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地図を見る京都府長岡京市、善峯寺や光明寺と並ぶ西山三山の一つである「柳谷観音・楊谷寺」は市街地から離れた山深くにある古刹。”眼の観音様”と呼ばれており、京都だけではなく他府県からの参拝客も多く、眼病平癒に霊験あらたかなことで知られています。
「柳谷観音・楊谷寺」は京都の代表的観光名所でもある清水寺を開山した延鎮僧都により開かれた寺。延鎮僧都が『西山にて生身の観音様に出会うことができる』という夢のお告げから、柳の生い茂る渓谷の岩上に生身の観音様を見つけたというところからその名が付いたとされています。
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地図を見る開山である延鎮僧都が清水寺に帰った後、近くの乙訓寺の要職を命じられていた弘法大師・空海は幾度となく「柳谷観音・楊谷寺」を参詣していました。
そしてある時、お堂のそばの溜まり水で親ザルが目のつぶれた子ザルの眼を一心不乱に洗っている姿を見ます。獣にも霊験のある水ならば、人間にも効くはずだと信じた空海はその水に17日間にも及ぶ加持祈祷を捧げ、独鈷でその清水をかき回したとされています。こうして、空海は不思議な水にさらに祈祷を施して、眼病に悩む人々のために霊水にしたという伝説が今に伝わっているのです
空海が加持祈祷を施した霊水こそが「柳谷観音・楊谷寺」の代名詞でもある「独鈷水(おこうずい)」として今にも伝わっています。
本殿脇には今も多くの参拝客が訪れる独鈷水への道が。平成の現代とは思えないような昭和以前の空気感が漂う独鈷水への入口。それは聖域への入口といった感覚で、”観光”ではなく”信仰”という言葉がしっくり来るような緊張感が漂っています。
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地図を見る全国各地からご利益を求めて信者が訪れる「独鈷水」は江戸時代の第112代霊元天皇が、「独鈷水」の力で眼病を治癒されたことをきっかけに明治時代にいたるまで天皇家に献上していたとされる由緒ある水。「柳谷観音・楊谷寺」は皇室ともゆかりの深い寺院でもあったのです。
また、豊臣秀吉の側室淀殿が柳谷観音を信仰し、その名の由来となった淀城にいた時には毎日柳谷観音の水で顔を洗っていたとされる逸話も残っています。
実はこの独鈷水、古来の逸話だけでなく現代でもそのご利益に救われた方が大勢!中には失明から視力を回復したという奇跡的な例も少なくなく、そのご利益はお墨付き。それ故にこの柳谷観音を訪れる方が跡を絶たないのです。
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地図を見るここ柳谷観音・楊谷寺以外に全国各地には空海に関する伝説がなんと約5000件も!その中でも空海ゆかりの水とされる「弘法水」の類を数えても、北は青森県下北半島から、南は鹿児島県の加計呂麻島に至るまで全国でなんと1500件にも及ぶとされています。
そんな数多い弘法大師ゆかりの水の中でも、この「独鈷水」は古くから多くの人に信仰され、今もなお大切にされている貴重な水の一つ。
ちなみに「独鈷水」がその場でゴクゴクといただくのではなく、むしろ持って帰るのが一般的。水場で各自が水を汲み、一度観音様にお供えしてから持ち帰ります。そして自宅で水を沸かしてお茶を入れたり、観音様に眼病平癒を祈りながら目を洗うのです。
多くの参拝客がそのご利益を求めて訪れる「独鈷水」はパソコンやスマホと、目を酷使する現代人にとって実にありがたい存在。また、境内は独鈷水以外にも京都の寺院と肩を並べるほどの観光資源に溢れていますが、拝観料はなんと無料(あじさいまつり、あじさいウイーク期間を除く)。これは先代の住職が眼の病や病気の方たちからは拝観料など取れないという意向から。それほど”信仰”を大事にしているお寺なのです。そんな心づかいに感謝しながら参拝してください。
そんな柳谷観音・楊谷寺へは車なら京都縦貫自動車道「長岡京IC」を下車後約10分程。電車であれば阪急電鉄の「西天王山駅」か「長岡天神駅」もしくはJR「長岡京駅」からタクシーに乗り換えて約10分〜15分です。なお、毎月の縁日には各駅からシャトルバスも運行されていますので利用するのが便利です。
この記事を書いたナビゲーター
bow
京都生まれ、京都育ちの生粋の京都人です。仕事で全国を飛び回り、京都の良さを再認識したため、京都の観光に携わる仕事をしています。全国を旅した経験と、観光業界に生きる人間としての視点、更には京都人ならでは…
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