覚満淵は、大沼の1部が湿原化したもので、湧水による高層湿原と、雨水による中間湿原で形成されています。高層湿原とは、「周囲から流入する水より泥炭層が高い湿原」で、低層湿原とは、「流入する水より泥炭層が低い湿原」。中間湿原とは、「低層湿原から高層湿原へ移行途中の湿原」です。
赤城山唯一の湿原で、標高1360メートルの湿原には、亜高山帯の湿原に生育する「ヌマガヤ」や、高層湿原に生育する「イボミズゴケ」や「ムラサキミズゴケ」をはじめ、「ニッコウキスゲ」や「ワレモコウ」などの湿原、高山植物の宝庫です。覚満渕の春は、篭山のアカヤシオから始まります。湖畔には、つぼみの形が、レンゲに似ていることから名付けられた「レンゲツツジ」や、葉や樹皮の煮汁を洗眼に使ったことから名付けられた「メキ」が若葉を開き始めます。
覚満淵の入り口には、赤城公園ビジターセンターがあります。赤城山頂で見られる、植物や動物、鳥などの展示館と、お土産、軽食コーナーがあり、赤城山頂のハイキングや登山の拠点になっています。
小沼は、長七郎山の火山活動によってできた火口湖で、周囲は約1キロメートル、標高1470メートルにある沼は、冬季は全面氷結します。釣りや、ボートで賑わう大沼とは異なり、手付かずの自然が残り、タケカンバやブナ、ヤマザクラ、ミズナラなどの多様な植物を見ることが出来ます。
細かな白い石に覆われ、コバルトブルーの湖面と、まだ、落葉樹が芽生える前の長七郎山とのコントラストはとても綺麗です。湖畔では、日本の野生サクラを代表するヤマザクラが咲いています。このサクラは、ソメイヨシノなどとは違い、赤茶色の若葉と淡紅色の花が同時に開きます。水辺には、アズマヒキガエルの卵が浮かんでいます。小沼にも遅い春が訪れたようですね。
小沼を創った長七郎山山頂までは約1キロメートル、湖畔からの高低差は約100メートルで別世界が広がります。山頂からは、北に、標高1685メートルの駒ヶ岳と、標高1828メートル、赤城山外輪山最高峰の黒檜山が連なり、西側の目の前には山頂に幾つかの電波塔が建てられた、地蔵岳が見えます。西南方向には、荒山と鍋を伏せたような形をした鍋割山、そして、南東方向には、伊勢崎線や本庄、深谷など、関東平野が広がり、空気が澄んでいれば遠くスカイツリーが見えることもあります。
小沼の水が粕川へ流れ出る沼尻から、赤城山登山ルートを約1キロメートルの所に「オトギノ森」があります。森の名前は、林の木々の枝がおとぎ話に出てくる風景を思わせることから名付けられたそうです。
粕川が流れる深い谷沿いの登山道を歩いていくと、足元の熊笹から「ギ、ギ」という鳴声が聞こえます。笹を掻き分けてみると成虫になったばかりの「エゾハルゼミ」が隠れています。寒冷地を好むこのセミは、関東以西では、1000メートルを超える高山に生息します。
途中の道には、むらさき色のミツバツツジの落ち花が積もり、ミズナラの新緑に、朱色のレンゲツツジとヤマツツジが点々と咲き、美しいコントラストを描いています。標高1470メートルの小沼は遅い春と早い夏が同時にやってきます。
オトギノ森は、初夏の日差しがミズナラやシラカンバの新緑が映え、木の根元は熊笹に覆われています。森の南側には、赤城山の外輪山を粕川がV字型に浸食した「銚子の伽藍」があり、そこから、前橋市や伊勢崎市の街並と秩父の山々が見えます。オトギノ森は鳥の声と、風になびく木々の葉の音と、遠くにセミの鳴声が聞こえる優しい森です。
湧水から流れ出る清らかな水が覚満淵を満たしています。湿原の北東側では、ワレモコウとススキが駒ヶ岳を背景に風に揺れています。その隣では、アサギマダラやヒヨウモンチョウが残り少ない時間を惜しむようにノアザミの蜜を吸っています。
東側では、マムシグサが緑の実を結び、白樺が風に吹かれながらも凛としています。地蔵岳がある、南西側は秋の花が咲き競っています。黄色い小さな花が可憐なアキノキリンソウや、黄緑色の丸い模様が特徴的なアケボノソウ、オヤマリンドウには、ヒヨウモンチョウやキマダラセセリが集まります。
覚満淵の周囲は約500メートルですが、それぞれに表情が変わります。柔らかな日差しと風と共に流れる雲と、多くの草原や湿原に咲く秋の花が咲き競います。赤城山頂の冬はすぐそこ、冬支度を急ぐ秋の覚満淵も見逃せません。
桜の開花予想がされる頃、標高約1,400メートルの赤城山頂はまだ冬本番。積雪のため流れ込む水がなくなった覚満渕は結氷し雪が積もっています。冬枯れたミズナラや白樺の幹の周りだけ雪がくぼんでいます。
湿生植物と高山植物の宝庫で「小尾瀬」と称される覚満渕も訪れる観光客も少なく、枯木と雪に覆われた、駒ケ岳や地蔵岳、長七郎山が360度独り占めです。
大沼も全面凍結し、赤城神社の神橋と美しいコントラストを描いています。氷上ではワカサギの穴釣りで賑わい、防寒のためのカタツムリがいくつも立っています。大沼のワカサギ釣りは9月1日〜翌年3月末までが解禁日、9月〜11月はボート釣り、1月頃〜3月頃までが氷上の穴釣りが解禁されます。(穴釣りは凍結状況で変わるので事前の確認をしてください)
山頂では赤城おろしが吹き防寒対策が必要ですが、地蔵岳などの外輪山にかかる雲が刻々と変わるパノラマが楽しめます。
赤城山頂には、東岸から南岸にかけてお土産や旅館が並び、ボート遊びや、氷上穴釣りなどのワカサギ釣りで賑わう「大沼(おの)」に、湿原植物と高山植物の宝庫、「覚満淵」、手付かずの自然が残り、コバルトブルー、エメラルドグリーンと四季に湖面が変わる「小沼(この)」と個性あふれる3か所の水辺があります。
また、外輪山の黒檜山、駒ヶ岳、地蔵岳への登山コース、ファミリーでも楽しめるトレッキングコースもあります。四季を通じて様々な風景に出会え、子供からお年寄りまで楽しめる旅先です。都心から車でわずか2時間半、こんなに近くに大自然が残っています。
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(2024/12/14更新)
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