写真:吉川 なお
地図を見る「青田七六」は、観光客もよく訪れる台北の人気グルメエリア永康街からほど近い、青田街にあります。店名は住所の七巷六号から命名されたもので、現在の大安区青田街及び永康街、温州街エリアは、1931年の台北帝国大学(現在の国立台湾大学)の開校に伴って日本から渡ってきた教職員の宿舎が多く建てられたことから、当時「昭和町」と呼ばれていました。
ここもその時に、微生物学の権威として知られた足立仁(まさし)教授の宿舎として、彼自らが設計して建てられました。足立教授は1929年から理農学部で教鞭を取っていましたが、1945年、日本の敗戦による引き揚げで帰国。その後、家主は同じく国立台湾大学で地質学を研究していた外省人の馬廷英教授に替わりました。
1976年に馬教授が亡くなり、2007年まで家族によって大切に使用されてきましたが、2006年に台北市定古跡『国立台湾大学日式宿舍─馬廷英故居』として保護されることになり、この貴重な文化財を有効活用するべく、2011年6月にレストラン&カフェ「青田七六」が誕生しました。
写真:吉川 なお
地図を見る建物は瓦屋根の和風建築で、台湾の気候風土を考慮して西洋式建築もうまく取り入れられています。玄関ポーチや出窓などが設らわれ、洋間の応接室、食堂、書斎などは外側に、生活空間である和室は内側に、風通しをよくするため一列に配されています。玄関の横にはよく手入れされた庭があり、植物がたくさん生い茂っています。
玄関に向かう前にまず目に入るのは、右手にある家紋のようなものが書かれた大きな看板。1年365日の誕生花を記したもので、その日生まれた人の特性も記されています。まずは自分や家族の誕生花を見つけてみましょう。
その下にあるのは台湾全島から集められた石の標本で、地質学を専攻した馬教授に因んで展示されている貴重なコレクションです。
写真:吉川 なお
地図を見る玄関を一歩入ると、そこには懐かしさを感じる和の世界が広がっています。邸内の部屋全部が飲食スペースとして開放されています。
玄関の左側の応接間は6名定員。そこにある戸棚と大きい本箱は足立教授の時代から使われているものです。戸棚の中には馬教授が収集した書籍やゆかりの品がそのまま残されており、飾りガラスがはめ込まれた窓からは明るい陽射しが差し込んでいます。
その隣の食堂にも二人用のテーブルが3客あり、入口にピアノが置かれています。当時、一家が集ったこの場所で音色を奏でていたのでしょう。木の扉で仕切られた隣室は8名が座れる書斎で、ここで研究や論文の執筆をされていました。
食堂、書斎と隣にある6名定員の子供部屋の前には広い廊下があります。黒く光る床にはこの家の歴史が刻まれ、とても趣ある空間になっています。その奥には和室が2室。寝室として使われていた座敷と次の間は20名収容可能で、やはり寝る部屋には畳が好まれていたようです。
また、廊下の突き当たりには風呂場、横に台所、女中部屋、トイレが並んでいます。女中部屋は2畳の畳部屋。4名でひざを突き合わせて歓談できます。
写真:吉川 なお
地図を見る廊下のガラス戸を開けると、そこには明るい陽光室があります。ドイツに留学した経験から設けられたもので、太陽が天井から降り注ぎ、日光浴が楽しめる空間でした。今は16名が座れるサンテラスとなっていて、そこでもお茶を飲むことができます。
庭には、もう埋め立てられてしまいましたが、プールもありました。身体の弱かった娘さんのために作られたもので、その甲斐あって水泳選手になるほど上達されたとか。その跡地は、馬廷英教授の妹一家が配膳室とガラスの屋根を持つ戸外テラスに改装し、16名が座れるカウンターを設けました。
邸内は床板保護のため、靴下の着用が義務づけられています。その場で購入もできますが、あらかじめ用意されたほうがいいでしょう。
また、毎月不定期ですが、ガイドによる中国語ツアーも開催されています。キャンセル待ちが出る日もあり、台湾人にも好評です。
写真:吉川 なお
地図を見る「青田七六」の営業時間は午前11時半から午後9時までで、毎月第1月曜日はお休みです。食事は午前11時半から午後2時、午後5時半から午後9時の間のみ、午後2時半から午後5時はアフタヌーンティータイムと、3部制になっているのでご注意を。
アフタヌーンティーでは季節限定の和洋菓子が味わえます。春夏秋冬の季節感を感じる手作りのデザートは台湾茶ともよく合い、異国の日本家屋でいただくとまた格別です。時期を変えればいろいろな味に出会えます。
写真は和風フルーツパフェで、台湾産ジェラードに4種類のフルーツ、あずきときな粉たっぷりの黒糖餅が載っています。特製のスペシャルコーヒーも人気で、りんごジュースと緑茶にドリップコーヒーをブレンドしたもの、さとうきびジュースとドリップコーヒーのブレンド、しょうがとさとうきびジュースとバラのエキス入りのエスプレッソの3種類があります。
「青田七六」が人々を惹きつけるもの、それは現代の世の中で失いつつある昔の情緒が、その場にいるだけで感じられるところにあります。
現在の日本では接する機会が少なくなってしまった古き良き時代の面影、それを台北で感じてみませんか。
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(2024/9/9更新)
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