写真:鮎川 キオラ
地図を見る夢の世界へ迷い込んでしまったような、いや映画のワンシーンに迷い込んでしまったような不思議な感覚を味わえる巨大な地下空間。ここは、石の町として栄えた大谷(現宇都宮市大谷町)が誇る、大谷石の地下採掘場跡です。大谷石の歴史を紹介する大谷資料館の地下にあります。
地下へ通じる引き戸をカラカラと開けると、薄暗い階段の下から冷気がスッーと吹いきて、入口からただならぬ雰囲気を醸し出しています。階段を下りると、いたって普通の資料館の外観からは想像できない神秘的な空間が目の前に広がります。鍾乳洞が創り出すやわらかな曲線の空間ではなく、直線的な緊張感のある空間。その広さは、2万平方メートル、深さ平均30m、深いところでは60mにも及び、東京ドーム1つがすっぽりと入ってしまう大きさです。
今まで一般の方の目に触れることのなかった未知なる空間へ潜入してみましょう。
写真:鮎川 キオラ
地図を見るところで、大谷石をご存じですか?大谷石は、火山灰が積もってできた「凝灰岩(ぎょうかいがん)」。火山の多い日本では、凝灰岩が各地で採掘できますが、大谷町のものは質がよく、旧帝国ホテルの建材として利用されたことで一躍その名が広まりました。栃木県を旅すると、大谷石を利用した門柱や石蔵をよく見かけます。産地となる大谷町では、壁から屋根まで丸ごと1棟大谷石作りなんてお宅もあります。石でありながら独特のやわらかい温かみのある大谷石。味わい深い質感と加工のしやすさから、今でも人気の住宅建材のひとつでもあります。
江戸時代中期から本格的に掘り出され、昭和34年頃までは手掘りで採掘していたそうです。1本の石(30cm×90cm)を切り出すのにツルハシを約4,000回振り、1本約70kgの石を背負って地下深くから地上へと運んでいたのだとか。写真手前の壁面は、手掘り時代の石に刻まれた掘削の痕跡となります。その後、機械が導入されることで飛躍的に生産量が伸びたそうです。写真奥の深い縦につながる溝は、機械による掘削の痕跡となります。
石肌に刻み込まれた採掘の跡は、裸電球に照らされて、まるで壁画のように浮かび上がります。圧倒される空間ばかりに目がいってしまいますが、壁の痕跡もぜひ鑑賞してみてくださいね。
写真:鮎川 キオラ
地図を見る独特の幾何学模様のような写真は、天井を撮影したものです。地下空間の天窓と言うと分かりやすいかもしれません。採掘場は、地下での作業となるので、今いる位置が地上のどのあたりなのか作業員が確認するために掘られたものとなります。作業する方にとって、薄暗い閉ざされた空間の中でも外界を感じ、ほっとさせる光だったかもしれませんね。
太陽の光を取り込み、青白く光る天窓の光景はとっても神秘的。太陽の日差しが強い日は、海のように青く光ることもあるそうです。こちらの天窓の下には、係員の方が立ち説明しているので、お見逃しなく。
写真:鮎川 キオラ
地図を見る閉ざされた空間の採掘場ですが、位置を確かめるために掘られた天窓や切り出した石を外へ運び込むためのトンネルなどから差し込む自然光によって少し表情を変えると言われています。写真は、日差しの強い夏に見られる光景となります。ぽっかりと穴の開いた天井から地下へと降り注ぐ一筋の光。力強い外の世界を感じます。
同じように外界と地下を結ぶ空間は、いくつかあります。この独特の空間に魅了されたアーティストによるコンサートやダンスなどのイベント会場として使用されることもあります。この荘厳な空間で結婚式を執り行うこともできるんですよ。自然光が差し込む真下に十字架を掲げ、そこへと向かう絨毯を敷いたバージンロードにはいくつものキャンドルが灯ります。2人だけのために、ロマンチックな装飾をした教会が即興で用意されるのです。厳粛な雰囲気のちょっと変わった場所で式を挙げてみたい方は、いかがでしょうか♪
写真:鮎川 キオラ
地図を見る採掘場の年間の平均気温は8度。天然のクーラーと言うより、天然の冷蔵庫。戦時中などは、日本政府の米を預かったこともあったのだとか。私が訪れた8月の猛暑日の坑内気温は、11度。坑内の気温としては、暖かいほうなのです。
暑い夏にお疲れ気味の身体には、この寒さは心地よく感じますが、見学している間に体の芯から冷えてきます。寒がりの方は、一枚はおるものを持参することをお勧めします。また、足元も濡れている場所があるので、サンダルやヒールのある靴ではなくスニーカーなどでお出かけください。
大谷石採掘場跡は、2011年の地震の影響はなかったものの、震災以後長らく閉館していました。2013年4月、安全面を確認して待望の再オープン。2年ぶりに復活した未知なる空間は、期待を裏切らない一度は見る価値ありの絶景地下スポットです。神秘的な地下空間へぜひお出かけください。
【大谷資料館】
栃木県宇都宮市大谷町909
028-652-1232
9:00-16:30(最終入館は16時まで)、年末年始休
入館料:大人600円、小人(中学生以下)300円
※地下採掘場は、階段の上り下りのある約40分の見学コースとなります。
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(2024/9/17更新)
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