狩勝峠(かりかちとうげ)は、北海道の中央部の少し南、南富良野町(空知郡)と新得町(上川郡)の境の国道38号線、標高644mにある峠です。大雪山系・石狩山地と日高山脈の鞍部に位置し、道央と道東を結ぶ重要な道として、古くから利用されてきました。
狩勝という名も、旧石狩国と十勝国の国境にあたるところから、両国から一文字ずつ取ってつけられたもの。名前からも、その位置関係がよくわかりますね。
現在峠には、広い駐車場とトイレ、ドライブイン、そして道をはさんでの展望台が設けられてており、食事をとったり、お土産を買ったりなど休憩ができるようになっています。そして何よりのセールスポイントは、ここから広がる壮大なる絶景。ぜひ車を停めて、峠からの雄大な風景を味わってください。
北海道中央にドンと鎮座する高い山々とそこから南にのびる日高山脈により、周辺の一般自動車道は、狩勝峠越えと日高山脈の日勝峠越えの2本の峠越え道しかなく、そのぶん山間部にしてはけっこうな交通量があります。またスピードを出している車も多いので、運転はもちろん、道向かいの展望台への移動などの際には十分にご注意ください。
狩勝峠からの絶景の素晴らしさは、なかなか他では味わえないものです。それは、ここが日本新八景の一つとして選ばれていることからもよくわかります。
この日本新八景というのは歴史が古く、昭和2年に大阪毎日新聞社・東京日日新聞社の主催、鉄道省の後援で、一般投票による推薦をもとに、昭和の新時代を代表する景勝として選定されたものです。海岸・湖沼・山岳・河川・渓谷・瀑布・温泉・平原の8つの区分からそれぞれ選ばれており、狩勝峠は平原の部門からの選出。平原っていうのは少し意外な気もしますが、それはここから望む雄大な十勝平野の美しさが評価されたからです。
それにしても90年も前から、その美しさが全国的に知れ渡っていたなんて驚きですね。
なお選考当時はまだこの道は開通していなかったので、国鉄根室本線(旧線)の列車の車窓から見えた雄大に広がる眺望が選考対象。このあたりの区間は、坂とカーブの続く超難所。狩勝信号場を出発した蒸気機関車の煙が、もうもうと狩勝トンネル内に立ちこめる。そして暗いトンネルを出た瞬間、視界がパッとひらけ、そこには雄大な十勝平野が広がる。これはもう、さぞかし強烈なインパクトだったことでしょう。
ちなみに新八景の各部門は、「室戸岬(海岸)」「十和田湖(湖沼)」「温泉岳(山岳)」「木曽川(河川)」「上高地(渓谷)」「華厳の滝(瀑布)」「別府温泉(温泉)」「狩勝峠(平原)」となっています。なお山岳部門の温泉岳というのは、現在の雲仙岳のことです。
南北に山々が連なるこのあたりですので、峠からは東西方向にそれぞれ景観がひらけています。西が南富良野町、東が新得町の眺望ですが、峠からのメインとなる展望というのは、やはり十勝平野の広がる新得町側の景観ということになるでしょう。
その峠の新得町側には、展望台が設置されています。訪れた際には、必ず最上部まで昇ってみてください。ここからの眺めは文句無しの最高の眺め!「日本新八景」の名に恥じない絶景を、見ることができますよ。
石狩山地の山々から十勝平野へと続く広大な大地、特に秋には黄色・赤に色づく原野の木々の葉や白く雪化粧した遠くの山、それらが何とも美しい秋と冬の訪れの予感を感じさせてくれます。条件が良ければ、遠く阿寒岳の姿も見ることができます。
一方、南富良野側は、幾重にも重なる山々の風景となります。新得町側のように雄大に広がる眼下の眺望ではないものの、こちらもなかなかの絶景です。
写真の中央左に見えている、少し冠雪の見られる山は夕張岳(1,668m)で、右端の方に見えている尖った山は芦別岳(1,726m)です。これらの連なる山々の向こうに、あの夕張の町があるのですね。
連なる山々の中でひときわ高くそびえる山は、地形図などを見るとその名前がわかるのですが、旅の前、旅の後のどちらでもいいのでちょっと調べてみると、それぞれの位置関係などがわかって面白いですよ。狩勝峠と夕張岳は、直線距離で40数kmくらいです。また新得町側の阿寒岳は峠からは100km以上。条件が良ければ、遠くまで見渡すことができるんですね。
この写真をご覧下さい。これは展望台から見える新得町側の風景の一部を拡大したものなのですが、見えているカーブの未舗装路、これ何だかおわかりになるでしょうか。
じつはこれは、国鉄・根室本線の落合駅〜新得駅間の旧線跡なのです。旧線の、ちょうど狩勝トンネルの出口付近にあたるこの場所からの眺望が、先にあるように「日本新八景」ならびに「日本三大車窓」に選ばれていました。三大車窓の方は、いつ頃からそのように呼ばれていたのかは定かではないのですが、ここからの眺望が古くから、日本でも有数の美しい景観だったことがわかります。
カーブした道が見えなくなりそうな所の道脇に、細くて白い棒のようなものが小さく立っているのが見えます。これは「狩勝峠 日本八景の一」と書かれた標柱なのです。旧線が現役の頃に実際にあったものを、地元の方々により同じ場所に復元されたのですが、こうして今の峠からも見ることができます。
現在の落合駅〜新得駅間は昭和41年に開通したもので、ルートも旧線とは大きく南に変え、それにともない旧線にあった落合駅〜新得駅間の新内駅も廃駅となっています。その旧新内駅周辺には、現在「旧狩勝線ミュージアム」や「狩勝高原エコトロッコ鉄道」といった旧線に関連した施設もあり、鉄道ファンはには目の離せないスポットとなっています。
峠から見えるさりげない道の風景なのですが、こうして見ると思わぬ歴史と出合えたりします。これも旅の面白さですね。
絶景峠・狩勝峠、いかがでしたでしょうか。
日本有数の峠からの絶景を味わえるのはもちろんですが、それだけではなく、鉄道ファンであれば旧線の遺構巡りなども面白いと思います。また小さなお子さんのいるファミリー旅行であれば、エコトロッコ走行で運転士気分を味わうのも楽しいでしょう。
道東自動車道を使っての移動になると、ついつい見逃しがちになってしまう狩勝峠ですが、周辺には見所がいっぱいです。北海道旅の際にはぜひお立ち寄りになって、その絶景を味わってみてください。
この記事の関連MEMO
トラベルjpで250社の旅行をまとめて比較!
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索