた。
御祭神は、「健御名方富命(たけみなかたとみのみこと)」で、境内は約1万坪ある。うっそうと繁る大樹は、無言にして1200年あまりの悠久の歴史を物語ってくる。
写真:井伊 たびを
地図を見る当神社には古くから、「御神水」への篤い信仰が受け継がれている。天保12年(1840年)五月、江戸の文人「友田次寛」が、その著「小金紀行」で「神垣の 杉のうつろの 真清水は つきぬ恵みの ためしなるらむ」と著しているほどだ。この水は清らかで、本当に美味しい。
先年、周囲の整備工事を行った折り、水質検査を専門所に依頼したところ、極めて良質との証明がなされたとか。もともと、この辺は一般に水質は良いようだが、「御神水」が特に良質というのは、御神縁ともいえそうだ。
写真:井伊 たびを
地図を見る長い表参道を三つある鳥居をくぐり抜けながら、うっそうと繁った森の中を進む。やがてたどり着く「神門」をくぐれば、左手に「手水社」がある。心身を清めたのち、拝殿へ進み行く途中に「源義家献馬」の像を見つける。
当社に伝わる話によると、寛治年間、通称「八幡太郎」と呼ばれた源義家(1039〜1106年)が、鎮守府将軍として奥州に向かう際、もともとここが当時、馬の産地であったため、この地で人と馬を集め、当神社前に戦勝を祈願して任地に赴いた。
その戦乱は、義家の武勇と恩情によって3年で終結した(後三年の役)。その後、都への帰り道、再び当神社に詣でて、「乗馬」と「馬具」を奉納し、従ってきた者達を労い、神恩に報謝した。その史実に基づき現したのが、この「源義家献馬」のブロンズ像だ。
ちなみに、この源義家は、源義経の四代前の祖先にあたる。また、徳川家康の「家」は、この義家の「家」から受け継いだとの説もある。
ところで、この像は、彫塑界の巨匠「北村西望先生」の第17回日展への出品作で、日展最後の出品作でもある。また、境内には他にもいくつかの像が、参詣者の心を和ませている。
写真:井伊 たびを
地図を見る当神社には、摂社や末社が多い。そのひとつである「姫宮神社」の御祭神は、安曇の地方に卓越した勢力を有した、「海神綿津見神」を祖とする、安曇族の女神「八坂刀売命」である。御名が示すとおり弥栄の神徳を称え奉る神様である。当地鎮座の後は、婦徳の高い神として、安産、育児等の神恩を称え仰がれている。
「諏訪神社」はむかしから、子供の成長の神、安産の神様として地域の熱心な信仰を集め、特に「子供の神さま」として名高い。それ故に「七五三参り」にも人気がある神社だ。これには「姫神さまの御神徳」が欠かせない。当神社に訪れたときには、この「姫神さま」にも「二礼二拍一礼」を忘れずにしたい。ちなみに「姫宮神社」の例祭は、1月20日である。
摂社、末社のほかには、祈雨、止雨など農耕神として信仰が篤い「雷神社」や、学業成就の信仰の篤い「天神社(天神さま)」や、福徳円満、諸業繁栄の神徳がある「恵比寿神社」などがある。
社殿は、江戸時代建築の典型的なもので、優雅を極め、棟梁は本殿・弊殿を多古の文蔵(国の重文も手がけている)、拝殿は八木の文蔵であるとされる。これらは、市の文化財第一号に指定されている。外拝殿と土間拝殿は、昭和50年の増築であり、随神門は平成16年の竣工である。
境内のうっそうとした森は、巨木に歴史を感じ、若い木々には無限の発展を感じる。ここに創り出される「小宇宙」とも呼べる時空に、訪れた人は誰しも身を引き締め、やがて癒されていることを自覚するだろう。
一生懸命に頑張ってきた受験生が、最後の締めくくりとして訪れる「合格祈願の場所」としても格別オススメのスポットだ。もちろん、その折りには末社である「天神社」への参詣も、お忘れなく。
なお、当神社の大祭は、毎年8月22〜23日、盛大に執り行われる。
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(2024/12/5更新)
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