広島県尾道市の名刹「西國寺」で見る文化人たちのアートな語らい

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広島県尾道市の名刹「西國寺」で見る文化人たちのアートな語らい

広島県尾道市の名刹「西國寺」で見る文化人たちのアートな語らい

更新日:2016/06/16 18:14

村井 マヤのプロフィール写真 村井 マヤ 中国・九州文化的街並探検家

広島県尾道市は、日本の心の縮図ともいわれる中世以来栄えた港町です。「箱庭」とも表現される尾道で、愛宕山の山腹に大伽藍を展開させる尾道市最大の古刹である西國寺。その西國寺には多くの建造物があり、その中でも一般の方の拝観が可能な「持仏堂」は、素晴らしい寺宝の宝庫。襖絵や欄間、扁額、至る所にさりげなく展示されており、文化人たちが表現したものが身近に感じられ、ゆっくりと拝観できるのが魅力ですよ!

行基ゆかり古刹・西國寺で文化財を垣間見られる「持仏堂」へ

行基ゆかり古刹・西國寺で文化財を垣間見られる「持仏堂」へ

写真:村井 マヤ

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西國寺は、729年から749年のいわゆる天平年間に行基によって開基されたと伝わる名古刹です。平安時代には官寺としても、位置づけられました。その権威は中世にも引き継がれて、政治的にも大きな影響力をもちました。その西國寺のご本尊は、行基開基の時代のものではなく(開基当時のご本尊は火災で焼失)、讃岐善通寺七仏薬師の一体と伝えられるもので、西國寺金堂に安置されている薬師如来です。

西國寺は、尾道の東西に長い寺院巡りの少し東よりに位置します。観光客の方が、寺巡り(一般に七佛めぐり)をされるルートはさまざまですが、「尾道七佛めぐり」の寺院を効率よく巡るなら、一番東の浄土寺・海龍寺から尾道駅北側(山手)の持光寺を最後に訪問するのがベストです。
もちろん、すべて巡らず、目的のお寺だけ回っても十分楽しめるのが尾道の魅力。

そんな中で、今回特におススメするが、「西国一の寺」と称された西國寺の持仏堂拝観です。

持仏堂への行程は、大わらぞうりで有名な西國寺の仁王門を抜けて、階段を上り金堂のある下段伽藍基壇からさらに階段で上段伽藍基壇へと向かいます。
こちらには、「持仏堂」のほかに大師堂や不動堂、本坊などの建物があります。お目当ての「持仏堂」拝観は予約しなくてもご覧いただけます。ただし、行事などで拝観できない場合もありますので、念のため事前に連絡されると良いでしょう。詳細は、西國寺HPの「拝観」のページをご覧ください。
写真は、持仏堂内陣の様子。持仏堂内陣があり、ご本尊は「大日如来坐像」で、南北朝時代の木造の如来像です。こちらもお参りできますので、ぜひゆっくりご覧ください。持仏堂内陣の襖絵は、小林和作の筆によるもの。

洋画家小林和作と書家・清水比庵の合作の襖絵も残る西國寺持仏堂

洋画家小林和作と書家・清水比庵の合作の襖絵も残る西國寺持仏堂

写真:村井 マヤ

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写真が、尾道を終の棲家とした日本を代表する洋画家・小林和作の絵と歌人、書家、画家、政治家でもあった清水比庵の書の合作。
小林和作はこのほかにも、先にあげた持仏堂内陣の襖絵やその前室の部屋の襖の花も描いています。

襖絵を描いた小林和作ですが、尾道ゆかりの画家として森谷南人子と並んで有名な人物です。明治21(1888)年に山口県に生まれ、若いころは東京で活躍していましたが、昭和9(1934)年より尾道で暮らし始めました。最初は2、3年の予定が尾道が終焉の地となった画家でした。豪快で大胆な色使い、特に赤色が特徴の風景画を多く残しています。

さて写真は、明治16(1883)年岡山県に生まれた清水比庵が、友人である小林和作の金泥で波をさっさと描いた上に緑青絵具で歌をかいたもの。
「朝あけし、吉備の、海路を、秋風に、こぎゆく、舟の、ゆきあへる、見ゆ 昭和三十七年秋 比庵」と襖には書かれています。
斬新な色や、豪快な文字。小林和作は、比庵の書を「豪快にして、壮気溢るるばかり・・」と評しました。
偉大な芸術家の友情の証である襖を、西國寺持仏堂でぜひご覧くださいね。

前衛書道家が大胆にしたためた文字の襖も

前衛書道家が大胆にしたためた文字の襖も

写真:村井 マヤ

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見事な欄間を要する持仏堂側室の前室の襖。青くて大きな文字、しかも変幻自在な筆さばきで見るものを圧倒します。

このダイナミックな書をしたためたのは、前衛書道の担い手である上田桑鳩(うえだ そうきゅう:1899-1977)です。彼は、小林和作らの洋画家と交流し、陶芸や絵画、舞台芸術などのあらゆる芸術分野で意欲的に活動しました。

この書は、寒山の詩で「碧澗泉水清、寒山月華白、默知神自知、觀空境逾寂」と書かれています。実際この襖を目の前にすると、しばらくじっと眺めていたくなります。

持仏堂拝観では、この部屋の奥にある鎌倉時代前期の木造「釈迦如来立像」もご覧になれます。像高は78cmのこの立像は、重要文化財に指定され、美しい調和のとれた衣文に安阿弥(快慶の号)洋の特徴がみられることより、快慶作と伝わっています。近くまで行ってぜひその姿を静かに眺め、心に刻んで欲しいものです。

お抹茶をいただける特別拝観も魅力

お抹茶をいただける特別拝観も魅力

写真:村井 マヤ

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持仏拝観は、ただ拝観だけをするものと、抹茶付きの拝観もあります。一通り拝観を済ませた後は、ゆっくりと小林和作の襖絵と坪庭をご覧になりながら、抹茶を召し上がってくださいね。

抹茶と一緒に出される煎餅は、西國寺で購入することができるわらぞうり煎餅ですよ。召し上がって美味しかったらお土産にどうぞ。

こちらに拝観に来られる方は、清水比庵や小林和作のファンの方も多いとのこと。ショーケース越しではなく、すぐそばで下手すると普通に、開け閉めもできる時代物の襖ですので、触ってしまうことも・・。でもむやみに触ったり、乱暴に扱うのはやめましょう。
有料ですが、素晴らしい芸術作品を手の届く位置で見せていただけるのは、貴重なこと。そこは信頼関係で成り立っていることを忘れないでくださいね。

芸術作品以外にも素晴らしい歴史的・文学的資料も多数

芸術作品以外にも素晴らしい歴史的・文学的資料も多数

写真:村井 マヤ

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西國寺には、多くの聖教や資料が所蔵されています。西國寺の方でさえすべてを把握できないほどの膨大なもの。広島県立博物館、徳島文理大学は共同研究を行い、「尾道西國寺の寺宝展」の開催も手がけました。
とくに徳島文理大学文学部文化財学科の教授や助教授、学生の方々は、長年熱心に西國寺に通われ研究に勤しみ、今なおその研究は続けられています。その成果は2011年に尾道市西國寺で開催された「西國寺・密教美術の精華」という西國寺展で、一つの区切りをつけられましたが、今後の研究成果も楽しみです。

拝観では、徳島文理大学文化財学科の西國寺展の展示を少しだけ見ることができますよ。
持仏堂拝観でご覧になりたい場合は、あらかじめ納経所でお聞きになってくださいね。
写真は、その一例です。西國寺には仏教に関する書物だけではなくあらゆる分野の書物が所蔵されており、国文学史上極めて貴重な『新古今和歌集』の写しなどもあります。展示物に関しましては、常時展示というわけではないかも知れませんので、行かれる前に確認してくださいね。

広大で歴史ある古刹・真言宗醍醐派の大本山西國寺へ

西國寺に行くには、JR尾道駅前バス停「1番乗り場」の「本線東行」に乗って、「西国寺下」で下車。バス停から山手方面へ徒歩5分ほどで西國寺の山門である仁王門に到着します。仁王門には大きなわらぞうりが掲げてありますが、これは、健脚祈願として奉納されたわらぞうり。西國寺といえば大わらぞうりというほど有名なものです。

今は、この仁王門からが西國寺という認識ですが、以前はバス停からしばらく歩いた辺り、ちょうど山陽本線の線路下を抜けたぐらいから寺領だったとのこと。かなりの規模のお寺だったことが分かります。

西國寺は、春は桜、初夏には紫陽花、秋には紅葉・・四季折々の風景も楽しめます。持仏堂拝観だけではなく、そうした美しい景色も一緒に西國寺を散策してくださいね。

掲載内容は執筆時点のものです。 2016/05/26 訪問

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