高知・土佐赤岡絵金祭りは炎に浮かぶ極彩屏風絵が凄い

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高知・土佐赤岡絵金祭りは炎に浮かぶ極彩屏風絵が凄い

高知・土佐赤岡絵金祭りは炎に浮かぶ極彩屏風絵が凄い

更新日:2017/06/06 14:10

風祭 哲哉のプロフィール写真 風祭 哲哉 B級スポットライター、東海道完歩ブロガー、青春18きっぷ伝道師

四国一小さな町の静かな古い商店街の軒先が、夏の夜の2日間だけ、世にも奇妙なおどろおどろしい芝居絵で飾られる――
土佐・高知の旧赤岡町(現香南市)にそんなお祭りがあるのです。祭りの名は「絵金祭り」。この赤岡の地に住み、数々の芝居絵を残した「絵師金蔵」、略して「絵金」と呼ばれた男が描いた、血沸き肉躍るような極彩の屏風絵が、ロウソクの揺れる炎でライトアップされるさまは恐ろしくも情緒にあふれ、必見です。

絵金祭りは「えきんさん」ゆかりの高知・土佐赤岡が会場

絵金祭りは「えきんさん」ゆかりの高知・土佐赤岡が会場

写真:風祭 哲哉

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毎年7月の第3土曜と日曜に行われる「絵金祭り」の会場は、高知県の土佐赤岡。現在は市町村合併により香南市となっていますが、かつて日本の市区町村の中で最も面積が小さい自治体だった旧赤岡町で行われます。
高知駅から土佐くろしお鉄道のごめん・なはり線で約30〜40分の「あかおか駅」に到着すると「えきんさん」のキャラクターがお出迎え。この「えきんさん」が絵金祭りの主役なのです。

ちなみにこの「えきんさん」を描いたのは、あの、やなせたかしさん。やなせさんはこの近くの現・高知県香美市の出身ということもあり、ごめん・なはり線の全駅でやなせさんの描いたキャラクターが出迎えてくれます。

絵金祭りは「えきんさん」ゆかりの高知・土佐赤岡が会場

写真:風祭 哲哉

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この「えきんさん」とは絵師金蔵、通称「絵金」と呼ばれた江戸末期の絵師。高知城下に生まれ、幼いころから才能に恵まれた金蔵は江戸で狩野派を学んだ後、20歳にして土佐藩家老・桐間家の御用絵師となるも、贋作の嫌疑をかけられ職を解かれることとなります。

その後しばらくの間の足取りは不明な点も多いのですが、やがて叔母を頼って赤岡に定住した後は「町絵師・金蔵」を名乗り、地元の豪商たちに頼まれるがままに芝居絵や凧絵、絵馬や幟などを数多く描いたといわれています。特にこの時代に金蔵が描いた猥雑で土俗的な血みどろの芝居絵が今も赤岡には数多く残されています。

絵金祭りは「えきんさん」ゆかりの高知・土佐赤岡が会場

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絵金祭りは年に一度、夏夜にだけよみがえる絵金の芝居絵

絵金祭りは年に一度、夏夜にだけよみがえる絵金の芝居絵

写真:風祭 哲哉

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年月を重ね、傷みが見られるようになった絵金の作品は、現在「絵金蔵(えきんぐら)」と呼ばれる収蔵庫を備えた美術館の温度管理の行き届いた場所で保管されています。
普段はこの絵金蔵でも壁の穴から常時2枚の作品が覗き見できるようになっていますが、年に一度「絵金祭り」の期間だけ、赤岡に残された23枚すべての絵が町じゅうに飾られるのです。

絵金祭りは年に一度、夏夜にだけよみがえる絵金の芝居絵

写真:風祭 哲哉

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絵金が数多く残した芝居絵屏風とは、歌舞伎や浄瑠璃のクライマックスを二つ折りの屏風に描いたもので、この土佐地方独特のもの。かつてこの赤岡は香南地方の商都として大変豊かなところだったため、町には数多くの豪商がいて、彼らがパトロンとなって金蔵に多くの芝居絵を描かせたのだといいます。

描かれた芝居絵は神社やお堂の夏祭りのため氏子たちにより奉納されたと同時に、絵金の作品の特徴である強烈な赤“血赤”は、邪気を払う魔除けの色として彼らに好んで受け入れられたのでした。現在、この絵金祭りに飾られる赤岡の芝居絵屏風23点は、高知県保護有形文化財となっています。

絵金祭りは年に一度、夏夜にだけよみがえる絵金の芝居絵

写真:風祭 哲哉

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絵金祭り当日、19時になると、この23枚の絵が赤岡の中心部の所蔵家の軒先に並べられます。
絵金の芝居絵屏風には、ユーモアや皮肉の混ざった表現がいたるところに含まれていますが、それは背景の建物の屋根や、着物の絵柄などにさりげなく描かれているため、ぱっと見ただけでは分からないものがほとんどです。中にはそうした絵の解説をしてくれる所蔵家(店)もありますので、ぜひその隠されたメッセージを探してみましょう。

絵金祭り期間中は、特別イベントも

絵金祭り期間中は、特別イベントも

写真:風祭 哲哉

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絵金祭りの日は小さな赤岡の町にも大勢の人がおしかけ、このお祭りの人気の高さがうかがえます。またこの日は絵金の芝居絵屏風が商店街に飾られるだけでなく、道端には屋台が並び、特設のビアガーデンでのさまざまな催しや、町なかの酒蔵の開放なども行われています。祭りの期間は町の中心にある「絵金蔵」も夜間開館を行い、普段は公開されない作品を中心とした特別展示も開催しています。

絵金祭り期間中は、特別イベントも

写真:風祭 哲哉

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またカメラを抱えた人たちが多いのもこのお祭りの特徴。もちろんそれは絵金の芝居絵屏風を写すためですが、作品のこれ以上の劣化を防ぐためフラッシュを用いてのカメラ撮影は禁止となっていますのでご注意ください。

絵金祭りのハイライトは、夜の闇に包まれてから

絵金祭りのハイライトは、夜の闇に包まれてから

写真:風祭 哲哉

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絵金祭りのハイライトは、もちろん町が闇に包まれてから。
そこに現れるのは、闇の中に蝋燭の灯りで浮かび上がる極彩色の芝居の世界。同じ絵でも明るい時間に見るのとは違って、より鮮やかに躍動感あふれ、まるで絵の中の人々が生きたまま眼前に迫ってくるかのよう。
それは絵金の技法に秘密があるからなのです。絵金が使った絵の具である泥絵の具には、貝殻を焼き、砕いて粉末にした胡粉(ごふん)と呼ばれる白色顔料の粒子が含まれていて、それが蝋燭の炎が揺れ動くとともに反射し、キラキラと光るのです。

絵金祭りのハイライトは、夜の闇に包まれてから

写真:風祭 哲哉

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芝居絵屏風を照らすのは、流れ出る蝋で化け物のように変形した1本の太い蝋燭の灯りのみ。それが闇夜の中から奇奇怪怪な表情をした芝居役者の真っ白な肌や血の赤を浮かびあがらせるさまは、猥雑で猟奇的、という表現がピッタリ。そのおどろおどろしさに泣き出す子供も・・・やっぱりいるでしょうね。
その独特の雰囲気は、現代に残る日本の奇祭、と言ってもいいかもしれません。

絵金祭りの2日間は、土佐絵金歌舞伎も上演

絵金祭りの2日間は、土佐絵金歌舞伎も上演

写真:風祭 哲哉

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赤岡の町の中心、「絵金蔵」の正面にある芝居小屋が「弁天座」。
明治の時代、赤岡の旦那衆が芝居小屋としてお金を出し合ってつくった弁天座は一度は閉館したのですが、絵金文化を核とした街づくりのため平成19年に復活し、現在は赤岡の新しい交流拠点としてさまざまな催しが行われています。

絵金祭りの2日間は、土佐絵金歌舞伎も上演

写真:風祭 哲哉

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この弁天座で毎年絵金祭りの2日間に合わせて上演されるのが土佐絵金歌舞伎。これは絵金の芝居絵に描かれている芝居を再演しようと、地元有志によりはじめられた歌舞伎です。役者はもちろん大道具、小道具等のスタッフもすべて地元住民のため、素人の集まりではありますが、なかなか本格的で見ごたえがあり、なによりもこの小さな町でこうして自主的に文化継承していること自体が立派なことです。

この土佐絵金歌舞伎、入場は無料なのですが、文化保存募金としてパンフレットを有料で販売していますので、入場する方は活動資金としてぜひ協力しましょう。

土佐赤岡絵金祭りには「古き良き日本の情緒」も

夏の夜、年に一度だけ、普段は大切に保管されている宝物が町じゅうに披露される…
日本の伝統的なお祭りは、もともとそういうものが多いため、その意味では、この土佐赤岡絵金祭りも特に珍しいものではありません。

このお祭りが特異なのは、そこで公開される宝物があまりにも衝撃的だからなのですが、実際に訪れてみると、その絵の「おどろおどろしさ」よりも、意外にも「古き良き日本の情緒」のような懐かしさを強く感じるのです。
それは、絵金の芝居絵を照らす、はかなげな蝋燭の炎からくるものなのか、古き良きものが数多く残されている、土佐赤岡の町の灯りからくるものなのかはわかりません。

2017年の土佐赤岡絵金祭りは7月15日から16日まで。
日本人であればぜひ一度、訪ねてほしいお祭りの一つです。

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掲載内容は執筆時点のものです。 2015/07/18 訪問

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