写真:櫻井 れき
地図を見る西武池袋線・椎名町駅、東長崎駅より徒歩15分、あるいは都営大江戸線・南長崎駅より徒歩10分ほどのところに、"マンガの聖地"トキワ荘通りがあります。
かつてここには昭和のマンガ界をささえたレジェンドたちが集結し、青春時代を過ごした「トキワ荘」という木造2階建てのアパートがあり、周辺には若かりしころのマンガ家たちが通った銭湯や映画館、喫茶店などもありました。
住人たちだけではなく、毎日のようにトキワ荘に通っていたつのだじろう、永田竹丸、園山俊二といった「通い組」と呼ばれるマンガ家もいたほどで、トキワ荘はまさに"マンガ家たちの梁山泊"といえる場所だったのです。
トキワ荘は残念ながら老朽化のため1982年に取り壊されてしまいましたが、豊島区と地域の協働により当時のトキワ荘に関する展示や、トキワ荘に関係したマンガ家たちの作品が読めるスペースが2013年にオープンしました。それが「トキワ荘通りお休み処」です。
それでは中の様子をご紹介しましょう。
写真:櫻井 れき
地図を見る「トキワ荘通りお休み処」は、1Fがマンガ閲覧スペース・物販で、2Fはトキワ荘関連の展示スペースといった構成になっています。
2Fの展示スペースへは靴を脱いでスリッパに履き替えます。そのスリッパには「トキワ荘」とプリントされており、なんだか階段をのぼっているうちに、本当に当時のトキワ荘におじゃましている気分になってきます。
階段をのぼった先にまず目に入るのは、マンガ家たちがトキワ荘に出入りしていた時期を記した年表とトキワ荘の歴史についての説明書きです。
またこちらの展示スペースには、次項でご紹介する寺田ヒロオの部屋を再現した展示や寺田ヒロオの腕時計、マンガ家たちがアイデアを考えた喫茶店「エデン」のマッチ、通っていたラーメン屋「松葉」のどんぶりなどが展示されています。
もともとトキワ荘に入居していたマンガ家は、手塚治虫と寺田ヒロオの2名だけでした。
作品に感銘を受けた藤子・F・不二雄と藤子不二雄Aが手塚治虫に送った一通のファンレターから文通がはじまり、やがて藤子が上京する時に手塚から部屋を譲り受けたのが、トキワ荘の伝説の始まりだったのです。
やがて続々と若手マンガ家たちがこのアパートに集結し、あっという間にトキワ荘の住人はマンガ家たちで埋め尽くされました。また、「通い組」と呼ばれる毎日のようにトキワ荘に通うマンガ家もおり、時には酒盛りをしたり、しめきり前のマンガ家を手伝ったりなど青春を謳歌していたのです。
写真:櫻井 れき
地図を見る手塚治虫から部屋を譲り受けた藤子・F・不二雄、藤子不二雄Aの向かいの部屋には、トキワ荘の兄貴分的存在で「テラさん」と呼ばれ慕われた寺田ヒロオが入居しており、上京したばかりで仕事もなく貧乏だった藤子たちにラーメンの出前をとってあげたり、得意の料理をふるまったりなど面倒を見ていました。その寺田ヒロオの当時の部屋を再現した展示がこちらの写真です。
四畳半のスペースいっぱいにタンスや作業机などの家具が置かれています。テーブルの上にはお皿や酒瓶が乗っており、かつてのテラさんが他のマンガ家たちを部屋に招待して酒盛りをしていた様子がわかります。
特にテラさん考案の「チューダー」と呼ばれる焼酎をサイダーで割った飲み物は住人たちに好評で、何かお祝い事があった時などにはテラさんの部屋でチューダー・パーティーが開かれていたというエピソードが藤子不二雄A作品『まんが道』に登場しています。
当時のトキワ荘は一部屋四畳半、トイレ炊事場は共同で家賃は3,000円、現在の価値でいうと約3万円ほどでした。当時でも上京したての貧乏なマンガ家たちにとっては決して安い金額ではありません。そこで寺田は後輩たちを部屋に呼び、時には励まし時には叱咤しつつ、自慢の手料理をふるまうのでした。
写真:櫻井 れき
地図を見る1Fには、トキワ荘関係のマンガ家たちや「トキワ荘通りお休み処」を訪れたマンガ家たちなどのサイン色紙がずらりと並んでおり、漫画家たちにとってトキワ荘がいかに愛されていたのかということをうかがい知ることができます。
また、トキワ荘に関係したマンガ家たちの作品が読めるスペースもあります。今では絶版となり書店に並ぶことのない貴重な作品も無料で読むことができ、中にはそのマンガを読みに朝から閉館時間までいらっしゃるファンもいるほどです。
写真:櫻井 れき
地図を見るこちらは、トキワ荘に関連する物販コーナーです。
特に人気なのは、豊島区立郷土資料館から出ている「トキワ荘のヒーローたち〜マンガにかけた青春〜」という図録です。発行部数の限られたもので再版の予定はありませんので、少しでも興味を持たれた方は買っておいて損はないと思います。
他にもトキワ荘の名前入りのユニークなスリッパや、寺田ヒロオが後輩たちにふるまったチューダーをモチーフとしたキャンディなどが販売されています。
昭和を代表するマンガ家たちのゆかりの地であるトキワ荘。今は残念ながら建物は現存していませんが、このようにして再現された部屋などの展示物を見ているだけでも、当時の暮らしぶりが目に浮かぶようです。
ちなみにこちらのお休み処は、かつて米店だったところを改装したものです。この米店も90年以上の歴史のある建物で、天井部分などに米店時代の名残を残しており、これがまたレトロで味のあるものとなっていてトキワ荘の雰囲気にぴったりマッチしています。
「トキワ荘通りお休み処」は入館無料、開館時間は10:00〜18:00(最終入館17:30)です。毎週月曜(祝日の場合翌日)と年末年始は休館日です。
なお、駐車場はありませんので来館の際は公共の乗り物をご利用ください。
※文中の"塚"は旧漢字
※文中の"A"は○の中にA
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この記事を書いたナビゲーター
櫻井 れき
東京在住の主婦ナビゲーター、櫻井れきです。タイ・バンコクの情報を中心にお届けしております。たまにパタヤやホアヒンなど、地方の記事も。特にバンコクの記事では、都心から少し離れたローカルエリアの穴場スポッ…
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