城下町金沢。戦災にもあっておらず、官公庁や商業の中心地が、そのまま江戸時代の政治の中心地と重なる街としても知られます。
現在の街の賑わいの中に、江戸時代の面影が同居しており、街遊びと、いにしえを偲ぶ旅を同時進行で楽しめる稀有な街でもあります。現在の金沢の商業の中心地である香林坊は、金沢城のすぐ傍。そして、江戸時代に前田家の家臣である武士たちの住んでいた屋敷が保存されている長町は、香林坊の表通りから、ほんの一本道を隔てただけで、その趣ある街並みが目に飛び込んできます。
その長町の武家屋敷、実は冬の景色がもっとも美しく、風情があるのをご存知でしたか。
写真を見られて、冬場ではない武家屋敷跡をご存知の方は、雰囲気が違う…と感じられたことと思います。それは、土塀を覆う、薦(こも)と呼ばれる、藁で編まれた莚(むしろ)が掛かっているからです。
これがなんともいえない懐かしいような味わいを添え、街並みがますます江戸時代のままであるかのような雰囲気を醸し出す役割を果たすことになっています。この薦ですが、もちろん単なる飾りではなく、雪国では土蔵が傷みやすいので、それを保護するための実際に役目を持った冬支度の1つです。
特に、北陸地方の雪は水分を多く含みます。また雪も含む降水量が多く、冬季の湿度は平均で80パーセントを超えます。その雪にひと冬中埋もれてしまえば、土塀の表面が痛むのはもちろん、土塀の内部にも水分が浸透し、それが氷結すれば内側から損傷する原因になります。
金沢も、大雪の年は積雪が1メートルを越えることもあり、そんな大雪から土塀を守るために、積雪の始まる12月から雪の消える3月頃までこの薦掛けを行ってきたのです。
北陸では晩秋頃から、家族総出で、庭の樹木の雪吊りなど冬支度に精を出す光景が風物詩として今でも見られます。土塀が一般的だった江戸時代、武士たちも、冬支度の一つとして自分たちで薦掛けをしたことでしょう。
そんなことに思いを馳せながら歩くのも一興です。
さらに、雪も舞い始めれば幻想的で、ますます、タイムスリップしたような気分が味わえますよ。
それにしても、雪の舞う寒空の下、屋外の観光は辛すぎるような印象もあるかもしれません。でも、この長町武家屋敷跡はほんの小さな街なので、15分もあれば、一通り眺めて歩くことができます。
香林坊の百貨店大和やKORINBO109からもすぐですから、身体が芯から冷えきったとしても、あたたかな商業施設が近いと思えば安心しませんか。
休憩場所として筆者のおすすめするのは、この小さな武家屋敷跡の中にある、「九谷焼鏑木商舗」です。九谷焼のギャラリーになっていて、現代の素晴らしい九谷焼をただ眺めるもよし、販売もしているのでお土産を買うこともできます。訳あり品が安くかごに入って売られていていることも多いので、自分の普段遣いの食器をお買い得に手に入れてもいいでしょう。
九谷焼専門店だけあって、店員の方々の知識も豊富で、いろいろ質問をしながら納得する買い物ができる場所でもあります。
また、中にはカフェも併設されており、暖かい飲み物を飲んで冷えた身体を温めることもできますよ。営業時間などはMEMOの公式HPをご覧下さい。
さて、金沢には一般公開されている武家屋敷は数多くあれど、その中でも特に際立って美しい庭園で知られる野村家がこの長町武家屋敷跡にあります。
2009年、ミシュランの観光地格格付けで2つ星を獲得、また、米国の庭園専門誌「ジャーナル・オブ・ジャパニーズ・ガーデニング」誌の日本庭園ランキングで野村家の庭園は第3位にランクインされたことがあります。
冬場は、庭の樹木の雪吊りを楽しめるほか、また凍える季節ならではの、ピンと張り詰めた空気の緊張感は、武家屋敷の格式高さをいっそう威厳あるものに見せてくれます。
二階の茶室では抹茶をいただくこともできます(入場料の他に、別途料金)。茶室は、しっかりと暖房が効いているので、ゆっくり寛げます。入場料や開館時間はMEMOをご覧ください。
雪国金沢の冬ならではの、長町武家屋敷跡の魅力をお伝えしました。
北陸は積雪が多いだけではなく、水分を多く含んだ雪なので、積雪があるときは、長靴での観光をお勧めします。北海道などの乾いた雪とは違い、防水のないブーツではすぐに水が漏ってきてしまいます。また、ショートブーツも積雪の多いときに、上から雪が入ってきやすいのでおすすめしません。
北陸の人は、冬場はロングの長靴を履いているのが当たり前なので、もし天候がそこまで悪くならなくても長靴を履いているからといって恥ずかしい思いはしないはずです。北陸の冬は晴れる方が珍しいくらいなので、足元の準備をぜひ忘れずにおいでくださいね。
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(2024/9/18更新)
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