奈良行き女子旅にオススメ!シャクナゲに彩られる女人高野「室生寺」

奈良行き女子旅にオススメ!シャクナゲに彩られる女人高野「室生寺」

更新日:2017/04/11 10:35

和山 光一のプロフィール写真 和山 光一 ブロガー
写真家の土門拳が生涯を通して愛し、心血を注いで撮影し続けた大和屈指の名刹「室生寺」。山と山の際の谷間に小ぶりなお堂が点在し、仁王門から金堂、山上の御影堂に至るまでの石段に、左右から優しく包む見事なシャクナゲが3000本も植えられています。4月下旬から5月中、貴婦人のように鮮烈に花をつけ、葉は下向きにくるりと巻いて花を引きたてます。まるでシャンデリアの参道のように華やぐ石段を歩いてみませんか。

女人高野「室生寺」の表門辺りはシャクナゲのトンネル

女人高野「室生寺」の表門辺りはシャクナゲのトンネル

写真:和山 光一

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奈良県宇陀市室生にある真言宗室生寺派大本山室生寺は、女人高野の名で知られる古くから女性に開放された名刹です。山号は「宀一山(べんいちさん)」といい、「室生山は天下無双の霊地、日本第一の秘所」と室生寺の宀一秘記に書かれています。

宇陀川に注ぐ室生川に架かる朱の太鼓橋からは、表門の白壁の向こうに清々しい杉木立が聳えるのが見え、橋を渡った先が浄土との印象を受けます。橋の袂には「別格本山女人高野室生寺」と記した石標が。空海の開いた女人禁制の高野山に対し、室生寺は、江戸時代5代将軍徳川綱吉の母桂昌院の力添えで女性の参詣が許されるようになりました。

女人高野「室生寺」の表門辺りはシャクナゲのトンネル

写真:和山 光一

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拝観料600円を払い境内に入ると、左手の表門辺りには、写真の護摩堂をはじめ知水庵、書院、本坊そして慶雲殿などが立ち並んでいます。そしてその前の石畳の参道沿いには、シャクナゲが百花繚乱しながらも清楚な佇まいを感じさせながら花のトンネルを作っています。

室生寺のシャクナゲは、町中の花屋さんの店頭に並ぶセイヨウシャクナゲと違いすべて日本産のホンシャクナゲで室生に自生しているもののほか、吉野地方から移植されています。色彩は地味ですが葉は下向きにくるりと巻いて派手さはなくとも心が和みます。

左右から優しく包むシャクナゲの花咲く石段「鎧坂」を上る

左右から優しく包むシャクナゲの花咲く石段「鎧坂」を上る

写真:和山 光一

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受付方向に戻り、今度は右手の仁王門を過ぎると、別世界が開けます。小高い丘の上に金堂が建ち、なだらかな石段が、上の方までつづいて行く。これがいわゆる「鎧坂」で、鎧のさねが重なったように見えるところから名付けられたといいます。大和三名段の一つ(あとの二つは談山神社と佛隆寺)とされる自然石が配された急な「鎧坂」は、五重塔にかけて両側にシャクナゲの花が咲き誇ります。

左右から優しく包むシャクナゲの花咲く石段「鎧坂」を上る

写真:和山 光一

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シャクナゲの花の色は濃く鮮やかな紅色から薄桃色になり、白に近い色になってやがて散っていきます。「鎧坂」を登りだすと石段の頂に「金堂」の屋根が見え、蓮台の上に、ゆったりと座した仏像のように美しく、室生寺の序章とも言える美しい景観を是非堪能してみてください。

室生寺最大の魅力「金堂」に雅な仏たちが集う

室生寺最大の魅力「金堂」に雅な仏たちが集う

写真:和山 光一

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金堂は平安時代初期の建築で、正面五間の単層寄棟造り、こけら葺き。前方を囲む礼堂部分は徳川時代につけられました。礼堂部分が斜面に張り出し、床下を長い束で支える「懸造」と呼ばれる手法で建てられています。正面から入る階段はなく、左手の石段を上り、左横の入口から回ると、金堂五仏が迎えてくれます。

内陣には、堂々とした一木造りの御本尊・釈迦如来立像を中心に、木の特徴を生かした、平安初期の仏像が林立し、参拝者を圧倒します。特に左側に立つ華麗な十一面観音像は、ほぼ等身大の一木造りの像。女性に特に人気が高く、下ぶくれしたふくよかなほおに小さな受け口、童顔のようでいて艶と深みのある神秘的な像です。本尊の背後にある大きな板壁には、珍しい帝釈天曼荼羅図が描かれています。室生寺が、藤原文化の宝庫といわれる所以がわかります。

その前の諸仏の膝あたり、まるで歌舞伎役者か中国京劇の俳優が見得を切っているかのようなユーモラスな十二神将像の一列に並ぶ姿は壮観です。なんといっても博物館のように厳重なケースの中にあるのではなく、手をのばせば触れらそうな近さが仏像好きにはたまらないお堂なのです。

シャクナゲが彩り添える室生寺のシンボル「五重塔」

シャクナゲが彩り添える室生寺のシンボル「五重塔」

写真:和山 光一

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山寺の寺院らしく金堂、弥勒堂を見て石段を上ったところに本堂(灌頂堂)、さらに石段を上ると五重塔があります。点在する小ぶりなお堂を神々しいばかりに美しく飾っているのが、石段と左右から優しく包むシャクナゲです。

通常の石段より幾分狭く、細かい感じで、その軽快な階段の果てに優美な塔をあおぐ景色は、室生寺の中で圧巻の景色です。法隆寺五重塔に次ぐ古塔であり、弘法大師が一夜にして建立したと伝承されています。総高16.1Mと屋外のものでは国内最小で、「手のひらにのるような」と言われており、通例の五重塔の三分の一で設計されています。それがけっして小さく見えないのは石段のせりあがりにあるとのこと。桧皮葺の屋根や丹塗りの組物と石段の調和のとれた造形は、奥深い樹林に包まれ、その前面をシャクナゲが彩りを添え、王朝の佳人にめぐり合ったような格別の風情があります。

この塔の頂上の九輪の上には、水煙のかわりに花笠のような天蓋が立ち、そのまわりに小さな宝鐸が吊りめぐらされていて珍しく、他に類がない塔なのです。

室生の信仰の始まりの地、雨と水をつかさどる龍神を祀る「室生龍穴神社」

室生の信仰の始まりの地、雨と水をつかさどる龍神を祀る「室生龍穴神社」

写真:和山 光一

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奥深い山と渓谷に囲まれた室生の地は、太古の火山活動によって形成された室生火山帯の中心部。こうした場所は古くから神々の坐ます聖地と仰がれていたといいます。

室生寺から東に室生川を1Kmほど遡った所に、室生寺より古い歴史を持つ古社「室生龍穴神社」があり、森の緑に深紅の拝殿が映え、厳かな雰囲気が漂います。雨と水をつかさどる龍神が棲むという「龍穴」を祀っていて、ご神体の龍穴は、同社の前の道をさらに500mほど道なりに進み、林道を入った先にあります。

室生の信仰の始まりの地、雨と水をつかさどる龍神を祀る「室生龍穴神社」

写真:和山 光一

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「吉祥龍穴」という案内板を目印にして、そこから階段を下ると、室生川に流れ込む清流を挟んで正面にぱっくりと開いた岩の裂け目があり、それが古代から神聖な「磐境」とされてきた「妙吉祥龍穴」です。龍神が棲むという龍穴の前には招雨瀑と呼ばれる滝が流れていて、奈良時代から平安時代にかけて朝廷の勅使により雨乞いの神事が営まれたといいます。室生寺はこの神社の神宮寺として呼ばれた時代もあったとのことです。

この龍は、もともと春日の猿沢池に棲んでいましたが、春日山に遷り、その後より清浄な場所を求めて室生の地に鎮まったといいます。木々を揺らす風と水の音しか聞こえない静かで厳かな場所です。

室生寺へと続く「室生古道」を歩いてみる

室生は奈良県東部、大和高原と宇陀山地に囲まれ、東は三重県境に近く交通はやや不便ですが、大自然に抱かれた室生寺は、日本有数の優雅さと気品に満ちています。

往時、室生寺へと続く東西南北からの参詣道にはそれぞれ末寺が置かれ、「室生参詣四門」と称し、最盛期には四方から参拝者が室生寺を目指したといいます。現在は主に南門の「佛隆寺」から、あるいは西門の「大野寺」からのルートが利用され、ハイキングコースとしても整備されています。

近鉄大阪線室生口大野駅からは7Km。羊腸のように七曲がり八曲がりする道は、室生川の蛇行にあわせて続き、やがて門前町がみえ、料理旅館、よもぎ餅を売る店が並びます。特に室生寺に来たら外せないのが、五木寛之著「百寺巡礼」でも紹介された室生名物「草もち」なので是非食べ歩きをしてみましょう。

室生寺は、春のシャクナゲの時期だけでなく、秋には全山紅葉し、冬の雪が金堂や五重塔を純白に飾る景色は水墨画のようです。土門拳や入江泰三といった写真家を魅了した四季折々の室生寺を皆さんの目で楽しんでみてください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/04/27 訪問

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