石川県金沢市「鈴木大拙館」は記念館でも無く、資料館でも無い!

石川県金沢市「鈴木大拙館」は記念館でも無く、資料館でも無い!

更新日:2017/11/30 11:09

仏教や哲学、また禅といった言葉にはどんな印象を持つでしょうか?難しそう、堅苦しそう、と感じてしまうかもしれませんが、御安心下さい。禅は知性よりも体験を重視するものです。仏教哲学者・鈴木大拙に関する施設で、素敵な体験を味わってみてはいかがでしょう。

周辺の木々が水面に映る“水鏡の庭”や他の文化施設とは異なる展示方法など魅力溢れる石川県金沢市「鈴木大拙館」を、その特徴にも触れながら御紹介致します。

「鈴木大拙館」概要とアクセス

「鈴木大拙館」概要とアクセス
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仏教哲学者・鈴木大拙(すずき だいせつ、1870年〜1966年)の名前を冠する施設、石川県金沢市にある「鈴木大拙館」。

まずは、「鈴木大拙館」という施設の名称に注目してみて下さい。はい、ちゃんと考えてみましょう。何か気になる部分はあったでしょうか?他の文化施設とは異なる点はあったでしょうか?

ポイントは、“鈴木大拙”という名前の後に“館”という字が付いているだけです。

“記念館”でもなく、“資料館”でもなく、“博物館”でもありません。
文字通り、「鈴木大拙館」なのです。その理由は、鈴木大拙の考えは今も生き、これからも未来に向って広がっていくもの、であるため。つまり、過去ではなく未来志向なのです。

アクセス方法は金沢駅兼六園口(旧東口)から「城下まち金沢周遊バス」に乗車し約20分、“本多町”のバス停で下車後、徒歩約4分です。バスには右回りと左回りのルートがありますが、所要時間がほぼ同じですので、予定や計画に合わせて御利用下さい。

仏教哲学者・鈴木大拙と“水鏡の庭”

仏教哲学者・鈴木大拙と“水鏡の庭”
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「鈴木大拙館」は、こちらの金沢市本多町に生まれた仏教哲学者・鈴木大拙、の生涯に学び、その思想に出会う場所です。海外では、D.T.SUZUKIとして広く知られており、欧米諸国からの訪問者も多いのも特徴です。

1870年(明治3年)生まれの鈴木大拙、本名・貞太郎(ていたろう)は、石川県専門学校付属初等中学校を卒業、第四高等中学校に入学しますが家計の事情により中退します。小学校の教員として勤務した後に上京、友人の西田幾多郎の勧めにより帝国大学文科大学哲学科選科に入学。1894年(明治27年)に、在家にて仏道を学ぶ者に与えられる名前、居士号(こじごう)「大拙」を受けます。

1897年(明治30年)に渡米し、約11年間、東洋思想に関する英書の出版編集に携わります。帰国後には学習院、大谷大学で教授となり、その間に日本語の著書を始め、英著を執筆、また同時に世界を周りながら禅や仏教に関する講演を行なったのです。

以上のように世界的に活躍した鈴木大拙の思想を反映させたのが、「鈴木大拙館」。写真は“水鏡の庭”、その中央部分には“思索空間”が立っています。水面に映る木々や空、また波紋などを見つめながら、“何か”を感じ取ってみて下さい。

来館者と鈴木大拙が出会う場所“内部回廊”

来館者と鈴木大拙が出会う場所“内部回廊”
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エントランスを入って驚くのは、“展示空間”へと続く“内部回廊”。遠く突き当たりには、何やら見えますが、何なのでしょうか?

壁面は鈍い光沢に仕上げるツヤ消し研磨加工の一種、バイブレーション加工により独特の風合いが醸し出されています。目を凝らすと無数の曲線が施されているのが分かります。

右手には、大きなクスノキと“玄関の庭”。回廊の途中にも、庭を眺められるコーナーが設置されています。そのまま進んでいくと、途中で気が付く事になると思いますが、鈴木大拙の写真が飾られています。

そして、ここまで、「鈴木大拙館」では全く、鈴木大拙に関する経歴や紹介文が全く掲示されていません。来館者が鈴木大拙と自然に“出会う”というコンセプトが込められているのです。

あれれ?やっぱり他とは何か違うぞ…。

あれれ?やっぱり他とは何か違うぞ…。
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こちらは、“展示空間”の後に続く、“学習空間”です。棚には鈴木大拙の関連書籍が並び、机や椅子も用意されているので、手に取ってじっくりと読む事が出来るように配慮されています。

さて再び質問です。こちらの“学習空間”でも、鈴木大拙ゆかりの品が展示されていますが、この写真を見て何か気が付く事があるでしょうか?
ポイントは他の美術館や博物館では、必ずあると言っても良い、そんなモノが「鈴木大拙館」には無いのです。さて、そろそろ、お分かり頂けたでしょうか。展示品の横や手前などを確認すると…。

あっ、無い。無いぞ。

説明書きが無い、展示品の前の柵が無い、注意書きも無い。
ただ、そこには、展示品が存在しているだけなのです。

他の美術館や記念館などでは、見かける事の無い光景を「鈴木大拙館」にて味わってみて下さい。

晴れの日は晴れの日の。雨の日には雨の日の。

晴れの日は晴れの日の。雨の日には雨の日の。
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“学習空間”を抜けて、“外部回廊”へ出ると“水鏡の庭”が広がります。訪れた日の季節や天候によって移り変わる表情を心に捉えてみて下さい。晴れの日には鳥のさえずり、木々の葉擦れ、雨の日には水面に落ちる雨粒、無数の波紋など。

“思索空間”には腰掛けられるように床几(しょうぎ)が設置されています。約7メートル近い高さのある天井の中央には乳白色フィルムで仕上げられた高透過ガラス。外界の光を優しく取り込んでいます。こちらで落ち着きながら、“水鏡の庭”を眺めるのもオススメです。

鈴木大拙の思想を反映した「鈴木大拙館」を設計したのは建築家・谷口吉生(たにぐち よしお、1937年〜 )。文化勲章受章者であり、金沢出身の建築家・谷口吉郎(たにぐち よしろう、1904年〜1979年)の御子息です。

様々な趣向や意匠を調和させた建築を丹念に追ってみてはいかがでしょうか。

石川県金沢市「鈴木大拙館」のまとめ

上述の他に、“学習空間”から望める、流れるような石組みが見事な“露地の庭”、関連書籍やオリジナルグッズが販売される受付・ショップ、館内の周りにある散策路など注目のポイントが沢山あります。

また展示に関する解説・紹介文は、A5版(148mm×210mm)のリーフレットにて、実は“展示空間”の隅や“思索空間”の入口に、控え目にさらりと用意されています。入館した際に配られる鈴木大拙の略歴などが記載されたリーフレットばさみには収納ポケットが付いているので、必要に応じて御利用下さい。

展覧会等の詳細に関しては下部関連MEMOにあります公式サイトへのリンクより御確認下さい。以上、仏教哲学者・鈴木大拙を知り、学び、そして自ら考える、をコンセプトにした他の文化施設とは一味も二味も異なる石川県金沢市「鈴木大拙館」の御紹介でした。

撮影協力:鈴木大拙館

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/04/06−2016/04/07 訪問

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