写真:櫻井 れき
地図を見る西武池袋線・椎名町駅、東長崎駅から15分ほど、または都営大江戸線・南長崎駅から10分ほど歩いたところに、トキワ荘で暮らしたマンガ家たちゆかりの地である「トキワ荘通り」があります。この通り沿いにあるのが、トキワ荘住人が愛してやまなかったラーメン店「松葉」です。
藤子Aの作品である『まんが道』には、松葉のエピソードがしばしば出てきます。
手塚(※)治虫をたよって上京したばかりの藤子・F・不二雄と藤子不二雄Aが、トキワ荘の先輩である寺田ヒロオにおごってもらった初めて食べる東京のラーメン。彼らはこのラーメンを一口食べたとたん「ンマ〜イ!」と感激の声をもらすのです。
黄色い看板と屋根に赤文字で店名が記された目立つ外観である松葉の軒先には、そんな藤子たちのエピソードが描写されているページが貼られています。
また冒頭でもふれましたが、「ラーメン大好き小池さん」のモデルとなったアニメーション作家の鈴木伸一氏が食べているラーメンのモデルもこの店のラーメンなのではないか?と言われています。
写真:櫻井 れき
地図を見る店内に入るとまず目に付くのが、壁いっぱいに貼られたマンガ家をはじめとする有名人のサインの数々。中には藤子Aのサインもあり、松葉がどれほどたくさんの人に愛されているのかがうかがい知れます。
座席はカウンター2席、4人掛けが2つと真ん中に6人掛けのテーブル席、それに小上がり席が2つ。とても60年以上の歴史を重ねたとは思えないほど明るく清潔感のある店内です。そして壁にはラーメンをはじめとしたさまざまなメニューが並び、いわゆるスタンダードなラーメン店といった感じです。
メニューの中には「トキワ荘ラーメンライス」という目玉メニューもあるなど、トキワ荘ファンの心をくすぐります。
写真:櫻井 れき
地図を見るトキワ荘の住人たちが松葉に通っていた1950年代、当時のどんぶりやお皿はこのようなものでした。典型的なラーメン店の器という感じで、よく見ると「小池さん」がいつも食べているラーメンのどんぶりに似ているような似ていないような…?
藤子Aの作品内にも、よくこちらで出前を取っていたエピソードが出てきます。しめきりに追われ部屋にこもりっきりだったマンガ家たちの息抜きのひとつが、この松葉のラーメンだったのかもしれません。
こちらは、トキワ荘通りにある「トキワ荘通りお休み処」の展示スペースで見ることができます。
写真:櫻井 れき
地図を見るこれが藤子たち伝説のマンガ家を「ンマ〜イ!」と唸らせたラーメンです!
シンプルな醤油味の東京ラーメンで、具にはチャーシュー、わかめ、メンマ、ゆで卵、きざみネギが乗っています。
一口すすると…うん!「ンマ〜イ!」。
シンプルなだけに何だかとてもノスタルジックな気持ちになります。また、これぞ「THE・ラーメン!」という、いい意味での"普通のラーメン"です。
当時のラーメン1杯の値段は45円。現在でいうと450円くらいの価格で、お手頃な価格のお店だったことがわかります。そしてこのラーメンも500円と当時とあまり変わらない価格設定で、今でもファンのみならず近所の人たちにもずっと愛されているお店なのです。
写真:櫻井 れき
地図を見る店内を見回していると、「チューダーあります!」となんとも不思議な言葉の書かれたメニューが目にとまります。
ここで「チューダー」についてご説明しましょう。
「チューダー」とは、トキワ荘の兄貴分的存在であった「テラさん」こと寺田ヒロオが考案した、焼酎をサイダーで割った飲み物です。これがトキワ荘の住人達にたいそううけ、何かお祝い事などがあるたびにテラさんの部屋でチューダー・パーティーが開かれました。この「チューダー」についてのエピソードも藤子Aの『まんが道』に描かれています。
サイダーの懐かしい味に酔いしれたい方、ぜひ一度おためしを!
これが藤子・F・不二雄、藤子不二雄Aや小池さんたちを「ンマ〜イ!」と唸らせたラーメンかぁ…。松葉のシンプルな東京ラーメンは、まるでわが家に帰って来たような、人をほっとさせる不思議な魅力があります。
店は現在おかみさんが一人で切り盛りしているため注文から多少時間はかかりますが、店内をぐるりと見回したり、訪れたファンたちのメッセージノートを見ている間にあっというまにラーメンが到着しますよ。
チューダーを一杯飲みながら郷愁のラーメンをすすっていると、今にも扉からトキワ荘の住人たちが入って来そう…。今なおトキワ荘住人たちの面影を残すラーメン店「松葉」のご紹介でした。
※文中の"塚"は旧漢字
※文中の"A"は○の中にA
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(2023/12/7更新)
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