写真:今村 裕紀
地図を見る東急池上駅から「本門寺通り」を経て「総門」をくぐると、正面に現れるのが、96段の「此経難持坂」(しきょうなんじざか)です。この石段は戦国武将で、熱心な法華信者であった加藤清正の築造寄進によるものと伝えられています。お寺の本殿に通ずる石段は全国に数多ありますが、ここの石段も結構手ごわいです。まずは、「本門寺」との対面に労を尽くしましょう。さあ、足腰の鍛錬です。
実は2002年にはその脇に緩やかな石段の「女坂」が整備されました。右側に白くうねっているのが見えますね。緩やかであるからこそ段数は161段ありますが、こちらの方が遥かに楽です。
さらに、もし、石段を登るのはどうしても厭だ、という方がいらしたら、安心して下さい!辿り着けますよ!そうした方は総門をくぐらずに右に50Mほど横移動したところにある「池上会館」にお入り下さい。エレベーターで最上階に行きましょう。到着したところは、なんと、池上の街を一望出来る展望台です。この展望台は意外と知られていないお勧めスポットです。晴れた日には富士山が望めます。あとは、そこから「此経難持坂」を登りきった地点まで横移動すればいいのですから、至れり尽くせりです!
写真:今村 裕紀
地図を見る「此経難持坂」を登りきると、「仁王門」が現れます。門内には左右に朱の仁王像が配されています。実は初代の仁王像は「アントニオ猪木」をモデルとして作成されました。この像は近年の修理により「仁王門」の奥に見えている「大堂」の、さらに奥にある「本殿」の建物内に移設されています。その「本殿」に入りますと、思わず声を上げてしまうほどの巨大な仁王像が左右に構えてえています。まるで両側から「元気ですか〜」と圧倒されるような仁王像です。これは必見です!
さて、「仁王門」をくぐり、さらに進むと「大堂」が正面に控えます。日蓮を祀ることから「祖師堂」とも言います。ここでお参りをすませたら、「大堂」の天井を見上げてみましょう。1966年(昭和41年)川端龍子による天井画「未完の龍」が描かれています。この天井画は、龍図の完成を見ることなく川端龍子が逝去されたために未完ですが、その後、奥村土牛により眼が点じられ、開眼されました。川端龍子の遺作「未完の龍」は、まだ、龍になりきっていないもどかしさはありますが、一見の価値があります。
写真:今村 裕紀
地図を見る空襲により「本門寺」の伽藍のほとんどが焼失してしまいましたが、焼失を免れた数少ないもののなかに五重塔があります。まさに「本門寺」を代表するモニュメントです。慶長12年(1607)に建立された塔で、関東に4基現存する幕末以前の五重塔のうち、一番古い塔であることはもとより、日本で11番目に古い五重塔であり、国の重要文化財でもあります。比較で言えば、京都「東寺」の五重塔よりも古いものです。
ベンガラ(赤色塗料)塗りに彩られた五重塔が、天を突いて鮮やかに佇立します。
冬の空気に凛として聳える姿や紅葉に彩られた佇まいも秀逸ですが、春の桜の時期もまた素晴らしいです。空に添えられた桜が、まるで飛天菩薩のように塔を柔らかくつつみ込む光景は、こころ和む日本の至宝です。
写真:今村 裕紀
地図を見る「大堂」と「本殿」の間の道を右に折れて、「紅葉坂」を下り、左に少し進んだところに「朗峰会館」があります。この会館内にある庭園が「松濤園」です。
幕末の江戸城の無血開城のために西郷隆盛と勝海舟の会談は、主に田町の薩摩藩邸で行われたと言われていますが、この「本門寺」の「松濤園」でも行われました。園内には、「西郷隆盛・勝海舟 両雄会見碑」が建てられています。
「松濤園」は約4千坪の広さを誇り、4つの茶室を配して、築山に渓流や滝などが流れる美しい庭園です。ただ、残念なことに、この庭園、通常は一般公開されておらず、毎年9月の中旬に5日ほど公開されますので、興味を持たれた方はその時期を狙って下さい。予約不要で、無料です。
でも、庭園に面したレストラン「松濤園 櫻」では、食事や喫茶が出来ますので、ここでひと休みして、ガラス越しに庭園を眺めながら静かなひとときを過ごすのもいいかもしれません。
写真:今村 裕紀
地図を見る「本門寺」はイベントの宝庫なのです。代表的なものご紹介しますと―
◆「お会式(おえしき)」 「本門寺」の最大の行事は、何と言っても日蓮入寂の10月13日を中心に11日から3日間行われる「お会式」です。なかでも12日に行われる万燈(まんどう)行列で最高潮に達します。日蓮入定の際、庭先の桜が季節はずれの花を咲かせたことから、写真のような「お会式桜」と呼ばれる枝垂れ桜で五重塔を飾った万燈が、池上の街中を経て、あの「此経難持坂」を登りきり、本堂まで練り歩きます。その万燈の数、百数十講、総勢約三千人、参詣者は三十万人とも言われています。全国の講が年に一度「本門寺」に集結する日です。その夜ばかりは秋も深まりゆく「本門寺」の参道は、万燈と参詣者でぎっしりと埋め尽くされて熱気の坩堝と化します。10月に一度「お会式」の熱気につつまれてみませんか?
◆「500個の風鈴の音を聴く」 毎年6月下旬から約3週間、境内に500個の風鈴が吊るされます。2015年で11回を数えます。風が奏でる風鈴の音に耳を傾けると、ひそやかに連なり合う音のさざめきにつつまれて、宇宙の芯としての自分を意識する思いにさえなります。これは夜の方がおすすめです。初夏の夜に500の風鈴の音のシンフォニーに耳を傾けてみませんか?
◆その他にも、力道山のお墓があることから、毎年プロレス関係者が多く参加する「節分追儺式法要」。9月に境内で3日間開催されるコンサート「Slow Live」。「本殿」での「落語会」。子供たちの願いを託した「100万人のキャンドルナイト」など枚挙にいとまがありません。
なお、詳しい行事やイベント、「松濤園」の一般公開日の情報は、MEMO欄の2つのリンクをご覧下さい。
せっかく「本門寺」を訪れるのならば、おすすめしたいポイントがあと3つ。
■「本門寺」の西側にある「多宝塔」は、日蓮聖人入滅の際の荼毘所跡に建てられた供養塔で、赤漆塗りの円筒状の塔身が、実に堂々としていて見ごたえがあります。
■「本門寺」境内ではありませんが、日本画家「伊東深水」の自宅兼アトリエ跡を整備した「池上梅園」が隣接していて、季節には400本近い紅梅、白梅を楽しむことが出来ます。
■そうして、どうしてもはずせないものが、江戸期創業の老舗「相模屋」「浅野屋」「池田屋」の「くず餅」です。これは「池上本門寺」といいますか門前町「池上」の伝統の甘味です。是非、一度、お試し下さい。
東急池上線池上駅から歩いて十数分のところに忽然と現れる大伽藍―「池上本門寺」。石段を登れば、目の前には別世界がひろがります。歴史の遺構や美しい風景に触れて、ひととき都会の喧騒を忘れてみませんか?
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(2024/12/2更新)
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