写真:吉田 彩緒莉
地図を見る東京・アメ横は戦後の闇市から発展した巨大市場。業者がまとめ買いに来るような問屋から、マニア垂涎のアーミーグッズまで、アメ横ならではの店が並びます。
買い物に夢中になって歩いていると、当然お腹がすきますが、アメ横の道の並びには、驚くほど食べ物屋台が並んでいるので安心。
中華、ケバブ、海鮮丼…いずれも戦後からそうだったかのように、屋台そのものの佇まいです。そして、舌の肥えた地元の人や観光客の厳しい目にさらされつつ、お客さん争奪戦を繰り広げているせいか、屋台のような店であれ、味のレベルが高くもあります。
写真:吉田 彩緒莉
地図を見る実は、アメ横には名物居酒屋なるものがいくつか存在します。朝から激安価格で飲めるので、明るいうちからへべれけの人も珍しくありません。そんな中でも昭和25年からアメ横にある老舗の居酒屋「もつ焼 大統領」は、安さ、美味しさ、集まってくる人のユニークさで、観光名所的存在。アメ横に来たならいつかは「もつ焼 大統領」の洗礼を受けるべきだというマニアも存在します。
煤けた店先には、ビールケースを積み上げた椅子とテーブル。平日だというのに店の奥にも外にも、座りきれないほどの人たちが、昼からジョッキをあおっています!初めての人はちょっと入店に抵抗しそうですが、ここは勇気を出して入ってください。
写真:吉田 彩緒莉
地図を見る路肩の席か、店内のカウンター席にするかと席を選択させてくれますが、なぜか皆、路肩の席に腰かけます。こんな席でゆっくり飲めるのかな?と誰もが疑ってしまう雰囲気ですが意外や意外。座ると妙に落ち着きます。皆、仲良さそうに赤ら顔でわいわい騒いでいるので、友達同士かと思いきや、なんと初めてここで知り合った人同士が意気投合して盛り上がっているのです。
写真:吉田 彩緒莉
地図を見る「もつ焼 大統領」はホルモン串焼きや、昔ながらの馬肉のモツ煮を出す店なので、内臓嫌いな人にはあまり向きません。串焼き屋のレベルはレバーで決まる、と言いますが、この店のレバーは臭みが無く、とろりと口の中で溶けていくような食感。失礼ながらこんな掘立小屋のような店なのに、とても上品なレバーの串焼きです。これはホルモンを丁寧に下ごしらえしている証拠。これなら内臓嫌いの貴方も「もつ焼 大統領」で食べた串焼きがきっかけで好きになる可能性があります!チャレンジすべきではないでしょうか?
写真:吉田 彩緒莉
地図を見る例え一人でビールと串焼きで飲んでいても、しばらくすると寂しくないことに気が付くはずです。なぜなら、隣り合ったお客さんだけではなく、みんなが普通に会話の輪の中に入れてくれたり、話を振ってくるのです。大部分の人が、いつの間にか大笑いしながらお酒を酌み交わすことになるでしょう。
店員さんは少々無愛想に感じますが、毎日のようにやって来るアル中気味のお客さんの財布管理をしてあげたり、マナー違反のお客さんを、まるで親のように叱ったりと、とてもアットホーム。客層は下町のおじちゃん、アメ横の業者さん、上野界隈に工事の仕事で短期で働く人、近所の風俗関係に勤めているお姉さん、近所のアル中気味のおばあちゃんなどなど…客層もカオスすぎ!
時間が経つと自分の隣で知らない人が一人で酔いつぶれるのも、だんだん普通に見えてくることでしょう。そしてこれがまだ太陽がさんさんと輝く時間であることにも慣れていくはず。こうして誰もが「大統領ファミリー」になっていくのです。
「もつ焼 大統領」には不思議な法則があります。この店にいる時は皆とても仲良くなれますが、お互い連絡先を聞き合ったりする、ということはありません。「またこの店で会いましょう」がサヨナラの挨拶なのです。中にはこの店で仲良くなった人が来ているかな?と思って来た、という人もいます。偶然再会できたらラッキー。またお酒を酌み交わし、ひと時を楽しんで別れていくのです。
お互い必要以上のことは聞かない、この店でまた会えればいい、という暗黙のルールがそうさせるのでしょう。闇市としての側面があったアメ横には、昔は人には言えない事情でやって来る人も多くいました。そんな人たちが立ち寄ってきた場所だからこそある、昔の名残りなのかもしれません。
皆この店で偶然会って、「またこの店で会いましょう」と笑顔でかわして去っていく、潔くも不思議な空間なのです。
戦後の名残が色濃く残る店先で、見知らぬ者同士、わずかな時間を共有すれば、あっという間にあなたも「大統領ファミリー」。再びアメ横を訪れたら、その時飲んだ人の面影を探して、ビールケースで作った椅子に腰かけてしまう事でしょう。
ちなみに、一つ注意が。
すぐ近くにとてもきれいな「大統領」という支店がありますが、そちらは全く雰囲気が違います!知らない人同士がわいわい話をする雰囲気ではないので、店を間違えないでくださいね!
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この記事を書いたナビゲーター
吉田 彩緒莉
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