写真:Naoyuki 金井
地図を見る谷中霊園の最寄り駅はJR山手線の日暮里駅。まずは日暮里駅の南口を出て、僅か100メートルほどの『天王寺』に向かいましょう。
江戸時代、谷中霊園は日蓮の弟子・日源によって1274年に開山された感応寺の墓所で、1833年に天王寺と改称されました。この天王寺が有名になったのが、目黒不動、湯島天神と共に“江戸の三富”として富くじ(現在の宝くじ)が販売されたことでした。
こうしたこともあって江戸時代大いに繁栄した天王寺でしたが、明治期になって境内地の上地が命ぜられて、境内の大部分が東京府の谷中霊園となったのです。
この天王寺の見所は江戸時代のガイドブック“江戸名所図会”にも描かれた台東区指定文化財の『銅造釈迦如来坐像』で、約3メートルの大仏は、まさに現在に残る江戸のシンボルなのです。また、谷中七福神の毘沙門天も祀られていますので、正月に参拝するのもよいでしょう。
提供元:Photo-Pot
http://photo-pot.com/?p=17717天王寺の山門から南方向へ向かう通路は谷中霊園の中央を貫く“中央園路”で、もとは天王寺の参道でした。通称『さくら通り』とも呼ばれており、毎年桜の花見シーズンには、まるで桜のトンネルになる花見の名所です。
そのさくら通りで是非見て頂きたいのが、桜は桜でも《鬱金(ウコン)桜》。
天王寺から僅か20〜30メートルほどの右側に1本だけ植栽されている鬱金桜は、別名「浅黄桜」と呼ばれる桜で、ソメイヨシノより2週間ほど開花が遅く、例年4月中旬ころに淡黄緑色の八重の花が咲きます。
江戸時代の天王寺境内には鬱金桜がたくさんあり、“江戸名勝図会・天王寺”にも名木と紹介されていた花見の名所を偲ぶことができます。。
谷中霊園では、是非、ソメイヨシノと鬱金桜の花見を二度楽しんでください。
※写真は鬱金桜のイメージです。
写真:Naoyuki 金井
地図を見る中央園路の半ばあたりにあるのが『五重塔跡』。
天王寺境内の頃、江戸時代初期に五重塔が建立されたのですが焼失したため、1791年近江国(現・滋賀県)の棟梁八田清兵衛ら48人によって再建されたのです。
この再建の模様を“のっそり十兵衛”という主人公によって描かれたのが、明治期に連載された幸田露伴の小説《五重塔》で、ユーモアとテンポの良さで人気となり小説と共に五重塔も名所となったのです。
その後、東京市に寄贈された五重塔でしたが、1957年、50歳代男性と20歳代女性が不倫関係の清算のため焼身自殺を図り、その際延焼して塔自体も焼失してしまったのです。
その跡地に残された礎石が、当時関東一の高さの五重塔を偲ばせます。また、谷中霊園の近くに《五重塔》を書いた頃の露伴の旧居跡もありますので併せて見られると良いでしょう。
写真:Naoyuki 金井
地図を見る昨今、各地の霊園では著名人墓所の参拝が人気ですが、この谷中霊園も同様で、7000以上の墓がある谷中墓地には著名人も多く眠っており園内には案内板も設置されています。
元首相の鳩山一郎や実業家渋沢栄一、俳優長谷川一夫、森繁久彌、作曲家宮城道雄、画家横山大観などなど多岐にわたっています。
その墓所で最大の見所は徳川幕府最後の将軍『徳川慶喜』の墓所でしょう。中央園路の南端から左方向の奥にあるのですが、この辺りは厳密に云うと谷中霊園ではなく寛永寺墓地になります。
興味深いのは慶喜だけは“徳川宗家”の家柄ではなく“徳川慶喜家”を与えられたので、他の将軍と一緒に埋葬されなかったことです。また墓の形式は円墳で、これは仏式ではなく神式の墓であることからで、天皇家への恭順を表していると云われている歴史的な墓所なのです。
写真:Naoyuki 金井
地図を見る谷中霊園を抜けてまっすぐ5分ほど進んだ先にあるカフェが『カヤバ珈琲』。
大正5年に造られた町家で、昭和13年から喫茶店として創業し、地元住民や墓参りに訪れた方達の憩いの場となり、谷中のシンボルとして親しまれたのですが、平成18年に閉店されたのです。
しかし、平成21年にリノベーションされ復活し、外観や看板、椅子などが当時のまま活かされた古民家喫茶として再オープンしたのです。
当時のままなのは味も同様で、創業以来の名物メニューである『たまごサンド』やモダンなドリンク『ルシアン』等も復活したのです。
現在はインスタグラムなどのSNSで人気となり、外国人客も多く土日は行列を作るカフェとして大人気なのです。古民家に復活した昭和のメニューでレトロな趣に浸った後は、このまま南に進んで上野公園を散策するのをおススメします。
様々な歴史や文化を垣間見れる『谷中霊園』はいかがでしたでしょうか。
凡そ東京ドーム2個分以上ある広大な霊園ですが、閑静な佇まいのなかでも、どことなく下町の親しみやすさのある霊園です。
あくまで霊園ですから節度を持つのは当然ですが、観光地として散策をするのも楽しいものです。
今度のお休みに、のんびり出かけてみませんか。
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(2024/10/15更新)
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