江戸時代末期に開業し、160年の歴史をもつ老舗旅館「蓬莱」が、2012年、老舗の風格はそのままに、「星野リゾート 界 熱海」として生まれ変わりました。さりげなくもいき届いたおもてなし、有馬・道後と並ぶ日本三大古泉のひとつ、伊豆山温泉「走り湯」の源泉かけ流しの湯殿、地の食材をふんだんに使った料理──、日本が誇る名旅館といっていいでしょう。相模湾を見下ろす熱海・伊豆山に位置する「星野リゾート 界 熱海」は、とっておきの日にぜひ足を運びたい宿のひとつです。
友人や恋人、家族と一緒の旅はもちろん楽しいものですが、時には一人で温泉にゆったり浸かって美味しいものを食べたい!と思う人も多いのではないでしょうか。でも、老舗旅館に一人で足を運ぶのは案外ハードルが高かったりするものです。
そんな時におすすめしたいのが、「星野リゾート 界 熱海」の別館「ヴィラ・デル・ソル」への宿泊です。
写真:Aya Hasegawa
地図を見る同じ「界 熱海」の名を持ちながら、本館と別館「ヴィラ・デル・ソル」では、一見、同じ宿とは思えないくらい雰囲気が異なります(そのギャップがまた面白いのです)。
洋館の「ヴィラ・デル・ソル」は、海辺に佇むオーベルジュ。ダイニングでは、近海であがった魚介を使った、オリジナリティあふれるフレンチを提供しています。もちろん、本館の名湯も利用可能です。
「なぜここに洋館が!?」と思われる方も多いかと思いますが、「ヴィラ・デル・ソル」のダイニングのある建物は、紀伊徳川家の第15代当主・徳川頼倫(よりみち)の、私設の西洋式図書館「南葵(なんき)文庫」を移築したもの。由緒ある歴史的建築物は、2008年に国の登録有形文化財に指定されました。
館内の調度品も素敵です。マントルピースをしつらえ、マティスの巣素描画が飾られたサロンは居心地抜群で、あたたかみのある上質な時間を彩ってくれます。隣接するバーカウンターにはセルフサービスで淹れられるコーヒー、紅茶が用意されているのもうれしいですね。ここで過ごす時間は、旅のハイライトともいえる特別な時間になりそうです。
ちなみに、本館と別館はつながっていますが、入口はまったく別の場所にあります。熱海駅からタクシーを利用する際は、必ず、別館に行く旨を伝えてくださいね!
写真:Aya Hasegawa
地図を見る「界 熱海」には、「走り湯」と「古々比の瀧」(こごいのゆ)という2つの浴場があります。冒頭でも触れましたが、こちらの温泉は名湯中の名湯! 雰囲気がよければ、お湯の善し悪し、泉質には興味がないという人も多いと思いますが、入ってみればその違いに気づくはずです。
日本三大古泉の名を冠する「走り湯」は、ヒノキの丸太組みの内湯。森の中にいるような安らぎと、木々の向こうに見える海の景観は、離れがたくなってしまうくらい素敵な空間です。自然に抱かれるような、至福の湯あみを楽しんでください。
2003年に誕生した、もうひとつの露天風呂「古々比の瀧」は、2020年東京五輪・パラリンピックの主会場となる新国立競技場の建設計画でデザイン案が採用された、建築家の隈研吾氏のデザインによるもの。空間の境界を廃するように、脱衣所、洗い場、浴槽が横一列に並ぶ直線的なデザインで、また、脱衣所と湯殿はガラス板のみで仕切られています。前衛的な美しさ、建築的なおもしろさはもちろんですが、こちらも自然と一体になれる開放感が魅力です。
別館からは階段を登っていくかたちになりますが、緑に囲まれた石の階段も風情あり!です。お待ちかねの湯殿までの「冒険」を堪能してください。
2つの湯殿のちょうど繋ぐように、空中湯上がり処「青海テラス」という休憩所があります。海に向かって空中に浮かぶように張り出したテラスは、眼下には雄大な相模湾をのぞむ格好の湯上がり処。そこに供えられている小さい冷蔵庫の中にはジュースやスポーツドリンク、ビールが入っていて宿泊しているゲストは、自由に飲むことができるのです! うれしい! 暖かいシーズンも心地よさそうですが、炬燵が用意されている冬場もなかなかオツですよ!
さて、「ヴィラ・デル・ソル」を語るうえで、どうしても熱くなってしまうのが、そう、お料理です。ダイニング「南葵文庫」は、海のオーベルジュ。ここでは、この場所で、この時期だからこそ味わえる、漁師が近海で水揚げした魚介を中心とした、フレンチをいただくことができます。
開業時からシェフを務める金野茂氏がこだわるのは、「海そのものを味わうフレンチ」。季節や仕入れによってメニューは変わりますが、参考までに、2016年の冬のメニューの一部をご紹介しましょう。
「七年物の大蛤の直火焼き」はシェフのスペシャリテ。真っ黒な、閉じたままの状態で運ばれてくる蛤は見た目のインパクトも抜群! あらかじめ蝶つがいを切っておくと、焼いてもぱかっとは開かないのだそうです。海水の塩分だけで仕上げたこちらの焼き蛤は、食べる直前に、スタッフの方がテーブルで殻を開いてくれるのですが、中は蒸し焼きになっていて、海の香りが口内に広がります。「鰆の瞬間燻製キャビア 蕎麦粉のパンケーキ仕立て」はウォッカとの相性が抜群!「甘鯛のポワレ」はカリカリに焼いた鱗とふわふわの身のコントラストが絶妙です。
体全体の細胞が狂喜乱舞せんばかりの、それぞれの魚介に合わせて火入れや味付けを調節する、繊細にして大胆な料理を、思う存分に堪能してください!
写真:Aya Hasegawa
地図を見るダイニングでは、朝食も提供しています。
本館のゲストも希望すれば、洋食に変更可能です。うーん、どちらも食べたい!
朝食のシグニチャーメニューは、たっぷりのあさりが入ったクラムチャウダー。通常、クラムチャウダーは小麦粉を使用しますが、朝食ということを鑑み、「さっぱりいただけるように」と小麦粉を使わず、さらさらといただけるように仕上げています。カプチーノ仕立てのクラムチャウダーは、ほかでは味わったことがない、渋みあふれる逸品です。
契約農家からとりよせた、フレッシュな野菜を使ったサラダはひとつひとつの野菜の味が濃く、塩だけでシンプルにいただくのがおすすめ!とはいえ、自家製ドレッシングも美味しく、うれしい悲鳴です。余分な油を落とした鎌倉ハムや地卵を使ったスクランブルエッグ、自家製のヨーグルトもシンプルで、かつ洗練されています。
歴史の香り漂う洋館で朝日に照らされながらいただく朝食は、この世の幸せをひとり占めしたかのような幸福感に満ちたものになるはずです。
「ヴィラ・デル・ソル」は、陽光と潮騒に包まれる海辺のオーベルジュ。クラシカルな雰囲気の洋館に滞在し、由緒ある名湯に浸かり、世界でここでしか味わえない“海そのものを味わう”フレンチに舌鼓を打つ──。特別な日に大切な人と訪れるのはもちろんですが、自分へのご褒美に、一人で至福の時間を過ごす目的で足を運ぶのもおすすめの、とっておきの場所です。
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(2024/10/12更新)
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