港町全体がテーマパーク?気仙沼「しごと場・あそび場ちょいのぞき」

港町全体がテーマパーク?気仙沼「しごと場・あそび場ちょいのぞき」

更新日:2016/08/29 15:31

風祭 哲哉のプロフィール写真 風祭 哲哉 B級スポットライター、物語ツーリズムライター、青春18きっぷ伝道師
美しい三陸のリアス式海岸の地形に恵まれた天然の良港、宮城県気仙沼市。ここには港町ならではの知られざるしごと場やあそび場がたくさん!
氷屋さんに函(はこ)屋さん、造船所に漁具屋さんなど、この気仙沼には普段は入ることのできない港町の職場に特別に潜入できるツアーがあるのです。名付けて「しごと場・あそび場ちょいのぞき」。
今回は、そんな気仙沼オリジナルの、遊んで学んで楽しめる観光プログラムを紹介します。

海や港に関わるしごと場・あそび場のプログラムが10種類以上

海や港に関わるしごと場・あそび場のプログラムが10種類以上

提供元:宮城県観光課

http://digi-photo.pref.miyagi.jp/index.php

「しごと場・あそび場ちょいのぞき」は文字通り気仙沼市内にあるしごと場やあそび場をちょっとだけのぞいて体験できるミニツアー。

気仙沼は、世界三大漁場と言われる「三陸沖」での沖合漁業や国際的な遠洋漁業の基地として有名な気仙沼漁港を中心に発展してきた町であるため、市内の産業は海や港に関わるものが中心となっています。そのため必然的に、この「しごと場・あそび場ちょいのぞき」のプログラムも海や港にかかわるものがほとんど。
「造船所探検」「漁具屋潜入」「寿司握り体験」「メカジキ解体ショー&BBQ」など、気仙沼ならではのしごと場・あそび場のプログラムがなんと10種類以上も用意されています。

今回はその中から代表的な2つのプログラム「函(ハコ)屋探検」と「氷屋探検」を紹介します。

函屋倉庫は、まるでカラフルな摩天楼のよう?

函屋倉庫は、まるでカラフルな摩天楼のよう?

写真:風祭 哲哉

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函(ハコ)屋さんの「ハコ」とは、魚市場で魚の出荷に使う発泡スチロールの「魚箱(ぎょばこ)」のこと。函屋探検ツアーでは、この箱が8メートルもの高さまで何本も積み上げられている倉庫に潜入します。

まず入ってびっくりするのは、その箱が並ぶ姿の美しいこと。倉庫なんて聞くと、うす暗くて狭い場所なのかな、と思ってしまうのですが、なんと美しいのでしょう、この積み上がったハコたち。まるでカラフルな高層ビル群がそそり立っているみたいじゃないですか!
これは箱のサイズなどを区別しやすくするようにビニールの色を変えて包んでいるため、こんなカラフルな装いになるのだそうです。

まずはここで気仙沼における函屋さんの役割や仕事の説明を聞きながら、港に水揚げされた魚が出荷され、食卓に届くまで過程を学び、そのあとはいよいよ体験コーナーです。

職人技のハコづかい、おそるべし

職人技のハコづかい、おそるべし

写真:風祭 哲哉

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倉庫の天井近くまで何十段もの高さに積み上げられた箱。体験コーナーでは、まず人力だけでこれを上げ下ろしする職人技に迫ります。毎日箱と格闘しているからこそ身についた職人技、やはりおそるべしなのです。

写真はハコ屋のまだ若き部長さん。おもむろに箱を15段分ひょいと持ち上げ、バランスよく広い場所まで運んだかと思うと、まるで5段ずつだるま落としをしたかのようにあっという間に3列に仕分けしてしまいます。それもそのはず、函屋さんの仕事はスピードが命。水揚げされたばかりの魚の鮮度が落ちないよう、漁港から発注があったら5分後には箱をトラックに乗せて出発しなければならないのです。

そんなスピード感あるダイナミックな仕事の話しが聞けるのも、この「ちょいのぞき」ならでは。このあとは参加者も、その箱持ちにチャレンジしたり、函屋クイズ、箱持ち競争などのゲームを楽しむことができます。

函屋探検の所要時間は約1時間、プログラム代金は大人1,000円、高校生以下は500円、未就学児は無料。
とっても手軽でリーズナブルなのもいいですね。

氷屋探検で、マイナス10度の貯氷室へ

氷屋探検で、マイナス10度の貯氷室へ

写真:風祭 哲哉

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魚市場から出荷される魚の鮮度を保つのに欠かせないのが「氷」。氷屋探検ツアーでは、普段は見ることができない巨大な氷を作る工程を見学します。

まず最初に製氷室の見学。1本135kgという巨大な氷を作るために水を入れた大きなタンクを床下で冷やします。丸2日間冷やし続けて完成した氷は「限りなく透明に近いブルー」といった感じの色で、これが実に美しいのです。

できあがった氷はベルトコンベアーで運ばれたあと、マイナス10度の貯氷室に運び込まれるのですが、ツアー参加者は特別にその中にも入ることができるのです。

ここでの見どころは、貯氷室で氷を積み下ろしする職人技。貯氷室に隙間なくびっしりとうず高く積み上げられた氷はベテランの職人さんがフォークリフトを使って上げ下ろししているのですが、特にすごいのは氷の山から狙った氷を取り出す技術。氷と氷の間にあるわずかな隙間にフォークリフトのアームを差し込むため、少しでもずれると氷が割れてしまうのですが、職人は狙った獲物を一発で仕留めるように、バーン!と勢いよくフォークリフトのアームを差し込み、できあがった時と同じように透明で美しいブルーの氷のまま取り出してしまうのです。

できたての氷で、かき氷も楽しめる!

できたての氷で、かき氷も楽しめる!

写真:風祭 哲哉

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氷についてひととおりの見学が終わると、このプログラムも体験コーナーとなります。
まずはできた氷をのこぎりで切る氷切り体験。今は氷も機械で裁断するのですが、このツアーでは昔ながらの職人のように、のこぎりで氷切りにチャレンジすることができます。なかなかまっすぐに切るのは難しいのですが、うまく真ん中くらいまで歯を入れることができると、やがて氷は自然に二つに割れていきます。

そして最後においしい体験も。氷屋さんにあるレトロなかき氷機でできたかき氷がふるまわれ、用意された何種類ものシロップをかけてみんなで試食。

この氷屋探検も所要時間は約1時間、プログラム代金は大人1,000円、高校生以下は500円、未就学児は無料で参加できるのです。

気仙沼「しごと場・あそび場ちょいのぞき」で港町のウラ側に潜入!

あの東日本大震災での津波による大きな被害を受けてもなお、「海と生きる」というメッセージとともに海の可能性を信じて再起を果たしてきた気仙沼。基幹産業が大きな被害を受けた気仙沼では、業種の垣根を超えて人々が手を取り合って地域経済の復興を進めています。

この「しごと場・あそび場ちょいのぞき」ももちろんそのひとつ。事業者さんにとっては、本業以外のこうした見学ツアーに協力しても手間を考えれば、収益になるわけではないのですが、それでも快く協力してくれるのは、気仙沼をもっと知ってもらい、気仙沼のファンになってほしい、という思いがあるからなのでしょう。

そんな背景からでしょうか、この「しごと場・あそび場ちょいのぞき」はプロの観光施設が提供するような洗練されたツアーではありません。ピカピカに磨かれたきれいなところばかりを案内するようなツアーでもありません。けれどもこのツアーを案内してくれるすべての人々が、とてもあたたかいのです。そしてこの手作り感、ウラ側感がこのツアーの最大の魅力でもあるのです。

気仙沼「しごと場・あそび場ちょいのぞき」ツアーは毎月1回、週末を中心に開催されていますので、詳しくは下記HPでご確認の上、ぜひ一度「ちょいのぞき」に来てみてください!

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/11/15 訪問

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