旧帝国ホテルなどを設計した近代建築家フランク・ロイド・ライトの手による建物で、ライトの住宅建築としては日本で唯一、ほぼ完璧な形で現存するものです。元々は灘の酒造家・山邑太左衛門の邸宅でしたが、のちに淀川製鋼所の所有となり「ヨドコウ迎賓館」と呼ばれるようになりました。ライトは「有機的建築」を理想として、周囲の自然と調和するように建物を設計しました。写真は1階バルコニーの様子で、風景画のように景色を切り取っているのがわかります。まるで海外のリゾート地へやって来たような雰囲気です。
2階の応接室には、ライト建築の見どころが凝縮されています。壁の一部に大谷石(おおやいし)が用いられ、細かな幾何学的模様が彫り込んであるなど随所にライトのこだわりが感じられます。窓につけられた「飾り銅板」は植物の葉をモチーフとして、光が木漏れ日のように透ける仕組みです。ライトは建材にもこだわりをもち、作り付けの棚にマホガニーを使用しました。日本に多くあるヒノキや松といった木目は装飾に適さないと考えていたようです。また、日本の湿度の高さを意識して、天井にはドアの形をした通風孔がたくさん設けられています。全体的に窓が多く、外の風景や山並みが楽しめるつくりになっています。
4階のバルコニーに上がると絶景が広がっています。遮るもののない山に建物があることを活かした設計で、芦屋の町はもちろん大阪湾までも見通せるようになっています。こちらのバルコニーは自由に見学できます。数十人を収容できるほどの広さがあるので、招待客を大勢まねいてのガーデン・パーティに使われていたのかもしれません。
こちらは3階西側廊下の様子。「ヨドコウ迎賓館」の窓や欄間には植物の葉をモチーフとした飾り銅板が多く使われています。ライトは、光を多く取り入れたい場所では銅板に透かしを入れ、木漏れ日が落ちるような演出をほどこしました。銅板の色は緑に近づけるため、緑青(ろくしょう)というサビをわざと発生させるなど、細部へのこだわりが感じられます。光に透ける美しい影が見事です。
「ヨドコウ迎賓館」は阪急電鉄「芦屋川」駅から歩いてわずか10分の距離です。北の山並みを見上げれば遠くからでもその外観が見えるので、迷うこともありません。「ライト坂」を上がり敷地を中へ進んでいくと、見晴らしの良い景色とどっしりした建物のエントランスはすぐそこです。車で向かうなら有馬温泉や芦屋温泉が近くにありますので、温泉からの帰り道に足を伸ばしてみるのもおすすめです。
いかがでしたでしょうか。「ヨドコウ迎賓館」はその美しい建築だけでなく、立地をいかした眺望も魅力です。まるで中世ヨーロッパの邸宅にいるような、異国情緒あふれる景観で「海外気分」を手軽に味わってみる休日はいかがでしょう。
この記事の関連MEMO
- PR -
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索
(2024/9/9更新)
- 広告 -