写真:鷹野 圭
地図を見るJR目黒駅から程近く、目の前には車の行き交う大通りがある目黒自然教育園。限られた面積でありながら特筆すべきは緑の濃さであり、地方の里山や自然地を髣髴とさせる深い雑木林の中を歩くことができます。冬場にはとりわけ野鳥の数が多く、まれに食物連鎖の頂点に君臨する猛禽類 オオタカが姿を現すことも! 生物相の豊かさは山手線沿線でもピカイチです。
ここは回遊式の植物園で、1時間半もあれば十分散策できてしまいます。入口から入ってしばらくは林道を歩く形となり、最奥地にはヨシの繁る湿地帯 水生植物園(写真参照)が広がります。基本的に鬱蒼とした雑木林中心の園内にあって、ここは林の向こうに高層ビルの頭が見えるなど視界の開けた気持ちよい空間。池にはクサガメが多数暮らしており、人馴れしているのか、近くを通りかかると水面から顔を出してエサをねだってくることもあります。
その他、水鳥の池ではサギやカモの仲間が、林道ではルリビタキ(冬〜初春のみ)などの小鳥がよく見られます。運が良ければカワセミやオシドリなど、美しい鳥に出合う機会もあることでしょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る写真の青い花はチョウジソウ。初夏になると水生植物園を中心に湿った草地で花を咲かせ、どことなく涼しげな雰囲気を醸し出します。自生のものはずいぶん少なくなっているようで、環境省のレッドデータブックでも準絶滅危惧種にカテゴリされています。ここでは限りなく自然さながらの雰囲気で保全されており、こうしたスポットは東京都内でも稀有といえるでしょう。このほか、初夏であればカキツバタやノイバラ、コウホネ、アサザなどが見所。水場周辺をよ〜くチェックしてみましょう。
ここ自然教育園はまさに自然に生きる植物の姿を見せてくれる植物園であり、自然さながらに春夏秋冬で目くるめく表情が移り変わっていきます。そして、湿ったヨシ原と雑木林の林道とでは生える植物もまるで異なり、生態系の多様性に満ちたスポットでもあるのです。人気所としては、2月頃から真っ先に林内で花を咲かせるフクジュソウや、4月に入ると本格的に咲き始めるカタクリ、真夏に一際目立つ大輪の花を咲かせるヤマユリ、秋になると水生植物園でススキなどの足元にユニークな花を咲かせる寄生植物 ナンバンギセルなどが挙げられます。このほか、花の美しい種から希少種、ユニークな形状の種など多様な植物が見られますが、どこにどの植物が生えているのかはなかなかわかりにくいもの。まずは入口近くの教育管理棟に立ち寄り、最新の園内情報などを仕入れてから散策しましょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る春先から本格的に昆虫が姿を見せるようになると、それを食べる小さな動物たちも次々と現れます。中でもこの目黒自然教育園で多いのが、写真のニホンカナヘビ。冬眠から目覚めた4月頃より、水生植物園を中心として園内各所で見られるようになります。特によく見かけるのが、園道沿いに設置された案内板の上。日当たりが良いので日向ぼっこでもしているのか、それとも単なる目立ちたがり屋なのか、変に草を掻き分けたり石をどかしたりせずとも水生植物園を一周するだけで普通に2〜3匹出合えてしまうこともあります。まれに急に足元を横切ることもありますので、うっかり踏んづけてしまわないように気を付けましょう。
カナヘビとは要するにトカゲのことであり、嫌悪感を抱いてしまう人も中にはいるかもしれません。ただ、よく見るとなかなか愛嬌のある顔をしており、性質は大人しく至って無害な生きもの。むしろカやハエなどを食べてくれる益獣の側面も持っており、都市公園の生態系を支えるとても重要な役割を担っています。ですのでいじめないであげましょう(笑)。ちなみにニホンカナヘビは日本の固有種。つまり日本にしかいない生きものです。そう考えると不思議と愛着のようなものが湧いてくる……かも?
写真:鷹野 圭
地図を見る多くの昆虫が暮らし、それを糧とするトカゲなどの小動物や小鳥も多い目黒自然教育園。さらにそうした小動物を捕らえて食べる、食物連鎖で“一つ上”に位置する生きものも暮らしています。ヘビやイタチなどの肉食性の動物がそれに該当しますが、彼らは数が少なかったり夜行性だったりで園路を歩いていてもそう滅多に出合えません。運よく遭遇したとしても、警戒心が強いのですぐに逃げ出してしまいます。もし写真などに収めたい時には、僅かなチャンスを逃さないよう「一歩先には何かいる」くらいのつもりで周囲に細心の注意を払いましょう。そうした緊張感を持って散策するのも乙な楽しみ方です。
一方で、動かぬ痕跡が残されていることも結構あります。写真は、木の枝にひっかけられたアオダイショウ(ヘビ)の抜け殻。間近で見てみるとわかりますが、そのまんまヘビの鱗模様や形が残っていて驚かされます。アオダイショウはヘビでありながら非常に木登りが得意で、脱皮の際には尖った木の枝などに皮を引っかけて一気にベリベリと脱ぎ捨てるため、大抵抜け殻は木の上にあります(決して来園者が拾った抜け殻を適当に枝にぶら下げた……とかではありません)。生物相が豊かなスポットだからこそ、こうした思いがけないものに出合う機会も多く、野生の生きものの神秘を存分に体感できることでしょう。
写真:鷹野 圭
地図を見る写真はオニヤンマ。名前はさすがにご存知かもしれませんが、主に森林内の小川などで暮らしているので、都会暮らしだと直接見たことがない方もいらっしゃるかもしれません。この園内には夏〜秋にかけて小川沿いでコンスタントに姿を見られます。ただ、飛んでばかりでなかなか写真のように静止してくれないので、もし写真に収めたいのであれば根気よく待ちましょう。
そのほか、水生植物園の水際では儚くも美しいイトトンボの姿が。そのほか、青いオオシオカラトンボ、真紅のショウジョウトンボなど、郊外の里山で見られるトンボがごく普通に見られます。時には、23区内ではなかなかお目にかかれない美しいチョウトンボが現れることも! それ以外の昆虫であれば、アオスジアゲハやカラスアゲハなどの美しいアゲハの仲間が目を惹きます。
なお、それぞれ昆虫たちには好みの環境があり、なかなかその場を離れることはありません。散策中に昆虫を見かけたら、どこで見たのかをメモしておき後で振り返ってみたりすると、彼らの生態に関する知識が自然と身についてきます。自然「教育」園の賢い利用の仕方といえるでしょう。
昆虫や小動物にはそれぞれ好みの環境があり、これは植物についても同じことが言えます。目黒自然教育園にはたくさんの山野草が保全されていますが、花壇のようにまとめて植栽されたり、適さない環境に無理矢理植えられていたりすることはありません。いずれも植物個々の好む環境で自生地さながらに生育しており、それゆえに生き生きとした姿を楽しめるのです。
言い換えるならば、ここを一周することで動植物がどんな環境に暮らしているのかが自ずとわかってくるということ。そんな恵まれたスポットが山手線沿線にあるということは、東京都において貴重な財産といえます。散策される方はこの機会に、実体験を通じて身近な動植物の知識を身につけてしまいましょう!
【アクセス】
JR・東急目黒線「目黒駅」より徒歩約9分
東京メトロ南北線・都営三田線「白金台駅」より徒歩約7分
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(2024/10/15更新)
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