北海道栗山町は札幌市から車で50分ほどの町。そこに創業明治11年の歴史をもつ小林酒造があります。日本酒「北の錦」で有名な小林酒造には、敷地内に北の錦記念館や酒蔵などが建ち並びます。記念館、酒蔵と抜けて先へ進むと、蔵元の生家「小林家」があります。
「小林家」は明治30年代に建てられた日本家屋で、北海道の厳しい冬と豪雪に耐えながらほとんど手を加えられることなく現在まで保存されてきました。築110年以上の歴史的建造物ですが、2013年まで実際に住居として使用されていたこともあり保存状態が非常に良く、住んでいた人たちの息づかいまでが感じられる佇まいです。
現在「小林家」はギャラリーなどとして一部が無料開放され、ホールは休憩室を兼ねたカフェコーナーと売店になっています。趣深い入口をくぐり、明治時代にタイムスリップしてみましょう。
小林家の中に入ると、所狭しと並べられた調度品の数々と外よりも涼しい室温に驚くでしょう。家財道具が傷まないよう建物内は直射日光が入らないような造りになってることもあり、一年を通じて低温です。そのため、裸足やストッキングでの訪問はお勧めできません。ゆっくりとくつろぐためにも、1枚羽織物を持参した方が良いでしょう。
このように夏でも外より涼しい家の状況を肌で体感すると、冬の寒さの厳しさは容易に想像できます。実際に3年前まで人々の暮らしがあったわけですから、住んでいた方々の生活はどれ程の工夫と忍耐が必要だったかと感心させられます。
また、ホールの中のテーブルや家具などのほとんどは、古くから小林家で使用されていた物を活用しています。そのため、室内の雰囲気に統一感があり、「造りだされたレトロ」ではなく、明治時代の裕福な家庭へ招待を受けたようなリアルな感覚を味わうことができます。
ホールは喫茶コーナーと売店、無料休憩所を兼ねています。ホールで休んだり喫茶を利用するとお茶を出していただけるのですが、この時の湯飲み茶わんは何と明治時代から使われているという貴重なもの!「落としてはいけない」という緊張感があります。しかし、長く大切に使用され続けてきた食器からは、歴史の重みだけでなく何とも言えない温かみも伝わってきます。
お店のスタッフの方々の対応も、小林家の雰囲気を一層良いものにしています。一般的なカフェのような接客ではなく、まるで家に来た客人をもてなすように親しみがこめられた程よい距離感での接客は大変心地よくくつろげます。「肌寒くないですか」という心遣いの言葉や建物や器に関する説明など、対応一つひとつがとても親切で、これも「小林家」の魅力の一つです。
なお、事前予約をすれば小林家の中を見学してまわることも可能で、所要時間は1時間20分程度となっています。
小林家の喫茶コーナーで人気ナンバー1のメニュー「甘酒しるこ」は、600円という価格でおしること甘酒、昆布がついてきます。「甘酒しるこ」という名前からもわかるように、酒粕甘酒の中に白玉が入っているという一風変わったおしるこは酒粕のツブツブ食感が面白い一品。中央に餡子、それを囲むように紅白の白玉が入っており、見た目にもとても可愛らしのが特徴です。
甘さ控えめの甘酒は600円という価格にも関わらず酒造で提供しているものだけあって、酒粕が贅沢に使われています。さらに、アルコールがとばしてあるため、ドライバーでも安心して飲むことができるのも嬉しいポイント。お酒が苦手という人も、大好きという人も大満足できます!
もちろん、料理が提供される御盆や器は明治から昭和初期の品。箸休めについてくる昆布もヒョウタンの形になっているなど、細やかで粋な気配りは贅沢な気分を存分に味あわせてくれるでしょう。
小林家は明治30年に建てられた日本家屋ですが、建設の際、敷地から白蛇が出てきたと言い伝えられています。白蛇の住処を奪ってしまったことに心を痛めた初代は、中庭の龍神様と一緒にその白蛇も祀りました。以来、白蛇は小林家の守り神のような存在。パンフレットやグッズなどいたる所に、白蛇をモチーフにしたデザインが施されています。
白蛇がデザインされた小林家オリジナルの手ぬぐいは、青地に白の蛇がとても印象的でオシャレです。喫茶コーナーの一角で販売もしていますから、ぜひ注目してみてください。お酒を包むのはもちろん、埃避けとして小物にかけておいたり、部屋に飾ってインテリアのアクセントとして使用したりするのもお勧めですよ!
北海道では冬の厳しさや豪雪のため明治期の建造物の痛みも激しく、保存も困難なため古い建造物はだんだんと減りつつあります。そんな中にあって「小林家」は人々の努力によって建てられた頃の面影をそのまま残されています。建物自体はもちろん調度品も当時の物という本物の「レトロ」がそこにはあり、明治期の生活を肌で感じることができるでしょう。
また、甘酒もおしるこも酒造の物というだけあって、一般的なものとは全く違う本格的な味わい!甘すぎず酒粕の味や食感はここにしかない特別なものです。その甘酒やおしるこが年代物の器で振る舞われるのですから、感激もひとしおです。北海道栗山町の「小林家」へ一歩足を踏み入れれば、贅沢な至福のひとときを過ごすことができますよ!
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(2023/11/28更新)
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