旧会館の焼失を経て、大正13年に完成した現会館の設計は、大阪ガスビルの設計で有名な安井武雄氏が手がけました。建物は南欧風ですが、正面には、イスラム風のアーチの間にトーテムポール風の石柱が並び、西側バルコニー上には獅子が鎮座しているなど、様々な要素が混在しています。これらは『自由様式』といい、安井氏の建築の特徴として知られています。
年季の入った素焼きタイルに覆われた重厚な大阪倶楽部の会館は、無機質なビジネスビル群の中で、そこだけ別世界のような異彩を放っています。驚いて足を止める通行人も多数。
店舗が入っている芝川ビルや、現役で稼働中の中之島図書館など、近隣のレトロ建築には入れるものが多いのですが、大阪倶楽部は、2ヶ月に1回の公開見学会(予約制・人数制限あり)の時以外は入ることができません。レトロ建築巡りをする際には、ぜひタイミングを合わせて参加したいプログラムです。
大阪倶楽部は、大阪の財界を代表する面々が集う大阪初の社交クラブとして設立されました。2012年に創立100周年を迎え、今も千人を超える会員がこの建物で交流を深めています。そのため、置いてある物も風格ただよう豪華な一流品がずらり!
入り口を入ってすぐの、泉盤の邪鬼の瞳には翡翠がはめられ、市松模様の床は大理石でできています。食堂には、小磯良平の絵画が飾られ、社交クラブのステータス、ビリヤード場には、当時珍しかったイギリス製のビリヤード台が。その一つ一つに、倶楽部の歴史にまつわるストーリーが宿っており、案内されるスタッフの方が背景も含め、丁寧に解説をしてくださいます。大阪の近代の歴史上の有名人物も数多く関わっており、大阪倶楽部の歴史的な重要性が伝わってきます。
内装で最も特徴的なのが、各部屋ごとにデザインが異なる巨大な梁とそれを支えるハンチ。インド風の立体的な装飾がついたものや、西洋風の花のレリーフなど、同じ建物の中とは思えないほど多彩でインパクト大です。
会館の建設中の大正12年、関東大震災が発生。その教訓から、防災のためにとこのハンチが設計に加えられたのだそうです。こんなところにも、近代の歴史が関係しているんですね。
2階と3階をつなぐ階段の踊り場に、やわらかな光を投げかけるステンドグラス。第二次世界大戦時には、鉛とハンダを鉄砲玉の材料にするため、多くのステンドグラスが徴収されてしまい、こうして残っていることは、とても稀なんだとか。建物の外からは影になって気づきにくい場所にあり、こんなにも鮮やかなステンドグラスがあったことに驚かされます。中に入れた人が見ることができる特別な風景の1つでしょう。
戦時と戦後、海軍の徴用とGHQの接収を経て荒廃し、一時は戦前の面影がなくなってしまったそうですが、倶楽部会員の方々の懸命な復興努力で、今日は華麗な姿を取り戻しています。雰囲気たっぷりなので、ドラマの撮影などにもよく利用されるそうです。
単なる洋風建築の枠を超えた外観もさることながら、内部も意匠と風格たっぷりな大阪倶楽部。解説が加わることで、大事なポイントをしっかり見ることができ、大阪の歴史についても理解が深まります。ぜひ見学会で、『繁華街と食い倒れ』とは全く異なる、大阪の意外な一面に触れてみてください!
※見学会は2ヶ月に1回開催されます。大阪倶楽部公式サイトで定期的に募集していますので、そちらからご応募ください。
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