写真:和山 光一
地図を見る明星山麓に位置する西国霊場第十番札所「三室戸寺」は、奈良時代の宝亀元年(770)光仁天皇の勅願により創建。明星山と号する本山修験宗の別格本山で、もとは天台宗寺門派(三井寺)に属していました。中世以降、西国三十三所巡礼が庶民の間に広がったのに伴い第十番札所として定着し、今もなお巡礼姿の参拝客をよく見かけます。裏山である莵道山の岩淵から出現したとの伝説をもつ、金色の千手観世音菩薩を本尊に祀っています。
三室戸寺という地名に「室」という文字が使われていますが、あの御室と同じで、光仁天皇がこの地に離宮をかまえられた当初は「御室戸寺」でした。その後も花山天皇・白河天皇の離宮となり、「御」が「三」になって三室戸寺になったと伝わっています。
境内には、文化11年(1814)再建の重層入母屋造りの本堂をはじめ、室町時代の建立で国の重要文化財の十八神社本殿、元禄17年(1704)建立の朱塗りの三重塔など歴史のある建造物も多く、大寺の雰囲気が漂います。鐘楼脇に「浮舟古跡」と刻まれた古碑がありますが、これは二百五十年前の寛保年間「浮舟古跡社」を石碑に改めたもので、その折古跡社のご本尊「浮舟観音」が当山に移され、宇治十帖のヒロイン・浮舟の浮舟念持仏として、今に伝えられています。
写真:和山 光一
地図を見る西国三十三所巡礼の十番札所であることから、花山天皇の西国巡礼創始からちょうど1000年にあたる昭和62年に、約5000坪の庭園を整備。枯山水や池泉などを造成し、四季折々の花が植えられています。なかでも規模が大きく、有名なのが朱塗りの山門脇に広がるあじさい園です。50種1万株のアジサイが杉木立の中を埋め尽くす光景は壮観で、その美しさは関西ベスト3ともいわれています。(あとの二つは神戸市立森林植物園と奈良の矢田寺)
アジサイを縫うように遊歩道も整備され、西洋アジサイやガクアジサイ、柏葉アジサイ等とともに、幻のアジサイといわれるシチダンカも見ることもできます。アジサイが最盛期を迎える6月中旬の土・日曜日の夜間にはライトアップが行われていて、漆黒の庭園に色とりどりのアジサイが浮かびあがる姿は幻想的であり、ひときわ鮮やかに見えます。
写真:和山 光一
地図を見る“ハート形の青いアジサイが花を咲かせた”と関西のTV番組等で取り上げられていることもあり、記念撮影してフェイスブックに掲載する人もいて、人気が広がっています。ハート形が見られるようになったのはここ数年のことで、約1万株のうち、こんな形になるものは数少ないといい、理由は分かっていません。 詳しい場所は公開されていませんので、参拝客は四つ葉のクローバーを探すような宝探し気分も味わえます。
写真:和山 光一
地図を見る三室戸寺をあとにして、源氏物語・宇治十帖の世界に浸ってみましょう。「源氏物語ミュージアム」で源氏物語や平安貴族の生活を学習した後は、源氏物語散策の道である古跡残る「さわらびの道」を歩いて宇治川に出ます。
歴代の主の一人があの「光源氏」のモデルとなった左大臣・源融であり、源氏物語の終盤部分では、光源氏が息子の夕霧に譲った宇治のお屋敷が、宇治平等院と想定されています。宇治川を挟んで対岸に、宇治十帖の八宮のモデルとも言われている「莵道稚郎子(うじのわきいらつこ)」の邸宅跡と考えられている宇治神社と宇治上神社が鎮座する一帯があります。この両岸を繋ぐ朝霧橋の東詰(宇治神社側)には「宇治十帖モニュメント」があり、宇治十帖の世界に私たちはいざなわれます。
宇治十帖の中で、浮舟は薫に連れられて宇治に移りますが、匂宮は浮舟の居場所を探り出し宇治を訪れます。そして、二人はともに小舟で橘の小島へ渡ったのでした。モニュメントはそのときの小舟を漕ぐシーンを再現しています。 すぐそばに宇治川が流れ、背景には朱色の朝霧橋があるこの場所は、絶好の記念写真ポイントになっていますので、是非ナイスショットを一枚いかがでしょうか。
写真:和山 光一
地図を見る宇治川沿いの「宇治十帖モニュメント」を見て、朱塗りの朝霧橋を渡ります。千年の時を超えて滔々と流れる宇治川に、舟遊びに興じる平安貴族たちの幻影が目に浮かびます。
宇治川にかかる「宇治橋」は、646年に奈良元興寺の僧「道登」によって架けられた「瀬田の唐橋」「山崎橋」と共に、日本三古橋の一つに数えられています。橋の袂には、宇治十帖第十帖「夢浮橋」之古蹟碑がある夢浮橋ひろばに、平成15年(2003)建立の「紫式部像」があります。宇治橋を背景に、十二単姿の紫式部が座り、巻物を読む奥ゆかしく佇む姿は、宇治を代表する景色の一つとして人気の写真スポットです。
世界に誇る長編小説「源氏物語」を紫式部が書いたのは、平安時代の半ばの1000年頃であったと言われています。全編54帖のうち、最後の十帖の主要な舞台が宇治の地に設定されていることから「宇治十帖」と呼ばれているのですが、紫式部にとっては源氏物語の終章を書くうえで、川霧にけむる宇治川がなくてはならない舞台装置であったろうと思われます。
宇治十帖は第一帖「橋姫」に始まり、第十帖「夢浮橋」に終わる文学で、物語にとって宇治橋は欠かせないものであり、また、昔も今も「宇治の象徴」というべき存在でもあります。紫式部が、物語の舞台を橋とともに歴史を歩んできた宇治へと移り変わるのを見事に演出しているのを感じます。
宇治へは京阪電車「宇治・伏見1dayチケット」が指定エリア内なら乗り降り自由で便利です。京阪電車で宇治の一つ手前の三室戸寺で下車し、歩くこと15分程度で三室戸寺に到着します。松尾芭蕉が「山吹や宇治の焙炉のにほふ時」と詠み、西行は「暮れはつる 秋のかたみにしばし見ん 紅葉散らすな御室戸の山」と謳っているほどに花の寺なのです。初夏には本堂前の『蓮園』に、250鉢の色とりどりの蓮が咲き、まさしくその光景は極楽浄土のようであろうと思われます。
2006年 初夏のJR東海“そうだ 京都、行こう。”のCMナレーションでは、『「京都」「初夏」「花」で検索して、息子が教えてくれました。春と夏の間に、いったい いくつ季節を隠しているんだ、この町は。』と流れています。
また毎年10月下旬と11月上旬の土日祝には「源氏ろまん 宇治十帖スタンプラリー」が開催されています。いつの頃からか設けられた、宇治十帖の物語を偲ぶ古跡や世界遺産の宇治平等院、宇治上神社などを巡るイベントです。紫式部と源氏物語に想いをはせ、宇治の歴史と文化を歩いてみてください。
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(2024/10/11更新)
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