まずは平蔵地区にある西願寺阿弥陀堂。室町後期の寺院建築で重要文化財に指定されています。軒の出が大きく優美です。昭和2 (1927)年の解体修理のときに部材に墨書銘があるのが発見されていて、この銘から明応4 (1495)年に鎌倉の大工が造ったことがわかっています。
西願寺阿弥陀堂の特徴は本格的で格式の高い禅宗様建築であることです。禅宗様というのは鎌倉時代に宋から伝えられた様式で、宋の禅僧との交流を通じて成立した様式です。禅宗様建築自体は全国にあるものですが、鎌倉の名人大工が造っただけあって優秀な作です。禅宗様の特徴としては「扇垂木(おうぎだるき)」と「詰組(つめぐみ)」あたりがわかりやすいかと思います。軒下で軒の出を支える「垂木」が放射状に並んで扇の骨のようになっているのが「扇垂木」です。寺院建築では柱上に組物をおきますが、柱上の組物の間にも組物をいれて組物が詰まってずらっと並ぶのが「詰組」です。この建築では三段階で外側に出て軒を支える「三手先」の詰組で格式の高い造りです。
西願寺は建築の美だけでなく、田園風景の景観美もまた魅力です。この写真は田植え後の6月の雨天時に撮ったものですが、水田の景観は季節や天気で全く別の表情を見せるので、何度行っても楽しめます。
西願寺の近くにもうひとつ重要文化財の寺院建築があります。もともとは善福寺という寺院のお堂でしたが、後に善福寺が鳳来寺と合併して、旧善福寺境内から移築されて鳳来寺の観音堂となっています。建てられた年ははっきりしないものの西願寺阿弥陀堂と同時代の室町後期のものとされています。この建築も扇垂木と詰組で、禅宗様の特徴を見ることができます。組物は二手先なので西願寺阿弥陀堂より格式は下がりますが、中世建築らしく優美な建築です。
今回は市原市に限って紹介してみましたが、房総半島は古建築が結構残っているのでいろいろあわせて旅をしてみるといいと思います。車があれば長南町の笠森寺もすぐです。笠森寺観音堂は大岩の上にあって四方が開けた四方懸造という珍しい建物です。また、房総半島の田園景観も素晴らしく、特に鴨川市の大山千枚田は関東地方では最大規模の棚田で壮大な景観が楽しめます。
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