台湾に残る日本人の栄華の跡!復元された日本統治時代の料亭「紀州庵」

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台湾に残る日本人の栄華の跡!復元された日本統治時代の料亭「紀州庵」

台湾に残る日本人の栄華の跡!復元された日本統治時代の料亭「紀州庵」

更新日:2016/04/29 17:52

吉川 なおのプロフィール写真 吉川 なお 台湾在住ライター、元旅行会社勤務の旅行マニア

1895年から50年間日本だった台湾には数多くの日本建築が残り、今も当時の貴重な建物が台湾の人たちによって修復され、保存されています。МRT古亭駅から約10分の場所にある「紀州庵」もそのひとつで、かつては和歌山県出身の平松家が営んだ料亭でした。廃屋だった離れが復元され、現在一般公開されています。

そこで見られるのは、当時活躍した日本人の栄華の跡。それは日本と台湾、双方の歴史の軌跡でもあります。

大繁盛した料亭

大繁盛した料亭

写真:吉川 なお

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「紀州庵」は和歌山県で大工を営み、軍属として台湾に渡った平松徳松氏が1897年に開業した料亭です。日本の統治が始まったことで、日本人が大幅に増えることを見越した彼は、いち早く料理店の経営に乗り出し、日本人が多く住む若竹町(現在の台北市萬華区、西門町の南側)に店を構えました。

その読みは見事に的中し、交通の便の良さも手伝って、店は瞬く間に繁盛しました。店舗を拡大するため、1917年に新たに支店を造ることになり、その場所として選ばれたのが、現在「紀州庵」が建っている、当時川端町と呼ばれた淡水河の支流の新店渓のほとりでした。

当初は木造茅葺屋根の2階建てでしたが、商売の成功を受け、1927年から1年をかけて数寄屋造りの3階建てに改築されました。鉄筋セメント造りの1階は全盛期には40人近くいたという使用人の部屋、木造の2階は客室と調理場、帳場と平松家の居住空間、3階には100畳もの広さの大広間がありました。2階は堤防と同じ高さで、石橋を架けて川と行き来できるようになっていました。

美食と景色が楽しめる湖畔料亭

美食と景色が楽しめる湖畔料亭

写真:吉川 なお

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同時期、本館と渡り廊下でつながる「離れ」も造られました。60畳の広さを持つ長屋形式の宴会場で、庭の東側には「別館」も建てられ、20、30畳の広さの2つの部屋では主に招待客がもてなされていたといいます。

「紀州庵」の成功の秘訣、それは川に面した立地にありました。目の前の新店渓で釣れる鮎の料理が自慢で、船と釣り具が貸し出され、客自らも釣りをすることができました。遊泳場も整備され、水泳も楽しめました。特に好評だったのは屋形船の宴会で、芸妓が同乗し、食べたり飲んだり、その場で新鮮な魚を捕まえて料理にしたりと、さそかし楽しかったことでしょう。当時の賑わいぶりが想像できます。

しかし、順風満帆だった「紀州庵」はやがて時代の波にのまれます。1940年に本店を閉め、支店の経営もうまくいっていた頃、太平洋戦争が勃発し営業停止となります。平松家も台湾を離れ、ここに紀州庵の栄光の歴史は終わりを告げました。

押し寄せる時代の波

主がいなくなった建物は、戦争で負傷した人たちの臨時収容施設や神風特攻隊員の宿舎として使われ、終戦後もしばらくは日本人の臨時居住施設となっていましたが、1947年に国民政府に接収され、公務員や教職員の宿舎となりました。

1996年、1998年と二度火災が起き、残念なことに本館と別館はこの時に全て焼け落ちてしまいました。離れは延焼を免れたものの、柱は壊れ、屋根から水が漏るという無残な姿となりました。

こうして栄華の跡は失われ、この状態でしばらく放置されていましたが、2002年に台湾大学の学生がこのエリアの環境を調査したことがきっかけで「紀州庵」の保護活動が始まりました。その功あって、2004年、台北市から重要文化財の指定を受け、2011年にはこの地域から多くの文学者が輩出されたことに鑑みて、「紀州庵文学森林」という新館が建てられました。台湾文化の継承、推進を目的とし、連日セミナーや講座などが開催されています。

「紀州庵」の建物のうち、唯一残った「離れ」は本館につながる廊下とともに2014年に修復されました。この修復は、台湾市民の郷土愛が市政を動かした結果実現したもので、日本人にとっても喜ばしいことと言えるでしょう。

押し寄せる時代の波

写真:吉川 なお

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復元された「離れ」

復元された「離れ」

写真:吉川 なお

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離れは、当時の姿そのままに復元されました。12畳の和室が5室並び、その間はふすまで仕切られ、ここで部屋ごとの宴会や大型宴会が行われていました。東の端部屋には床の間があり、そばの飾り棚には和歌山市から友好記念として贈られた美しい「紀州てまり」が飾られています。

部屋の両端には広い廊下があり、角には扇形の窓もしつらわれています。自然美を愛でながら食事できるよう、西側には大きな池と季節の花が植えられた庭園が、東側には芝生が張られ、部屋から異なる景色が楽しめるよう設計されています。縁側に座っていると、木々の緑に心が癒されます。

新館の茶館で一服

新館の茶館で一服

写真:吉川 なお

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新館は離れの右側にあり、1階は文創書店と展示スペースと文学茶館、2階は多目的ショールーム、3階は講堂で構成されています。

1階左側の文学茶館では、台湾茶やコーヒーのほか、麺やご飯類、軽食、デザートなどが注文できます。茶館でありながら食事が充実しているのが特徴で、メニューの表紙に日本語で「自然の味を引き出し」と書かれているように、素材や調理方法にこだわったメニューが満載です。

食事をされたい方には「作家私房菜」メニューがお薦めです。私の家の料理というコンセプトで、顔写真が載った料理人の自慢料理がいただけます。

工夫茶という作法でいただく台湾茶も格別です。スコーンやワッフルなどのデザートと飲料がセットになったアフタヌーンセットもあります。

古きよき時代に思いを馳せて

時代の大きなうねりに翻弄され、主を変えながらも蘇った「紀州庵」。現代の台湾人によって、先代の日本人が築いた財産が大切に守られています。

台湾に残る古きよき時代の文化遺産、一見の価値ありです!

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掲載内容は執筆時点のものです。 2016/04/23 訪問

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