秩父事件と農民ロケットの謎!埼玉・秩父「椋神社」

秩父事件と農民ロケットの謎!埼玉・秩父「椋神社」

更新日:2016/03/18 11:20

埼玉県秩父市の椋(むく)神社の北、約300mに高さ25mほどのやぐらが建っています。伝統の「龍勢祭り」で「龍勢(りゅうせい)」と呼ばれる「ロケット」を発射するやぐらです。400年以上続く椋神社のお祭り。椋神社は、「秩父事件」の際の農民たちの決起場所。秩父事件が椋神社を出発点としたことで、明治政府を驚愕させることになりました。椋神社、秩父事件、龍勢祭りの秘められた背景をご紹介します。

江戸時代から続くロケット祭り、「農民ロケット」と呼ばれる龍勢

江戸時代から続くロケット祭り、「農民ロケット」と呼ばれる龍勢
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一見、火の見やぐらのような、何でもない簡素な構造。毎年10月第2日曜日に行われる椋神社の龍勢祭りのロケット発射台です。18mもの長さの竹竿の先端に直径20〜30cm、長さ70〜80cm程の火薬筒が装着される「ロケット」は「龍勢」と呼ばれます。

種子島のJAXA宇宙航空センターの「ロケット発射台」を彷彿とさせる景色です。実際にJAXAや東京大学も龍勢祭りで打ち上げたことがあり、龍勢祭りがロケット開発者の関心をも集めるお祭りか分かります。

「農民ロケット」と呼ばれる龍勢

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ロケットというだけあり、先端部の火薬筒には火薬が詰められます。硝石、炭、硫黄に水分を加え、黒色火薬を作ります。武器に転用できる火薬を自由に扱うことができたのでしょうか? 江戸時代、幕府直轄領だった椋神社がある吉田地区は、火薬の移動などの管理が比較的緩やかだったといわれています。

現在も27の龍勢作りの流派があり、技術を競い合って打ち上げを行うため、火薬や火薬筒の作り方、筒の材料などは極秘中の極秘で伝統と口承、経験によって各流派に伝えられています。火薬筒や竹竿は、松や竹を伐採するところから始まり、十分に乾燥させ軽量化したロケットにします。約1年かけて作り込む龍勢は「農民ロケット」とも呼ばれます。

火山国の日本では、木炭と硫黄の調達は容易ですが、硝石の自給は困難で南蛮貿易により調達しました。ところが鎖国により、貿易による調達ができなくなりました。農民たちは床下から硝石の原料を掘り出したのです! それは・・・汲み取り式の厠(かわや)の壁から漏れ出した糞尿などの化学反応により、床下の土壌に硝酸カリウムが蓄積し、これを原料に硝石を取ったのです。写真は火薬筒部。

30発も打ち上げられる龍勢

30発も打ち上げられる龍勢
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祭り当日は、30発の龍勢が15分毎に打ち上げられます。地歌舞伎が盛んな当地では、打ち上げに先立ち、「トザイ、トーザイ・・・」と龍勢の奉納者が得意の節回しで口上を述べ、打ち上げをいやがうえにも盛り上げます。

次に太鼓の合図により導火線に火をつけ、白煙と共に龍勢が打ち上れば、万事よし!です。やぐらを望む椋神社前の広場が桟敷席となり、大歓声が上がります。

秩父事件で明治政府驚愕の理由

秩父事件で明治政府驚愕の理由
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埼玉県秩父郡の農民が政府に対して起こした蜂起事件(秩父事件)は、1884年11月1日に椋神社に農民など困民党による決起集会が行われ始まりました。その数3,000名と言われます。

明治政府は驚愕します。狩猟用の鉄砲は農山村にあり、龍勢祭りの伝統を持つ秩父の農民は黒色火薬を製造する技術があったため、明治政府は、3,000丁もの火縄銃等を準備しているものと覚悟したのです。養蚕業と生糸生産に大きく頼っていた当時の秩父地方は、欧州(フランス)での生糸価格暴落の影響を受け、生活は困窮を極めたのです。租税の軽減、借金の据え置きを政府に請願する方向に向かっていきました。

武装蜂起した困民党は、翌11月2日には秩父郡内を制圧しますが、政府は苦戦しつつも動きは素早く、11月4日には秩父事件は制圧され、11月9日に壊滅しました。

アクセス

椋神社は、西部池袋線、西武秩父駅から吉田元気村行き、「道の駅龍勢会館」下車し、約1km、徒歩約10分です。龍勢祭り当日は、西武秩父駅及び秩父鉄道皆野駅から道の駅龍勢会館経由の臨時バスが数多くでます。通常期はバスは1日数本しかありませんので、事前に時刻表を確認するのがベターです。

車は、西武秩父駅から約15km、30分弱です。龍勢会館では、入場料¥300で、150インチスクリーンによる祭りの状況や、各流派の紹介、龍勢の実物など臨場感あふれる見学ができます。世界中のロケット関係者を惹きつける、龍勢祭りを秩父事件の歴史とともに、体験してみはいかがでしょう。

関連情報をMEMO欄に入れておきますので、参照ください。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/03/06 訪問

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