写真:陽月 よつか
地図を見る奈良・大和文華館と言えば、数々の国宝や重要文化財を所有する、東洋美術の美術館。それに加え、「文華苑」と名付けられた見事な庭園を持つことでも知られています。
こちらの庭園は、自然そのままのように瑞々しく草木の生い茂っているのが特徴。そしてまた、四季を通しての花の名所でもあるのです。
春には梅に桜に雪柳、夏にササユリそれから紫陽花、暑い最中には艶やかな凌霄花(のうぜんかずら)や百日紅(さるすべり)。酔芙蓉(すいふよう)や曼珠沙華が秋を告げ、冬には蝋梅(ろうばい)に山茶花(さざんか)、椿も花開く…。
もちろん、その他の花も名前を挙げきれないほどいっぱい! 見ごろの花がない時がない!
ここは植物園? いえいえ、これが大和文華館の庭園「文華苑」なのです。
四季折々の花が楽しめる「文華苑」は、一年を通して来る人たちを飽きさせません。その中でもとりわけ美しいのが、春のしだれ桜「三春の瀧桜」。
本館前の広場に瀧のように大きく腕をおろすその姿は、なんとも雅やか。こちらの桜は内側に入れるので、満開の桜のカーテン越しに、春の山桜や桃の花を眺めることも出来ますよ。
また、奈良の桜と言えば、百人一首の時代からの名花である、八重桜も外せませんよね。
『 いにしえの 奈良の都の 八重桜 けふここのえに 匂ひぬるかな 』
八重桜ももちろん庭園の春の名物の一つ。傍らには、百人一首で伊勢大輔の詠ったこの句の案内板があります。
こちらの八重桜を右手にしだれ桜を左手に、春先の本館前広場では贅沢な桜の競演が楽しめるのです。
写真:陽月 よつか
地図を見るまたこちらの大和文華館は、花の見事さ・種類の多さだけでなく、庭園「文華苑」のそれ自体も大きな見どころ。小さな山かとも思うような丘はまるごと庭園、その丘を更に大きな池が半分ほど囲んでいます。
こちらのお池は菅原池、通称を蛙股池(かえるまたいけ)と言い、『日本書紀』にも登場する、日本最古のダムと言われる池なんです。さらっと出て来るこの歴史の古さ、さすが奈良。
庭園や本館窓から臨むことが出来るのは、平城京跡や高円(たかまど)山、三笠山(花山と合わせて春日山とも言われます)。三笠山と言えばこちらの和歌を思い出す方も多いのではないでしょうか。
『 天の原 ふりさけみれば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも 』
百人一首の中の一首、阿倍仲麻呂の望郷の歌。そしてまさに、大和文華館から臨む三笠山は月の出の方角なのです。仲麻呂の偲んだ『三笠の山に出でし月』の風景、見られるかはその日の月の出時刻次第ですが、もし出会えたら是非ゆっくりと眺めてみて下さいね。
写真:陽月 よつか
地図を見るしかし何故これほど庭園に力を入れているのでしょうか?
こちらの大和文華館はそもそも、先に美術品があって美術館にしたのではなく、美術館を作るために美術品の方を揃えたという『美のための美術館』。
そして、世界的な美術史学者であった初代館長の矢代幸雄氏は『自然の額縁のなかで東洋の美術は一番美しく見える』との理想的理念を抱いていました。そのため、自然美もまた、美術館に欠かせない美の一部なのです。
そうなれば、自然美の中に立つ本館ももちろん美の一部。
本館建築は、芸術院会員の吉田五十八(いそや)の代表作の一つ。桃山時代の城郭や蔵を思わせる「海鼠壁(なまこかべ)」が特徴的です。
こちらは、1962年に第3回「BCS賞」(日本国内の優秀な建築作品に与えられる賞)を受賞、2005年には「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」に選ばれた、まさに日本の名建築。野趣あふれる庭園にあって、野性味に負けるどころか引き立て合って一際と凛々しいその佇まいは、それを見るためだけにでも訪れる価値ありの見事さです!
そして、こちらの庭園の花々がとりわけ素晴らしい最後の理由は、その静けさにあります。
こちらの『美のための美術館』は、春日大社や東大寺・平城京跡などより電車で10分以内。訪れやすくありながら観光の喧噪からは離れているという絶妙な好立地で、庭園「文華苑」ではいつでも鳥の声や葉擦れの音を楽しむことができるのです。
百人一首に詠まれた風景の中、五感をゆっくりとくつろがせるひとときは、他では味わうことのできない贅沢。そんな大人の奈良旅はいかがでしょうか?
花の見ごろの折などには、一日無料デーを開催していることも。是非公式HPをチェックしてみて下さいね。
平常展・特別企画展:一般620円、高校・大学生410円、小学・中学生無料
特別展:一般930円、高校・大学生720円、小学・中学生無料
近鉄奈良線「学園前」駅下車 徒歩約7分
駐車場無料
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(2025/1/20更新)
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