全国唯一!仏像をかぶる“被仏”とは!?岡山・弘法寺の奇祭「踟供養」

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全国唯一!仏像をかぶる“被仏”とは!?岡山・弘法寺の奇祭「踟供養」

全国唯一!仏像をかぶる“被仏”とは!?岡山・弘法寺の奇祭「踟供養」

更新日:2016/04/16 15:41

乾口 達司のプロフィール写真 乾口 達司 著述業/日本近代文学会・昭和文学会・日本文学協会会員

仏像といえば、その前に跪き、有り難く拝む存在であると思っている方は多いでしょう。しかし、岡山県瀬戸内市には、人が実際に仏像の内部に入り込み、仏と化す奇祭「踟供養」が伝えられています。人がかぶる仏像の名は、そのものズバリ、「被仏」。今回は人がかぶる仏像としては全国唯一とされる「被仏」についてお伝えしましょう。

極楽浄土の象徴!踟供養に出現する被仏

極楽浄土の象徴!踟供養に出現する被仏

写真:乾口 達司

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阿弥陀如来を体現した「被仏」(かぶりぼとけ)が出現するのは、毎年5月5日にとりおこなわれる弘法寺の踟供養(ねりくよう)において。踟供養は、奈良時代に実在したと伝わる中将姫の故事にもとづいた祭礼であり、当日は菩薩面や地蔵面をつけて仏に仮装した一団が、中将姫の小さな坐像をいただきながら、極楽浄土に見立てたお堂を目指して境内を練り歩きます。写真の左端で仏の一行を出迎えている仏像が被仏。一行を出迎えるという役割から「迎え仏」とも呼ばれています。

中将姫伝説の本場である奈良県・当麻寺を筆頭に、現在も全国各地に踟供養(「練供養」とも書く)は伝えられています。しかし、実際に人が仏像の内部に入り込み、極楽浄土に見立てたお堂で一行を出迎えるのは、現在、弘法寺の被仏のみ。しかし、弘法寺の被仏と同様、当麻寺に伝わる阿弥陀如来立像が人の入り込んだ痕跡を内部に残しているように、中世には各地の踟供養において同様の被仏が登場したと考えられています。つまり、弘法寺の踟供養はその古い形式を現代にまで伝えているといえ、その意味でも貴重な祭礼であるといえるでしょう。

※…写真は2014年の様子です。

岡山県指定の文化財に登録されている被仏

岡山県指定の文化財に登録されている被仏

写真:乾口 達司

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踟供養の当日、被仏は一行を出迎える側のお堂に安置されます。一行が練り歩くのは塔頭の遍明院と東寿院とのあいだであり、出発場所と到着場所は毎年入れ替わります(2016年は遍明院から東寿院へ向かう)ため、被仏を拝観する際は到着側のお堂に足を運びましょう。

写真は遍明院の本堂に安置された被仏。13世紀後半の作と考えられており、現在、岡山県の文化財に指定されています。全長は197.5センタメートル、その構造は、頭部から法衣の垂れ下がった膝あたりまでの上体部と裳裾部以下の下部とが分離する「上下二部式像」。中世の仏像には見られるスタイルであり、当初は下部および台座に上体部をはめ込む形で屹立していました。しかし、後年、何らかの理由によって下部と台座が失われ、現在は上体部のみが伝わっています(写真の下部は近年新調したもの)。

この穴、いったい何!?腹部に設けられた覗き穴

この穴、いったい何!?腹部に設けられた覗き穴

写真:乾口 達司

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では、それぞれの部位をじっくり観察しましょう。写真は被仏の腹部を撮影したものですが、右下に何やら細長い穴のようなものが開けられているのが、おわかりいただけるでしょう。穴の縦は0.65センチメートル、横は5.4センチメートルと測定されていますが、この穴、いったい何だと思いますか?

実はこの穴、人が内部に入った際、その人が外部の様子をうかがうために設けられた覗き穴なのです。実際、内部に入ると、目の高さがちょうど覗き穴のあたりに位置しており、覗き穴としては充分役立っているとのこと。被仏ならではの意匠である覗き穴、お見逃しなく!

内部はこうなっている!角材がわたされた被仏の内部

内部はこうなっている!角材がわたされた被仏の内部

写真:乾口 達司

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被仏ならではの意匠は、内部の構造からもうかがえます。内部が空洞になっていることが、この写真からはおわかりいただけるでしょう(※通常は撮影不可)。

さらに注目したいのは、前面部と後背部とをつないでいる2本の角材。内部にもぐり込んだ人はこの角材のあいだから首を出し、角材を両肩でかつぐようにして仏像本体を支えるのです。内部がこんな構造になっていたこと、想像出来ましたか?

決定的瞬間!仏像を被る様子

決定的瞬間!仏像を被る様子

写真:乾口 達司

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踟供養の一行が極楽浄土に見立てたお堂に近づいて来ると、いよいよ被仏の出番。写真は人が被仏をすっぽりかぶる瞬間を撮影した一枚ですが、内部が空洞のため、2メートル近い大きさの仏像でも、大人数人なら充分持てる重量であることが、この写真からもうかがえます。

その後、内部にもぐり込んだ人は立ち上がり、一行を出迎えることとなりますが、被仏役の方からうかがった話では、頭部が被仏の腹部あたりに位置しているため、先に紹介した角材によって内部から支えているといっても不安定さは免れず、両脇を支えてもらわないと立ち続けるのは難しいとのこと。さらに、覗き穴は開いているものの、その閉鎖性から酸欠に近い状態になってしまうそうです。実際、行事の終了後、その方が被仏から出て来ると、汗びっしょりで息も絶え絶えといった状態。仏像をかぶるというと、何だか楽しそうに思えますが、実際はそんな気軽なものではないのですね。そのあたりも、ぜひ、ご覧下さい。

おわりに

弘法寺・踟供養に出現する被仏の魅了、おわかりいただけたでしょうか。上でも紹介したように、実際に人がかぶる仏像としては全国唯一であるため、希少価値は抜群。ぜひ、中世以来の伝統を持つ被仏と踟供養をご拝観下さい。

掲載内容は執筆時点のものです。 2014/05/05 訪問

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