御室御所と呼ばれる京都「仁和寺」。平安時代から受け継がれる門跡寺院の誇りと風格を感じよう。

御室御所と呼ばれる京都「仁和寺」。平安時代から受け継がれる門跡寺院の誇りと風格を感じよう。

更新日:2013/07/31 09:58

「仁和寺」は888年に創建された真言宗御室派の総本山。光孝天皇により創建、息子の宇多天皇により完成。ここで出家されて「御室」とよばれる僧坊(住居)を建てられ初代住職として住まわれ、その後も明治時代に至るまで、代々皇族が歴代の門跡(住職)を務められ絶大な力を誇った。「御室桜」と徒然草に登場する「仁和寺にある法師」などが著明だが、それだけでないこのお寺の持つケタ違いのスケールと風雅を感じて欲しい。

総本山に相応しい堂々とした二王門

総本山に相応しい堂々とした二王門
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金閣寺、龍安寺から嵯峨野にまでつながる「きぬかけの路」に面した二王門は和様建築。堂々たる風格の中にどこか落ちついたムードを漂わせ、かつ大きな阿形と吽形の仁王像はまるで、邪悪な心を持つ者を戒めるかのように立っており、どこか格の高い重々しい空気を感じさせてくれる。
徳川三代将軍・家光公の寄進によるもので知恩院、南禅寺の三門とともに「京都三大門」に数えられている。

まずは金堂で御本尊の阿弥陀三尊にご挨拶。

まずは金堂で御本尊の阿弥陀三尊にご挨拶。
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仁和寺の境内はかなり広く、仁和寺御殿と寺院伽藍のエリアに分かれる。両方とも行くことをお勧めするが、まずはやはりお寺としてお参りするのが筋というもの。
朱色の中門から始まる寺院伽藍のエリアには、金堂、五重塔、御影堂、観音堂などの諸堂が立ち並ぶ。本堂にあたる金堂は、三代将軍・家光公の時代に仁和寺が再興されたころ、京都御所の「紫宸殿」を移築してきたもので国宝にも指定されている由緒正しき建築物。
屋根を本来の檜皮葺から瓦葺に変更するなど、寺院の本堂として使うために少々改造されているが、平安王朝の寝殿造りの様式を残しており、日本の建築史上きわめて重要な建物である。
御本尊の阿弥陀三尊像は平安時代初期の作で国宝。宇多天皇が先帝・光孝天皇の等身大の像を作らせたと伝わる。

御影堂も元は京都御所の「清涼殿」を移築してきたもので、真言宗の開祖「空海」のお像が祀られている。宝形造りの屋根は瓦ではなく檜皮葺のままなので金堂と見比べてみるのも良いだろう。

五重塔も末広がりではなく五層の屋根の大きさが同じという江戸期の様式で建てられている。どちらかと言えば細身なうえに木立の中に立っているので33mもあるとは思えないほどだが、凛とした存在感をもち境内を引き締めている。

仁和寺は「御室桜」がなくても「桜」づくし

仁和寺は「御室桜」がなくても「桜」づくし
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仁和寺といえば「桜」と言われるほど人気がある。中でもここ特有の「御室桜(おむろざくら)」は江戸時代中期に書かれた貝原益軒の「京城勝覧」で「春は此御境内の奥に八重桜多し。洛中洛外にて第一とす。」と絶賛されていたほど。
御室桜は境内の地盤が固く、深く根を張れないために樹高が低く花が間近で見られるのが特徴。
およそ200本の桜が満開になるのは毎年4月20日頃と遅く、華々しい京都の春の季節の最後を飾る。

そして、とことん「桜」づくしの仁和寺は、寺紋が「桜に二引両」から始まり、欄間の彫刻や飾り金具、襖絵や軒瓦、お守りに至るまで見事に桜で飾られているので「あっこんな所にも!」と新たな発見ができるかもしれない。

もちろん御室桜も堪能して頂きたいが、本当の仁和寺の良さを感じるなら春以外の季節に来られるのが良いだろう。

勅使門から一面に広がる白い砂に身も心も清められる

勅使門から一面に広がる白い砂に身も心も清められる
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御殿の中に入ると、白書院・黒書院・宸殿・霊明殿などの独立した建物を渡り廊下でつなぐという寝殿造りを見事に再現し、平安王朝の雰囲気に浸ることができる。

特にこの宸殿の南庭は、白い砂と松や杉を植えただけの簡素なところに、右近の橘・左近の桜を配し、静謐とした空間の中に天皇家が持つ清らかな威厳と風格というものを感じさせてくれる。

他の観光寺院では、まず見ることのできない独特なお庭なのだ。

仁和寺御殿の内部は「御所」そのもの

仁和寺御殿の内部は「御所」そのもの
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宸殿もかつて京都御所の御常御殿を下賜されて移築したものであったが明治20年に焼失。現在のものは明治〜大正時代にかけて再建されたものである。内部には美しい螺鈿細工、四季を表す優美な襖絵などに鮮やかに彩られ、見事に王朝の雅を再現していることからも、明治以降の御殿建築の傑作と称されている。
そして特筆すべきはこの「北庭」。目の前に広がる白砂・池・常緑樹・お茶室・で構成された、この非日常的な空気の漂う庭は時間のある限りゆっくりと鑑賞してほしい。
遠くに五重塔が見えることで、仁和寺のお寺と御殿が見事に融合する美しい風景にしばし見とれることだろう。

北庭の奥には歴代門跡の御位牌を祀る「霊明殿」があり、平安時代の白檀をつかった薬師如来像(国宝・非公開)が安置されている。

この他にも霊宝館には数多くの国宝、重要文化財を所蔵し、春・秋には一般公開される。

紅葉もかなり綺麗だが混雑しないので、秋の観光のルートに入れてみるのも良いだろう。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2013/07/02 訪問

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