「箱根塔之沢温泉 福住楼」で小田急ロマンスカー広告の丸風呂に入る

「箱根塔之沢温泉 福住楼」で小田急ロマンスカー広告の丸風呂に入る

更新日:2018/11/25 18:46

菊原 朝香のプロフィール写真 菊原 朝香 モデル、美肌温泉家、食べ歩きトラベラー、歴女
小田急ロマンスカーの広告で見た人も多いはず。丸い浴槽いっぱいにたたえた温泉に、窓枠とその向こうの紅葉が映った、息を飲むような静かな美しい一枚の写真。「あの丸風呂に入ってみたい!」そう思ったことは誰もが一度はあるはず。そんな箱根塔之沢温泉「福住楼」は、多数の文人墨客に愛されてきた歴史ある国登録有形文化財の京風旅館です。この「福住楼」の丸風呂だけじゃない、知られざるすごいところを全部お伝えします。

箱根塔之沢温泉を明治から見守ってきた福住楼

箱根塔之沢温泉を明治から見守ってきた福住楼

写真:菊原 朝香

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箱根温泉郷の歴史が古いことはよく知られていますが、中でも江戸時代から箱根七湯に数えられた塔之沢温泉は、伊藤博文や天璋院篤姫、勝海舟など歴史に名高い偉人たちに愛されてきました。

福住楼の創業は明治23年(1890)。ところが明治43年(1910)に早川の大洪水による鉄砲水で当時の建物は流されてしまいます。そして同年12月末に当時すでに所有していた「洗心楼玉の湯」をもとに営業を再開。これが現在の福住楼の建物です。もともとの場所からは200mほど下ったところになります。驚いたことに、実はこの建物は福住楼の歴史よりも古く、明治の初期に建てられたものなんですよ。

竹による最高級芸術作品「福住楼」

竹による最高級芸術作品「福住楼」

提供元:箱根塔之沢温泉 文化財の宿 福住楼

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買い取った建築物のため、とても素晴らしいものなのに設計者がわからないのがとても残念。しかし、この伝統的京普請の木造三階建て数寄屋造りの文化的価値は、誰が見てもあきらか。

特筆すべきなのは、なんといっても竹。京都の角屋(すみや)や宝厳院(ほうごんいん)の建築様式をもとに、同じ材料、同じ職人を京から集めて造られました。この素晴らしい建築物は、一口に「竹」といってもいろんな竹が使われています。たとえば100〜200年以上の年月をかけて作る煤竹(すすだけ)やまだら模様が特徴の丹波班竹(たんばはちく)の四方竹(しほうだけ)。そして亀甲竹(きっこうちく)の皺竹(しぼちく)など。珍しいあらゆる種類の竹という竹が、惜しげもなく随所に効果的に使われています。

贅と手間を尽くした竹によるこの最高建築物は、日本ならではのものなのですが、しかし同時にとても珍しいものでもあるのです。やわらかな丸みが優しくぬくもりのある印象を見る者に与えてくれ、ホッとできる空間を作っています。そんなところにも注目してみると、ここで過ごす時間が一段と豊かなものになりますよね。

もうひとつ注目してほしいのは幸せのこうもり。中国ではこうもりは「長寿」「豊富な財力」「痛みがない」「徳を好む」「天命まっとう」という5つの幸福を運んでくる縁起物。館内のどこかにこうもりの細工が隠れています。見つけたら、こうもりがあなたに幸せを運んできてくれるかもしれません。

文人墨客たちが愛した部屋に泊まってみたい

文人墨客たちが愛した部屋に泊まってみたい

提供元:箱根塔之沢温泉 文化財の宿 福住楼

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福住楼は全17部屋で、およそ700坪の敷地を贅沢に使った間取りになっています。おおまかに早川側、そして庭側と、窓からの景観は2つ。それぞれ意匠を凝らしていて、ムダのないシンプルな美しさを極めた造りになっています。

これまでに皇族や文豪、梨園などたくさんの著名人が、執筆活動のために、そしてプライベートを過ごすためにと滞在してきました。お気に入りの部屋があった方も多く、吉川英治は早川がのぞめる桜二、同じく竹五は坂東妻三郎、梅一は幸田露伴。川音の聞こえない静寂な庭側の桐三は川端康成が好んで投宿しました。また、福住楼で一番古い明治期に建てられ、当時最上級ランクの部屋だった松二は島崎藤村『春』のモデルになった部屋といわれています。各部屋の書や絵画も由緒あるものなので、要チェックですよ。

料理長厳選の旬の食材で季節を味わう

料理長厳選の旬の食材で季節を味わう

写真:菊原 朝香

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地元の新鮮な魚介類を中心とした会席料理は、お部屋でゆったりと食せます。料理長が工夫を凝らした献立は月替わり。どの食材も旬のものが厳選されていて、季節を料理で味わうことができるのです。そして出来立てのものを、最高のタイミングで運んできてくれます。

大人数で複数の部屋に分かれて宿泊の場合は、大広間にてみんなで食事をすることもできますよ。天井がとても高く空間を広くとってあるので、ゆったり使えてとても気持ちがいいですし、特に朝は緑に萌える庭が目に鮮やかで最高に美しいです。

丸風呂は実は大小2つある

丸風呂は実は大小2つある

写真:菊原 朝香

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小田急ロマンスカーの広告でおなじみの丸風呂は、脱衣所からもう雰囲気たっぷり。引き戸や欄間は波や牡丹など自然のものをデザイン。白木とすりガラスが清潔感を引き立てます。実は丸風呂は、大丸風呂と小丸風呂と2つあって、入り口も脱衣所もそれぞれ別々。天井部分が開いた薄い壁で仕切られています。その壁にほどこされたシンプルな細工が白木と大理石のすっきりした統一感のある浴室にぴったり。

ちなみに浴場は、大丸風呂と小丸風呂で1つ、岩風呂で1つという分け方になっています。男女入れ替えのタイミングを間違うとせっかく来たのに肝心の丸風呂に入れないままチェックアウトになっちゃうので要注意!

アルカリ性単純泉のやわらかなお湯は、ほどよく角質や皮脂をとってくれるスッキリ美肌の湯。何度も入っても湯あたりしない優しい泉質なので湯治にもおススメ。24時間好きな時に入ることができますし、立ち寄り湯はやっていないので、いつでもゆったりと入浴を楽しめます。ちなみに昔の建築物のため、トイレや洗面所は共同です。他のお客さんのことも思いやって清潔に使いましょうね。

箱根塔之沢温泉「福住楼」の素晴らしさを世界へも

いかがでしたか?
日本の伝統文化の魅力がたくさんつまったステキな温泉旅館だと思いませんか?英語を話せるスタッフもいるので、外国人の友達を案内しなくてはならない時、また箱根のオススメ温泉旅館を尋ねられた時、箱根塔之沢温泉「福住楼」を思い出してみてください。外国の方が求める日本像にもぴったりですから喜ばれること間違いなし。

玄関に置かれたつくばいなど、細かなところに福住楼流の和のおもてなしを感じ取ることができます。2階のバーは看板や窓のデザインなど大正モダンなレトロムードがあふれていてまた少し違った和の雰囲気がただよいます。日常から離れて、ゆったり落ち着いた贅沢な時間を過ごしたい方にぜひ訪れてほしい旅館です。

掲載内容は執筆時点のものです。 2015/11/22−2015/11/23 訪問

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