時空を超えた浪漫紀行。清流 ‘清滝川’ のせせらぎに沿って歩く京都・高雄「神護寺」へのいざない。

時空を超えた浪漫紀行。清流 ‘清滝川’ のせせらぎに沿って歩く京都・高雄「神護寺」へのいざない。

更新日:2013/08/22 18:19

京都市中心部から西北の地に「三尾(さんび)」と称される高雄、槇尾、栂尾エリアがあります。この地は四季を通じて古来より万人に親しまれ、中でも秋は関西で屈指のモミジの名所として、訪れる人々の心を癒して来ました。市内より周山街道を車で走らせること20分余り。静寂に佇む古刹を巡り、ゆったりとした時間の中で悠久のときに想いを馳せる小さな旅に出かけてみましょう。

「三尾」の起点となる高雄山神護寺。平安時代より伝わる多くの旧跡、寺宝と接する。

「三尾」の起点となる高雄山神護寺。平安時代より伝わる多くの旧跡、寺宝と接する。
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清流・清滝川のせせらぎを聞きながら高雄橋を渡ると右側に古びた背の高い石塔「下乗石」が見えて来ます。下乗(げじょう)とはどんな高貴な人でも「これより聖域に入るに当たり、馬から降りなさい」という意味。ここから何段も続く長い石段を誰もが歩いて上ります。

参道途中には弘法大師の旧跡「硯石」を見る事ができます。かなりきつい石段なので旧跡を見ながらの一休みは丁度いいかも知れませんね(笑)。
さて、のぼる事、10分余り。
息を切らせながら上を見上げると立派な楼門(山門)が見えて来ます。楼門には2体の仁王像がありますが、なんとなく「よく上って来たな!ご苦労様」と聞こえてきそうな感じがします。
楼門に書かれた文字は「弘法大師霊場遺迹(ゆいせき)本山」とあり、山号を高雄山と号します(宗派は高野山真言宗)。ご本尊は薬師如来、開基は和気清麻呂公で延暦年間(782〜806年)に建立。809年には弘法大師空海が入山し、真言宗の基礎を築かれた古刹です。


入り口での拝観料は不要でした。
(金堂の拝観料は別途500円必要)

金堂(本堂)に行く前に必ずしておきたい「厄落とし」の儀式。

金堂(本堂)に行く前に必ずしておきたい「厄落とし」の儀式。

楼門をくぐるとそこは広々とした境内が広がります。今まで上ってきた石段とは違う空気を感じます。

ここで知っておきたいポイントを紹介します!

まず金堂に行ってご本尊様とご縁を結びたい所ですが、神護寺では金堂に行く前に「厄落とし」をする事が大切なのです。そのためにある場所に行く必要があります。それが「地蔵院」です。
楼門からまっすぐに歩を進めます。途中、右手にある階段を上れば金堂に行ける所を「我慢して」さらに歩を進めると「かわらけ投げ」「地蔵院」の看板が見えて来ます。道なりに歩を進めると眼下に錦雲渓谷が広がって来ます。ここが「かわらけ投げ」の道場です。

今では全国に広がる「かわら投げ」。
ここ神護寺では「かわらけ投げ」といい、その発祥の地なのです!
素焼きの皿を眼下に広がる渓谷に向けて、力一杯放り投げます。
キレイな弧を描いて飛ぶお皿は気持ちがいいものですよ〜!

ここでの注意点は「かわらけ投げ」はあくまで「厄落とし」だという事。お願い事は「金堂」ですることを忘れないでくださいね!



かわらけ投げ:
素焼きのお皿(直径5センチ)は2枚で100円です。
手前にある売店で買う事ができます。
投げ方は自由。
フリスビーの要領で投げる人や野球のように投げる人など様々です。

厄を落として「金堂」へ。国宝・本尊木造薬師如来と遭う。

厄を落として「金堂」へ。国宝・本尊木造薬師如来と遭う。

地蔵院から金堂に向かう途中に弘法大師が掘ったとされる閼伽井(あかい)の旧跡があります。弘法大師が灌頂(かんじょう)をする際に用いた水をここから引水したとあります。さらに歩を進めると金堂が左手に見えてきます。

金堂は荘厳かつ重厚な佇まいです。
堂内に入ると境内の空気とは違う何かを感じる事ができます。
その内陣にご本尊の薬師如来立像があります。
端正なお顔立ち。
正面を見つめるその眼差しに圧倒されます。

訪問した日は幸運な事に内陣まで入る事を許され、ご本尊を間近に見る事が出来ました。たいへん有難いひとときでした。

なお本堂を入って左側には「国宝・弘法大師直筆の灌頂歴名(写し)」、右側には「国宝・源頼朝公の肖像画(写し)」が公開されていました。
お寺の方の説明では「灌頂歴名」は弘法大師空海が自身用のメモ書きとして残しておいたため、後世まで残されたことはご本人も「思いもしなかっただろうと‥」と。
メモ書きのつもりなので、所々で誤字があり訂正書きを見る事が出来ます。
実はここから『弘法も筆の誤り』という諺が生まれたのです。



金堂拝観料:
500円が必要です。

必見!!「明王堂」の題字は7代目市川団十郎の直筆なり!

必見!!「明王堂」の題字は7代目市川団十郎の直筆なり!

神護寺では毎月1回の割合で明王堂にて参拝者向けに「護摩供(ごまく)」を実施中です。護摩供への参加は無料で、不動明王像の前でご住職が自ら護摩木の焚き上げを行います。読経の中でそれぞれの祈願をしてみましょう。

護摩供の後、ご住職にお話しをお伺いする事が出来ました。
元々明王堂にあった不動明王像は現在は成田山新勝寺のご本尊であること。
なぜ関東にあるのか?は、平安中期に起きた平将門の乱を平定する際に神護寺に安置されていた不動明王を奉じて(下総国で)不動護摩儀式を行い、その法力により乱を平定できたこと。
乱の平定後に明王像を持ち帰ろうとしたが「不動」にして、その地から一歩も動かなくなり持ち帰る事を諦めたこと。
などの興味深いお話しをお聞きできました。

さらに明王堂の題字は成田山新勝寺とゆかりの深い歌舞伎役者の7代目市川団十郎の直筆であり「市川七代目白猿納書」と記され、落款は「団十郎」と「海老」のふたつがある事などをお聞きする事が出来ました。
ちなみに現在安置されている不動明王像も歴史は古く、少なくとも平安後期の作であることが分かっているそうです。


護摩供:
毎月第二日曜日に実施(参加無料)。
護摩木は千円。

楼門下にある茶店「硯石亭」で名物の甘味を食する。

楼門下にある茶店「硯石亭」で名物の甘味を食する。

参道途中にあり最も神護寺に近い茶店「硯石亭」。
弘法大師旧跡「硯石」の真ん前にあり、参道を上る途中(お参り前)に寄ろうか、参拝後の余裕のある時に寄ろうか迷う所ですが、わたしはお参り後に寄ってみました。

京都市内に比べて気温は3度ほど低いという事ですが、暑い時は暑いのです(笑)。茶店名物の「宇治金時」をいただく事にしました。画像はその宇治金時ですが、店主が「ウチのかき氷はすぐ溶け出すから早く撮った方がいいよ!」なんて助言を受けながらモタモタ撮影していると本当に溶け出していました。本来は中にある餡は見えないのですが、それだけ溶け出すのが早いという事です。
撮影を早々に終えてひと口食すると、それはもう「マイウー」しか言えません!中にある金時とおいしい氷が絶妙でした。
ここ硯石亭の名物は「もみじ餅」「お抹茶」「ぜんざい」であり、周りの景色を見ながらの一服は「ぜいたく」なひとときと言えます。


宇治金時:600円
もみじ餅:630円
お抹茶:600円
ぜんざい:600円など



いかがでしたか?
神護寺から歩いて5分の所には「三尾」のひとつ槇尾山「西明寺」が、神護寺から車で5分の所には「三尾」のひとつ栂尾山「高山寺」があります。両寺院とも歴史は古く、国宝や重文がたくさんあります。中でも「高山寺」は鳥獣人物戯画(国宝)で名高く、ほかにも多くの文化財が所蔵されている世界文化遺産の寺院です。

花に触れ、歴史と文化に出会う「高雄・槇尾・栂尾」の三尾めぐりをぜひご堪能ください。

なお神護寺では秋のライトアップ(11月1日〜30日まで)を実施します。
「硯石亭」の店主いわく「ぜひ見に来てください。必見です!」と太鼓判を押されていました。昼間の景色とは違う夜の風景を楽しむのも一考かと…。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2013/08/16 訪問

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