都江堰の「安瀾橋」を渡り、数分で到着できるのが二王廟です。ここに祀られているのは李冰と息子の李二郎です。
紀元前272年、秦王の命を受け、李冰が四川省の太守となります。この地で多くの農民が岷江(川)の氾濫に困っていることを知り、大々的な治水工事を行いました。工事半ばで李冰は病没しますが、息子の李二郎が後を継ぎ、見事に工事を完遂させています。
二王廟は当初、南北時代(439年—589年)に建設されています。その後、長い年月が過ぎて、清の時代に再建されています。
見事な石段を上がって廟に向かいます。見上げる門は、重厚な重みが感じられることでしょう。中国に道教寺院は数多く存在し、多くが黒を基調とした建築です。
日本で道教はあまり知られていません。しかしながら道教として知られていないだけで、実は身近な様々なところ、風習に残されています。
道教は中国より日本に入って来ますが、仏教のように国教となることはありませんでした。やがて道教の考え方は、神道や仏教にとり込まれていくのです。現在、古来よりの神道、仏教の考え方であるとされているものの中にも、実は道教がベースという場合が多くあります。また一説には、仏教伝来以前に道教が入って来ているとされます。
神社にある茅野輪やおみくじの考え方、また、どんと焼きも道教由来です。節分、ひな祭や端午の節句等、年間で節となる時期に祭り事をするのも道教であり、これらは平安時代には既に正式に朝廷に取り入れられていたのです。
四川省は道教の聖地でもあります。都江堰の近くに「青城山」があります。ここは道教の総本山であり、都江堰が世界遺産登録となった2000年に、同時に世界遺産となっています。
直線の石段を上がりきると、そこが「二王廟」の正面となります。こちらは李親子が治水工事をした岷江の流れを見下ろすように作られています。その存在感は荘厳であり、圧倒的な力が感じられるかも知れません。
石段を上がった上はとても見晴らしが良い場所となります。また、木陰が多く、岷江から吹いてくる風は涼しく、気持ち良い時間を過ごすことが出来るでしょう。
寺院内には八仙が描かれた場所があります。日本は「七福神」が有名ですが、中国では「八仙」となり、全て道教の神々です。中国が八の神を祀るので、日本は一つ少ない七となっています。中国の龍は爪が四本ありますが、日本はよほどの場合を除き三本です。これは日本がかつて中国から多くを学ぶ過程において、先生である中国を立てる意味で一つ少ない数としたからです。
古代中国では、左右対象となる中軸線対象が好まれ多く使われました。しかしながら二王廟は、左右対象ではありません。山の地形を含めた周囲の自然と調和させることに価値を置いたからなのです。
左右非対称の考え方は、日本の建築や庭の造営に大きな影響を与えています。
草が生え苔むした山門は、歴史の重さが伝わって来るようです。こちらの門を出ると正面には、滔々と流れる岷江が見えます。
2300年も前に行われた治水工事が今もなお残され、使われていることは歴史上の偉業と言えます。その治水を行った李親子を祀る二王廟は、岷江の東岸に位置し、高台から岷江を静かに見守っています。
この機会に中国四川省の都江堰で、世界遺産の一部である二王廟を、ぜひとも訪れてみて下さい。
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(2023/12/5更新)
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