写真:鷹野 圭
地図を見る早戸川林道は“林道”といっても険しい山道というわけではなく、長い道のりではありますが基本は平坦。登山靴などの専門的な装備は必要なく、気軽に足を踏み入れることができます。また、ご覧の通りアスファルト舗装が施されていますが、この林道は冬季の間車両が一切入ってきません。そのため、鳥を見つけたら道のど真ん中で立ち止まって観察・撮影を楽しむことが可能! 三脚なども心置きなく立てることができます。
いざ足を踏み入れると、そこは左右を深い森に挟まれたとても静かな空間。それだけに鳴き声がよく響き、鳥を探しやすいのも嬉しいポイントです。道中の木の枝はもちろんのこと、眼下に見える湖や小川、上空などにも気を配りましょう。声が聞こえたらその場で立ち止まり、くまなく周囲をチェックすることをおススメします。
距離は、車両進入禁止で保全されているエリアだけでも2キロ以上。一本道なので迷うことはありませんが、トイレや自動販売機などの施設が一切ないので、その点だけは気を付けましょう。
早戸川緑道には宮ケ瀬湖に架かる2本の橋があり、いずれもかなりの高さを誇ります。下を見下ろせば、そこにはご覧のように深い森に囲まれたV字谷が……。さらに逆側には、緑と湖のコントラストが広がります。豊かで広大な自然景観は、関東の一角にいることを忘れさせてくれることでしょう。
ちなみにこの橋、バードウォッチャーの方がよく三脚と椅子を携えて待機しています。この渓谷に、非常に出会う機会の少ないレアな鳥 ヤマセミがよく現れるからです。ヤマセミは、あのカワセミの仲間で大きなトサカを持つ白黒模様の鳥。カワセミと同じく水中にダイブして魚を捕らえるのですが、警戒心が強くて人前に現れることが滅多にありません。この渓谷は橋から距離があり、人を恐れる必要がないためか、冬場のみならず四季を通じてそこそこの確率で出没します。もし時間に余裕がありましたら、橋の上で待ってみるのもいいでしょう。
では実際に、林道に現れる小鳥たちをご紹介しましょう。
代表的な種が写真のベニマシコ。メスは地味な薄褐色ですが、オスは目の周りが鮮やかな赤に、腹部の羽毛がその名の通り柔らかな紅色に染まり、とても美しい冬鳥として人気があります。都心の公園ではそう簡単に見られる鳥ではありませんが、冬の早戸川林道では主役と言ってもいいほど遭遇率が高いです。メスと共に道路沿いの木で実をついばんでいることが多いので、実のなる木を見かけたらそこでしばらく待機してみるのもいいかもしれません。
他には、首都圏でもお馴染みのアオジやツグミ、シロハラ、ホオジロ、モズなどはもちろん、山地を主な棲み家とするウソやカヤクグリなど、とにかく小鳥の種類が豊富です。また、猛禽類としては魚を獲るミサゴなどなどがまれに見られるほか、湖の水面近くにはよくカワセミが現れます。もちろん運にも左右されますが、片道2キロ強を歩くだけでも10種類ほどの鳥に出会うことが可能です。
探すコツは、とにかく鳴き声や草を掻き分ける音などを聞き逃さないこと。木が多く、止まっている状態のものを目だけで探し出すのはかなりの経験が必要なので、初めのうちは“耳”に頼るようにしましょう。
写真:鷹野 圭
地図を見るそこにいるのは、まさかカモシカ!?……と驚かれるかもしれませんが、残念ながら(?)ここは宮ケ瀬湖畔にある宮ケ瀬ビジターセンターの中。写真に写っているのはあくまで剥製です。しかし、ここで紹介されている動物たちは、どれも宮ケ瀬湖〜早戸川流域に生息しているものばかり。中央のニホンカモシカを始め、タヌキ、シカ、アナグマ、イノシシ、テンなど、警戒心が強く夜行性のものが多いので容易に会うことはできませんが、場合によっては日中に早戸川林道でバッタリ遭遇することもあります。
生きたカモシカやタヌキなど、都心に暮らしていると滅多に目にすることはなく誰もが一度は見てみたいと思われるでしょうが、ツキノワグマやイノシシなど危険な生きものもいますので気をつけたいところ。実際宮ケ瀬湖畔では、毎年のようにクマを見かけたという報告があがっています。
当然、バードウォッチング中にバッタリ……なんてこともあり得ないとはいえませんので、クマ除けの鈴やスプレーなどを持ち歩いた方がいいかもしれません。純度の高い自然林の中を歩くのは大変気持ちよくワクワクするものですが、危険と隣り合わせであることも忘れてはいけません。
写真:鷹野 圭
地図を見る写真はシカ肉の串焼き。日本でも割とメジャーなジビエ(野生鳥獣の食肉)として近年認知が広がりつつありますね。味は牛肉・豚肉とは一線を画す独特の風味があり、やや好みが別れるかもしれませんが、話のタネにぜひ一度は食べていただきたい逸品です。
宮ケ瀬湖畔園地近くの食堂や旅館街では、シカを始め、熊鍋やぼたん鍋(イノシシ肉の鍋料理)などのジビエ料理が楽しめ、山深くに来ていることをしみじみと実感できます。哺乳類のジビエが美味になるのは、冬眠に向けて栄養を蓄えるために木の実などを食べて脂ののった秋から晩冬にかけて。野生動物なので常にメニューに入っているわけではありませんが、この時期であれば比較的気軽に食べることができます。ほか、山菜料理や川魚料理、お蕎麦など、日本の山らしい料理が色々と楽しめる魅力的なスポットです。
早朝から早戸川緑道で鳥を探し、お昼はここで一休み……というのが一つのおすすめルートですね。
早戸川林道を含む宮ケ瀬湖周辺は、関東地方でも1、2を争う気軽に行ける山岳エリア。箱根や高尾山のような観光名所にはまだ至っていないため、人があふれることはなく、落ち着いた雰囲気の中で自然散策・バードウォッチングを楽しめます。都心にお住まいの方にとっては遠出することなく純粋な自然を楽しめる貴重なスポットといえるでしょう。ベニマシコを始めとした冬の小鳥たちは、晩秋から春先のサクラの季節頃までコンスタントに観察できます。
自家用車でなく公共交通機関で向かうなら、本厚木駅からバスに乗るルート一択。終点の「宮ケ瀬」で降りれば、目の前には宮ケ瀬湖畔園地と上記の飲食店街があり、早戸川林道も目と鼻の先です。先にお伝えしました通り林道に入るとトイレや飲食店が一切ないので、必要なものはバス停周辺で揃えるといいでしょう。
【アクセス】
小田急線「本厚木駅」より神奈川中央交通バス乗車、
終点「宮ケ瀬」より徒歩5分。
この記事の関連MEMO
- PR -
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索
(2024/9/9更新)
- 広告 -