この記事をごらんの方の中には、第二次大戦後のドイツが辿った歴史をご存知の方も多いことでしょう。
1990年までドイツは東西に分割されていました。今も続くドイツ連邦共和国と社会主義を標榜したドイツ民主共和国(旧東ドイツ。こちらでの略称はDDR)です。東西冷戦の影響を直に受けてしまった、歴史の徒花のような国家なので、ドイツ国内では今に至るまでポジティブな描写が少し難しいテーマです。
ベルリン市内は、そんな2つの国と同様に、終戦直後には連合国の4カ国によってさらに4分割して管理されていました。それはのちにベルリンの壁として視覚的にもはっきりした影として街に残ります。
今回ご紹介するのは、そんな戦後の情勢が作り出した国家とはいえ、オリジナリティあふれる国家に成長していった旧東ドイツを真正面から捉えた博物館。
内部はオスタルジー(ドイツ語で東を表すオストとノスタルジーとかけあわせた造語)の影響も見て取れますが、当時の生活習慣をとても中立的に、そして「リアル」に描写しています。
では内部をご紹介していきましょう。
博物館自体は半地下で広がっているので、入り口から進むと一帯を俯瞰できます。大まかな順路はありますが、フロアはそこまで広くありません。ですので、気になるテーマから順に見ていきましょう。
大半の展示には、該当項目の写真やキャッチコピーが壁に掲げてあります。壁についている扉や引き出しなどを開けていくと、詳細な解説文やイラストを観覧できます。
ただ眺めるだけでなく、こちら側からもアクションしつつの見学となるので、「何が出てくるかな」とちょっとワクワクしながら鑑賞することができます。解説だけでなく当時の物品も大量に展示してありますので、直感的に理解することができます。
展示物は、ベルリンの壁の仕組みなどもありますが大半は当時の日常生活に重点がおかれています。記事の冒頭でも触れましたが、この博物館は再統一後、一気に流布されたネガティブな旧東ドイツの姿ではなく、良かったにせよ悪かったにせよ「別々の国家だったあの頃」という視点で企画されています。映画「グッバイ・レーニン」をご覧になった方ならピンと来るかもしれませんが、「リアルな日常」の再現に力が入れられています。
日常生活の展示として例を挙げるなら、当時の新聞広告、ニュース番組、果てはファッションや海での休暇の過ごし方まで、扉や引き出しを開いた先に解説と共に展示されています。
その他にも、リビングルームが再現されていたり、当時よく乗られていた「トラバント」と言う車で東ベルリン市内をドライブするシミュレーションマシンがあったりもして、とても楽しいです。
こちらの展示ではノスタルジーに浸るだけではなく、政治的な側面からも「リアル」を冷静に見つめています。国民の相互監視を強いた「シュタージ」(国家保安省)について、政治犯の取り扱いについて、他国の共産党にあたる社会主義統一党の実態などについても大まかな解説は用意されています。
書記長専用の大きなリムジンカーやその執務室、当時の監獄や容疑者取調室も再現されています。当時の政策決定システムや、旧ソビエト連邦との関係もわかりやすく解説されているので、ぜひ注目してみてください。
当時のニュース映像は、映画館を模したスペースで鑑賞できます。
ドイツが再統一を達成してから、まだほんの25年ちょっとしか経っていません。冷戦構造の結果として小さなグループで作り上げられ、最後は吸収合併されてしまった旧東ドイツ。ただ、いくら人為的に作られたとはいえ40年間存続した国家です。ネガティブな面はあれど、資本主義下に生きる我々にとっては、もの珍しい発見もあります。そこに今一度目を向けて、世界の現状について考えるというのも悪くないかもしれません。
ベルリン中央駅から都市近郊電車S5番もしくはS7番に乗り2つ目のハッケシャーマルクト駅(Hackescher Markt)で下車。駅前からは川沿いにベルリン大聖堂方面に歩いていくと450mほどで案内の看板が出てきます。
世界遺産の博物館島がすぐ近くにありますので、合わせての散策もおすすめです。
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(2024/12/13更新)
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