東京・城南エリアの有名高台の5か所を総称して「城南五山」と呼び、そのいずれもが古くから高級住宅街として知られています。そのうちの一つである島津山と呼ばれるエリア(東京都品川区東五反田)は、江戸時代は仙台藩伊達家の下屋敷があった敷地を明治になって薩摩藩島津家が買い取り、島津家のお屋敷が建つようになって島津山と呼ばれるようになりました。
大正4年(1915年)には、日本の近代建築に大きな影響を与えたイギリスの建築家であるジョサイア・コンドルが設計と施工を請け負い、島津公爵邸が竣工しました。ジョサイア・コンドルは鹿鳴館や三菱一号館など瀟洒な洋館を設計するだけでなく、工部大学校で教鞭をとり、日本銀行本店や東京駅を設計した辰野金吾、丸の内の三菱オフィス街の基礎を作った曽禰達蔵、迎賓館などで知られる片山東熊など近代建築創成期における多くの日本人建築家を育てたことで有名です。
その作品は残念ながら関東大震災や東京大空襲で焼失し、現存する建物は数か所しかなく、かつ非公開あるいは有料での公開となっています。
イタリア・ルネッサンス様式を基調とした重厚感あるこの建物は、当初は島津公爵家の迎賓館として使用され、大正天皇が行幸したこともある本格的な洋館です。関東大震災以降は島津家の本宅として使用され、常住することになりましたが、昭和の大恐慌では敷地の2/3を処分、そして戦時中の昭和19年(1944年)に日本銀行に売却されました。
関東大震災で被災することなく耐え、太平洋戦争でも戦火に遭わず生き抜いた旧島津公爵邸は終戦直後、その丈夫で安心な西洋建築物ということから、GHQがこの建物を接収して将校の社交クラブや宿泊施設として使用し、「プリンス・シマズ・ハウス」と呼ばれていました。
昭和36年(1961年)に清泉女子大学が所有権を取得、その翌年から学舎として使用されることになり現在に至っています。伝統と歴史あるこの建物は清泉女子大学とその学生の手によって長く大切に扱われ、平成24年(2012年)には「旧島津公爵家袖ヶ崎本邸洋館(清泉女子大学本館)」として東京都の指定有形文化財に指定されました。
旧島津公爵邸が竣工したのが大正4年(1915年)、そして日本近代美術界の巨匠、黒田清輝による内装に2年をかけて完成させ、大正6年(1917年)に落成披露が行なわれました。清泉女子大学では2015年から2017年までを旧島津公爵邸竣工100年記念と位置付けてフォトコンテストが開催されることになりました。
このフォトコンテストにはどなたでも参加が可能な「一般の部」、高校生と大学生(応募時点)が参加できる「学生の部」に分けて実施されます。その被写体が現役の学舎である旧公爵邸となることから以下のように日時が限定されていますが、事前申し込みがなくどなたでも撮影日(特別公開日)に入場ができます。
■撮影日(特別公開日)
2016年4月30日(土)、5月15日(日)、6月5日(日)11月6日(日)、11月23日(水・祝日)、12月4日(日)
■撮影可能時間
10時〜15時
■フォトコンテスト応募期間
2016年11月1日(火)〜12月9日(金)必着
大学へ持ち込みの場合は事前連絡のうえ、平日9時〜17時。
■大学構内への入場にあたっての注意事項
(1) 撮影当日に守衛室で住所と名前等の記帳が必要。
(2) 未就学児の同伴入場はできません。
(3) 車での来場はお断り。
■その他
2016年4月30日(土)と11月6日(日)はイベントが開催されます。写真家の土田ヒロミさんによる撮影指導、学生課外活動発表会がある他、リコーイメージング株式会社による一眼カメラ・レンズの貸出等が予定されています。
清泉女子大学では、一般の個人の方を対象として、前期(4〜6月)と後期(10〜12月)に学生さんがガイドとなって邸内見学ツアーというイベントを実施しています。この邸内見学ツアーは毎年人気の高いイベントとなっており、2016年度前期の邸内見学見学ツアーは既に満員締切りとなっています。
2016年度後期の邸内見学ツアーは2016年9月5日より6日間のみ往復はがきでの申込受付が予定されており、応募者多数の場合は先着順となります。そういったことから、申込手続きの必要がないこのフォトコンテストの撮影日(特別公開日)はまたとない機会です。
NHK大河ドラマ『龍馬伝』などドラマロケでも使用されることがある学舎を背景に、カメラマンになりきってフォトコンテストに参加なさってみては如何でしょうか。
日本の近代建築に大きく影響を与えた建築家、ジョサイア・コンドルが設計した建物は、残念なことに数えるほどしか現存しません。そのコンドル作品の中でも、華族最上位の公爵家の邸宅はこの島津公爵邸(清泉女子大学)のみです。
普段は女子教育の学び舎として使用されていることから、大学構内に立ち入ることはなかなかできません。限定された日時での公開とはいえ、伝統と歴史を刻んできた由緒あるお屋敷が目の当たりにできる大変貴重な機会です。ぜひご覧ください!きっとその重厚感ある建物から醸し出される雰囲気に酔いしれること間違いありませんよ。
最後に、清泉女子大学の関係者の方々、学生の皆さんが大切に丁寧に使用されてきた建物ですので、ご参加の折には同様に大切に丁寧に扱ってくださるようお願いいたしますね。
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(2024/10/12更新)
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