日本最大の桑の巨木「薄根の大クワ」群馬県の里山に立つ養蚕の御神木

| 群馬県

| 旅の専門家がお届けする観光情報

日本最大の桑の巨木「薄根の大クワ」群馬県の里山に立つ養蚕の御神木

日本最大の桑の巨木「薄根の大クワ」群馬県の里山に立つ養蚕の御神木

更新日:2016/02/28 16:34

大木 幹郎のプロフィール写真 大木 幹郎 巨木マニア、中級登山者、ブロガー

日本最大の桑の巨木「薄根の大クワ」があるのは群馬県の北部に位置する沼田市。四方を山々に囲まれ中央に利根川が流れる沼田盆地の里山に、集落の生活を支えた養蚕の御神木が立っています。尾瀬ヶ原の玄関口である自然豊かな沼田市へ、ハイキング、スキー、温泉を目当てに訪れる方も、群馬絹遺産の名木へのお立ち寄りも如何でしょうか。

日本一の桑の巨木「薄根の大クワ」

日本一の桑の巨木「薄根の大クワ」

写真:大木 幹郎

地図を見る

薄根の大クワが立っているのは、JR沼田駅のある市街中心部から北に3kmほどの場所(関越自動車道・沼田ICから5km)。中央に薄根川が流れる丘陵に囲まれた里山の集落です。

広い田畑に囲まれ、日当たりが良く肥沃な土壌の恵まれた環境に日本最大の大クワは立っています。大クワは、幹周5.6m、樹高13.6m、推定樹齢1500年。地上から1mあたりで、5本に大きく分かれて枝を四方に広げていています。かなりの古木ですが今なお樹勢は良く、深い縦皺の刻まれた太い幹と広い枝ぶり、その姿は逞しく力強い。沼田盆地の豊かな自然と、集落の人々が守り伝えた国指定天然記念物の貴重な大クワです(写真は4月中旬の撮影。葉は5月から)。

周辺の地理について少し。群馬県の北部に位置する沼田市は、四方を山々に囲まれた地域で、美しい大自然の中、ハイキング、スキー、温泉が楽しめます。中央に利根川とその支流が削った河岸段丘の沼田盆地。南に群馬県を代表する山の一つ赤城山、東に栃木県の日光と足尾の連山。北にはスキー場で有名な玉原高原。片品川の渓谷が続く北東は武尊山の聳える尾瀬ヶ原への玄関口で、名勝地の吹割の滝や老神温泉があります。

集落の暮らしを支えた養蚕の御神木

集落の暮らしを支えた養蚕の御神木

写真:大木 幹郎

地図を見る

かつて日本各地の農村では、貴重な現金の収入源として養蚕(ようさん)が盛んでした。養蚕は蛾の一種である蚕(カイコ)を育て、羽化するときに作られる繭から絹糸を紡ぎ出す産業。桑の葉は蚕の餌となるので、どこの農村にも桑畑が広がっていました。大クワに関わる古い記録には、江戸時代初期の貞享3年(1686)に、前橋藩の家老・高須隼人がこの地域の検地を行った際に、大クワを標木にしたとあります。300年以上前から立派な姿をしていたであろう大クワは、集落の暮らしを支えた養蚕の御神木。人々は格別の思いを寄せて大切に守ってきたのでしょう(写真は8月中旬の撮影)。

見学の際の注意点を2つ。1つ目、付近に駐車場がありません(2015年時点)。近くにある神社・石墨大神宮に寄って路肩駐車すると通行の妨げになりませんが、地域の方のご迷惑にならないようにしましょう。2つ目、大クワの立つ場所は私有地です。道路から所有者の方のお宅の前を通り、そこから木道が大クワとその周囲へ続いています。見学用に整備された木道から外れないようにしましょう。

桑の木と養蚕

桑の木と養蚕

写真:大木 幹郎

地図を見る

今は一本で畑の隅に佇む薄根の大クワ。養蚕が盛んだった昔は、大クワの周囲にも桑畑が広がっていたそうです。ここで桑の木と養蚕について少し(写真は8月中旬の撮影)。

桑の木は10m以上に育つ落葉高木。葉の形はハート型に近い楕円形で、蚕には桑の葉だけが餌として与えられました。5月頃に赤黒いキイチゴに似た実が熟し、「どどめ」や「マルベリー」などと呼ばれ、甘酸っぱく美味で生食の他に、ジュースやジャムに果実酒として親しまれています。

蚕は絹糸の元となる繭を作るカイコガ科の昆虫。元は紀元前の中国で、野生のクワコという蛾を家畜化したものと云われ、養蚕は日本には古墳時代には既に中国から伝来していました。蚕は自立して生きられない家畜化された昆虫で、人が管理して育てます。飼育下では、適切な温度と湿度を保った清潔な場所で、新鮮な桑の葉を食べ易いように与え続けて育てます。繭玉は一本の糸から出来ていて、絹は繭を湯で茹でて解れた糸をより合わせて作ります。

群馬県の養蚕の歴史と遺産

群馬県の養蚕の歴史と遺産

写真:大木 幹郎

地図を見る

かつて日本各地で盛んだった養蚕は、農村の貴重な収入源となり、大量の絹の輸出によって日本の近代化を支えた基幹産業(明治〜昭和40年頃)でした。群馬県内には、養蚕を伝える多くの施設や文化が「群馬絹遺産」として保護されており、薄根の大クワもその1つ。群馬絹遺産で最も有名なのが、世界遺産に登録された「富岡製糸場」です。富岡製糸場は、明治5年(1872)に設立した官営の機械製糸場で、日本の養蚕の世界進出を牽引しました。大クワの近くにある群馬絹遺産では、養蚕が行われた古民家の「旧鈴木家住宅」や「富沢家住宅」、自然の冷風で蚕の卵を保存した「利根風穴」などがあります。詳細な場所は文末にあるリンク先のサイト「群馬絹遺産」からご参照下さい。

群馬絹遺産の人々の生活と繋がった御神木

群馬絹遺産の人々の生活と繋がった御神木

写真:大木 幹郎

地図を見る

かつて日本各地で行われていた養蚕。薄根の大クワの周囲にも桑畑が広がり、この集落でも養蚕は盛んだったといいます。大クワは、里山の耕作地で、古くから人々の日々の生活と共にあり、豊作をはじめ様々な祈願を受け止めてきた御神木。大きく力強い古木の姿には、かつての農村の風景が蘇るような懐かしさと、包み込むような優しさが感じられます。

なお、薄根の大クワに次ぐ桑の巨木は、新潟県の佐渡市にある「羽吉の大クワ」(幹周5.2m、樹高9m)、北海道の小樽市にある「恵比寿神社の桑」(幹周5m、樹高9m)の2本が特に大きなものです。

おわりに

以上、日本一の桑の巨木「薄根の大クワ」でした。ただ大きいというだけでなく、力強く端正な立ち姿をしているのも魅力です。そして、その佇まいには、どこか懐かしさや優しさがあり、郷愁を誘うものがあります。養蚕は明治から昭和初期にかけて、かつて日本の近代化を支えた基幹産業であり、作られた絹糸の品質と生産量は世界最高でした。しかし、現在では機能性と生産性に優れた化学繊維の普及と、安価な中国など外国産の絹糸の普及で、国内の養蚕の規模は最盛期の1%以下に縮小し、こうして桑畑の広がる風景は消えていきました。現代でも日本の養蚕の約4割を占める群馬県で、連綿と絹遺産として遺されたもの、そのシンボルの1つが養蚕の御神木である薄根の大クワなのです。

尾瀬ヶ原への玄関口の自然豊かな沼田市へアウトドアに訪れた方、富岡製糸場など群馬絹遺産に興味のある方、一足伸ばして薄根の大クワへのお立ち寄りをお勧めします。群馬絹遺産に登録されている場所の詳細は、MEMOのリンク先のサイト「群馬絹遺産」からご参照ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/04/18 訪問

- PR -

条件を指定して検索

LINEトラベルjpで一緒に働きませんか?

- PR -

旅行ナビゲーター(在宅ライター)募集中!
この記事に関するお問い合わせ

- PR -