写真:Hiroko Oji
地図を見る南イタリアの港町ナポリは、ローマとミラノに次ぐイタリア第3の大都市です。その旧市街は世界遺産に指定され、素晴らしい芸術作品の宝庫となる教会が点在しています。治安面で不安視されていたナポリですが、近年かなり改善されてきており、人情味溢れる人々がエネルギッシュで、町歩きが楽しくさえなってきます。先ずは、モッロ・ベヴェレッロ港のフェリー乗り場前にデンと聳えるヌオーヴォ城へ行ってみましょう。
ヌオーヴォ城は、カルロ1世によって1284年、アンジュー家の新しい城として建設されましたが、災害によって破壊され、残ったのは内部のパラティーノ礼拝堂のみ。その後、1443年に、アラゴン家のアルフォンソ1世によってルネッサンス建築で再建され、18世紀に完成したのが、現在残っている姿です。5本の円筒型の塔が美しく、塔の間の白い門「アルフォンソの凱旋門」は見事なレリーフで飾られていて、入口となっています。
内部は、1300〜1400年代のフレスコ画と彫像があるパラティーノ礼拝堂と共に市立美術館となっていて、展示物はもちろんのこと、建物内から見る町並みや港、丘の上の修道院などの眺めも素晴らしく、見応えがあります。
写真:Hiroko Oji
地図を見る半円形を描く柱廊が取り囲むプレビシート広場に面して、ピシッと真っすぐ横長に続くファサードの見事な建物が王宮です。
17世紀にスペイン王を迎えるために建設が始まったのですが、その王を迎えることなく、ブルボン家の王宮として改築・拡張工事が行われました。3層に分かれた横長の正面の前に置かれているのは、ナポリ統一を果たした王の立像。内部は王宮歴史的住居博物館として公開されています。
中庭から建物に入ると、先ず迎えてくれるのは、大理石で豪華に装飾された大階段の間。この階段を上った2階から、見学のコースが始まります。2階には、フェルディナンド4世の婚礼を記念して造られた宮廷劇場があります。金色で覆われた壁面に並ぶ女神の像は、彫像のように見える紙の張り子で、天井のフレスコ画も含めて豪華な装飾に溢れています。続く外交の間や玉座の間、王の書斎など、どれも王家の人々の肖像画や金色の彫像、絵画で飾られ豪奢そのもの。置かれている調度品も素晴らしいものばかりです。
その他、金箔と貴石で飾られた大祭壇のある王の礼拝堂、エルコラーノ遺跡からの発掘品が並ぶヴィットリオ・エマヌエーレ3世の図書館なども必見です。
写真:Hiroko Oji
地図を見る王宮の北側、プレビシート広場からも通りの奥に入り口が見えているのは、ウンベルト1世のガッレリア。ミラノの有名なガッレリアを少しだけ小さくしたような感じですが、引けをとらないほどの美しさ!アーケードの高さは58メートルあり、1887年〜1890年にかけて建築されたものです。鉄とガラスで構成された美しい天井からは、自然の光が差し込み、とても明るく開放的。アーチのある窓が並ぶ建物は重厚で、統一感のある美しさ。中央の床には、大理石でできた12星座の素敵な装飾が施されています。上ばかり見上げていないで、足元にも注目してくださいね。
写真:Hiroko Oji
地図を見る町中の狭い通りに建ち並ぶ建物の合間からも、見上げると丘の上に見えているのは国立サン・マルティーノ美術館。かつてのカルトジオ会修道院で、現在は美術館として公開されています。
フニコラーレのチェントラーレ線に乗って、丘の上に上ってみましょう。ナポリを見下ろすヴォメロの丘の上、サンテルモ城の隣に建つ、かつての修道院で、17世紀のナポリ・バロック様式の最高傑作と言われている建物です。絵画・彫刻、陶器やガラス製品はもちろんのこと、プレゼーピオ(※参照)のコレクションも見所の一つ。美しすぎるアンティークなものから卵の殻の中につくられた緻密で精巧なものまで、様々なプレゼーピオの世界に引き込まれてしまいます。
また中庭を取り囲む大回廊も美しい空間で、大理石でできた頭蓋骨の並ぶ欄干や、石畳の中央にある大理石造りの古い井戸なども見ることができます。また教会に入ると「キリスト降架」、「預言者達」、「モーゼとエリア」などの素晴らしい絵画が見られ、天井画も豪華絢爛で見応えがあります。
※プレゼーピオとは、ミニチュアの人形でキリストの降誕の様子を再現したもの。クリスマスの時期になると、主に教会や広場などに飾られますが、各家庭用にも、町の店先にその部品となる人形や動物の形をしたものが並びます。
写真:Hiroko Oji
地図を見るサン・マルティーノ修道院には、海に向かって開けたテラスがあります。ここから一望する風景は格別!左手前方にアマルフィ海岸、続いてカプリ島、前方にはイスキア島やプロチーダ島と、浮かぶ島々を含めて素晴らしい地中海が見渡せます。また、修道院前の展望所からは、ナポリの市街や湾の奥に控えるヴェスヴィオ火山も見えており、この眺めを見るだけでも、ヴォメロの丘に上ってこられることをお薦めします。
この地区には、ここに挙げたほかにも見所はどっさり!
半円形の柱廊が取り巻く、中央にフェルディナンド1世の騎馬像があるプレビシート広場、その広場に面して建つサン・フランチェスコ・ディ・パオラ聖堂、長い埠頭先端の小島に建つ卵城、イタリア3大歌劇場のひとつであるサン・カルロ劇場、五つ星クラスのホテルが建ち並ぶ海岸通りのサンタ・ルチア、丘の頂上にある星型の要塞サン・テルモ城・・・など。
でも、何といっても、スペイン統治下時代に建設された住宅が密集する、頭上を洗濯物がはためく狭い通りそのものが、このナポリの魅力かもしれません。ここを歩いていると、陽気なエネルギッシュな人々が生活している真っただ中に飛び込めます。ぜひ、お店をのぞき込みながら、庶民的な雰囲気を楽しんでくださいね。
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(2024/12/6更新)
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