写真:和山 光一
地図を見る真田家十万石の城下町・信州松代の奥座敷尼飾山の麓・加賀井地区に加賀井温泉「一陽館」があります。 開湯は800年前に遡り、鎌倉時代から伝わる古い温泉で、源頼朝が善光寺参りに来た時に入ったとか、日蓮上人が佐渡へ島流しの前後2回、この湯に浴されたと云われています。明和3年(1766)、当時の加賀井村の村民が松代藩主に提出した「温湯開設之儀願書」という文献が残されていて、その歴史を今に伝えています。
湯治場の風情が残る建物は、かつては旅館も営んでいましたが、今は日帰り入浴のみで信州秘湯の会会員です。まずは入浴料400円を受け付けではらいます。休憩室利用だと750円になり別の建物の入口から入り、休憩室からは浴室に通じています。昭和初期に建てられた風格漂う建物には、男女別の内湯と混浴の露天風呂の三つの湯船があります。露天風呂には浴槽が二つあり、それぞれ異なる源泉から引いたお湯が掛け流されています。
写真:和山 光一
地図を見る湯屋のわきにある源泉の升から毎分400リットルもの新鮮な湯が湧き出るのが見えます。地表に出たばかりの41度の源泉は、内湯の男湯と女湯に向けて勢いよく流れていきます。源泉は透明で、時間が経つと炭酸カルシウムが析出し、この結晶に鉄分が沈着して赤茶色に変わります。別の敷地内の井戸からは、松代地震で復活したガスをたっぷり含んだ源泉が毎分200リットル湧出していて露天風呂に流れ込んでいます。なめると塩辛く、わずかに苦みが混じります。泉質は含鉄ーナトリウム・カルシウムー塩化物泉で、源泉1Kgに12g以上の成分を含み、その高濃度は実に入浴剤を入れた時の85倍の濃度に相当するといいます。効能も推して知るべしで、リウマチ、アトピー、神経痛、婦人病などに効果があります。湯はぬるめなので、数十分単位でゆっくり浸かることをおすすめです。
写真:和山 光一
地図を見る男女別の内湯がある木造の湯屋に入ると、浴槽と脱衣場が面しています。長さ7M、幅2Mある細長い湯船の縁には成分が染み付いていて、岩をくりぬいたような不思議な造形になっており、湯治気分はいやおうなく高まってきます。左から右にふんだんに湯が掛け流されていて、こちらの湯は緑がかった薄茶色で濁りは強いです。
床も一面の石灰華で赤茶色になっており、プラスチックの風呂桶ケロリンも石灰華まみれで材質が分からなくなっています。実は浴槽も本来は木の浴槽だったとのことで大変な変わりようなのです。
浴槽に身を沈めると源泉をそのまま流し込んだ湯が適温よりも丁度よい温さです。
写真:和山 光一
地図を見る露天風呂へは、内湯から裸で建物の外を回って行くしか道がないので要注意です。内湯の入口にサンダルが備え付けてあるので履いて外にでます。女性はバスタオルや水着、入浴着など着用可ですがちょっと勇気がいります。
湯屋の外に出ると、送湯用パイプから湯が漏れている所の下に、茶色の湯の花が鍾乳石のように盛り上がっています。これを見ながら少しぬるい別の源泉を使う混浴露天風呂にいくと、内湯に劣らず20人は入れる大きさで、温度の違う湯船が二つ設けられています。コロイド状になった温泉成分で湯が茶褐色に見えます。周囲は簡単な生垣がある程度です。
露天風呂の方が温度は低めなので、長い間浸かっていられますが成分が濃いため、せっけんは泡立たず、白地のタオルは、湯船から上がる時、薄茶色に変色しています。
露天風呂には湯口が二つあり、飲泉もできるのでぜひ試してみてください。胃腸の病気全般によく効くといわれますが、鉄、塩、苦み、炭酸などの味が混じり合ったかなり癖の強い味なので注意が必要です。
長野市中心街から約10Km、真田十万石の城下町・松代の田園地帯で、これほど成分の濃い温泉が湧いているのに驚きます。初めて訪れると、その湯の色と味に驚かない人はいないと言われるほど、個性的な温泉ですが、その効能の高さも評判が高いのです。
映画「殿、利息でござる!」で湯治場堀りに夢中な親子が温泉に浸かるシーンがここの露天風呂で撮影されていました。
歴史の宝庫・真田藩の城下町の歴史に触れるだけでなく、是非真田藩主も入浴したという温泉にも浸かって信州松代を堪能してみてください。ファミリーや綺麗な温泉施設好きの方には不向きとは思いますが素晴らしい温泉です。
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(2024/9/16更新)
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