ロシアのセルギエフ・ポサード教会群で美しい宗教世界に酔いしれよう!

ロシアのセルギエフ・ポサード教会群で美しい宗教世界に酔いしれよう!

更新日:2016/02/03 14:48

菊池 模糊のプロフィール写真 菊池 模糊 旅ライター、旅ブロガー、写真家
モスクワの北東70kmにあるセルギエフ・ポサードは、非常に美しい教会群を見ることができる貴重な宗教都市です。
モスクワから唯一日帰りできる「黄金の輪」の観光地でもあり、「セルギエフ・ポサードの至聖三者セルギイ大修道院の建築的遺産群」として世界遺産に指定されています。
交通の便も良く、ロシア正教の本格的な宗教世界を存分に味わえる場所として、おすすめします。

セルギエフ・ポサード概要

セルギエフ・ポサード概要

写真:菊池 模糊

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モスクワの北東部に「黄金の環」と呼ばれる古い都市がいくつもあります。
中世以来、ロシア諸公国の首都など重要な役割を果たした場所で、いずれも城塞(クレムリン)や修道院・教会と町並みで構成され、ロシアの宗教・芸術・建築などの文化揺籃の地となりました。

中でもセルギエフ・ポサードは、ひときわ美しい宗教都市で、モスクワから日帰り観光ができる立地条件にあるため、多くの巡礼者や観光客で賑わいます。
ここは典型的な門前町で、至聖三者聖セルギイ修道院本館・ウスペンスキー聖堂・鐘楼・大食堂・小教会・小修道院・総主教館・博物館・土産物店など多くの建物が、城塞内に林立しています。

ここは、ロシア革命後は国有化され、一時、閉鎖されていました。
1945年に、大修道院跡はロシア正教会に返還され、1960〜70年代にかけて、復元修理が行われました。
現在は、ロシア正教の一大宗教センターとして発展し続けています。
いわば、観光客にとっては、神聖かつ華麗なロシア正教の宗教テーマパークのように感じられ、モスクワやサンクトペテルブルグとは全く異なった雰囲気を味わうことができます。
また、世界遺産に指定され、マトリョーシカ発祥の地でもあることから様々なお土産物も多く、買い物を楽しむこともできます。

至聖三者聖セルギイ修道院(トロイツキー聖堂)

至聖三者聖セルギイ修道院(トロイツキー聖堂)

写真:菊池 模糊

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正教会でラドネジの克肖者聖セルギイと呼ばれる聖人が、1340年代に森に分け入り小さな教会堂を建設したのが、セルギエフ・ポサードの起源です。
聖セルギイは熊とパンを分け合う清貧な生活を行い、至聖三者(トロイツキーすなわち父と子と聖霊)に生涯をささげました。
その後、聖セルギイの徳を慕う修道僧が多く集まり弟子となり、修道院を建設しました。
聖セルギイは、ロシアをモンゴルの支配から守ったとされることから、守護聖人として崇敬されました。その死後、ロシア正教会により列聖され、遺体は不朽体として至聖三者聖セルギイ修道院に収められました。
そして、ロシア正教会の中心的修道院として発展し、その周囲に新たな教会や鐘楼が建てられ、門前町が形成されていき、「黄金の環」のひとつとなりました。

現在でも、聖セルギイの不朽体が収められている聖櫃にお参りするのが、セルギエフ・ポサードへの巡礼者の大きな目的です。
写真のように至聖三者聖セルギイ修道院はシンプルな外観で、清貧の聖者にふさわしいものです。
内部は写真撮影禁止で、私語も厳禁です。きわめて厳粛なムードに身が引き締まります。
観光客は、ロシア正教の信者が順番にお参りし修道僧から祝福を受けるのを見学することができます。
ロシア正教の聖地として有名な場所ですが、意外に小さな内部で、イコンや聖櫃、聖具などが見られ、とても敬虔な雰囲気に包まれています。

ウスペンスキー聖堂(生神女就寝大聖堂)

ウスペンスキー聖堂(生神女就寝大聖堂)

写真:菊池 模糊

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16世紀には、至聖三者聖セルギイ修道院の横に、ウスペンスキー聖堂(生神女就寝大聖堂)が建設されました。
ウスペンスキーとは、ロシア語で「永眠」を意味するウスペニイェに由来し、ウスペンスキー大聖堂とは、カトリックにおける聖母マリア被昇天教会にあたります。
ここセルギエフ・ポサードのウスペンスキー聖堂の外観は、キリストをあらわす金色屋根を中心に、周囲に聖母マリアをあらわす青色屋根が配された、とてもポップな色合いの美しいもので、まるでおとぎの国のお城のようです。(写真参照)

聖堂内部は、イコンで覆われた壁(イコノスタシス)が印象的で、びっしりと絵が描き込まれています。
セルギエフ・ポサードの建物は、どれも内部にはイコンが描かれていますが、中でもウスペンスキー聖堂のイコノスタシスが最も見事で荘厳そのものです。
このイコノスタシスは、主に17世紀に作られたもので、近世ロシアの代表的画家シモン・ウシャコフの最高傑作とされています。

また、内部の入口近くには、ロシア正教の普及に尽くし膨大な著作・翻訳があるマクシム・グレクの聖櫃があります。
彼の業績を記念して、その聖櫃の上には、石で作られたギリシア語・ラテン語・ロシア語の三つの聖書がありますので、忘れないように見学しましょう。

大食堂教会(トンペザ聖堂)

大食堂教会(トンペザ聖堂)

写真:菊池 模糊

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至聖三者聖セルギイ修道院のすぐ横に、大食堂教会があります。
修道僧達の食堂だったものですが、非常に豪華な建物です。これは、皇帝などの迎賓館としての機能を有していたからです。
若き日のピョートル大帝も、17世紀末に政争に巻き込まれ、この修道院に避難してきました。こうした場合、皇帝の御成御殿としての役割を果たしたのです。

この大食堂は、中央に柱などの支えが無い広い室内空間を誇り、当時ロシア最大規模510平方mもありました。教会の機能も有し、いろいろな奇跡が起こった場所であると伝承されています。
内部装飾も素晴らしく、中央室の天井や壁画は圧巻です。(写真参照)
また、キリストの板絵の像をはじめとして宗教画や聖櫃などが見られ、奥の祭壇は金色の装飾に飾られたイコンで埋め尽くされています。

鐘楼など

鐘楼など

写真:菊池 模糊

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セルギエフ・ポサードの中心に立ち、もっとも目立つ建物が鐘楼です。
これは、高さ88mあり、建設当時は、ロシア一の高層建築でした。
色合いも白色と水色を主体とし、金色の屋根が乗っている、とても素敵な塔屋です。

鐘楼のすぐ横には、聖水の湧き出る泉があります。ロシア正教の信者の方は、ここで聖水をいただき、ペットボトルで持ち帰る人もいます。
鐘楼の向かい側には、ベージュ色の博物館があります。ここには、聖具や宗教画が展示されており、大きな土産物店も併設されています。
その他、上部に物見台を有するドゥホフスカヤ聖堂、司祭などが執務する総主教館、宗教学校、宿舎、聖人の墓、地面に置かれた梵鐘、フレスコ画に彩られた門など、興味尽きない構造物がたくさんあります。

セルギエフ・ポサードの中にある大小の土産物店を見て回るのも楽しいものです。
中でも、マトリョーシカと呼ばれる入れ子人形型人形は、日本の箱根細工人形を参考にして、ここで修道士が作成したのがはじまりとされており、博物館にはそのマトリョーシカ第一号が飾られています。名物土産として、様々な種類がありますので、じっくりと吟味し好みのデザインのものを選んでみましょう。
イコンのレプリカも、ここならではの独特のお土産としておすすめします。
また、本屋もありますので、絵葉書や写真集そしてロシア正教の雰囲気漂う絵本や童話本などを選んで買われるのも一興です。

最後に

セルギエフ・ポサードは、モスクワから鉄道またはバスで行くことができます。また、巨大ホテルは無いものの、小さなホテルはたくさんあります。
モスクワのホテルに泊まって日帰り観光するのが身軽で便利ですが、モスクワは道路の渋滞に慢性的に悩まされていますので、時間的余裕をもって行動してください。

セルギエフ・ポサードの城塞に囲まれた場所に入るのは有料です。
さらに写真を撮りたい場合は、入場券とは別にカメラチケットの購入が必要で、その場合おまけとして讃美歌のCDまたはDVDがついてきます。
なお、カメラチケットを購入しても、至聖三者聖セルギイ修道院の内部だけは撮影禁止ですので、注意してください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/10/29 訪問

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