更新日:2013/10/02 18:33
写真:木村 岳人
地図を見る下ノ廊下のトレッキングルートは、ご存じ、日本一の高さを持つ黒部ダムから始まります。ルートの全長はおよそ30km。黒部ダムから下流の欅平(けやきだいら)まで、自力で歩き通さなければなりません。しっかり計画を立て、準備をした上で挑む必要があるのです。
峡谷に入る前日に黒部ダムに到着し、その日は黒部湖畔のキャンプ場で一泊。翌朝の早い時間に黒部ダムを出発して下ノ廊下を歩き、黒部ダムから19kmの地点に位置する阿曽原(あぞはら)温泉で一泊。翌日の昼に欅平へ到着する、二泊三日のスケジュールが一般的。
トロリーバスの黒部ダム駅から案内標識に従って谷底へと降り、黒部川の流れに沿って歩いていくと、程無くしてトレッキングルートは断崖絶壁の細道へと変貌を遂げます。まるで壁のようにそそり立つ、岩肌に穿たれた道を歩くのです。
写真:木村 岳人
地図を見る日本一の深さを誇る黒部のV字谷は荘厳雄大そのもの。目に入る全てのものがダイナミックすぎ、遠近感やスケール感がおかしくなって、思わずくらくらしてしまいます。もっとも、くらくらするのは足元を見ても、ですが。
ご覧の通り、下ノ廊下は峡谷の岩盤を掘削して作られた、かなりムリヤリな感じの道です。それもそのはず、このトレッキングルートは「旧日電歩道」と呼ばれ、元は黒部ダムを建設する為の調査用として開かれました。一般人が歩く為に作られた道ではなかったんですね。
トレッキングルートとしてリニューアルされた際に拡張されたそうですが、それでも道幅は肩幅くらいしかありません。右手は谷底の黒部川へストーンと落ちる崖っぷち。もちろん、足を踏み外したらタダでは済みません。ロープを握る左手に力が入ります。
写真:木村 岳人
地図を見る下ノ廊下には数多くの景勝ポイントが存在しますが、その中でも特に印象的なのが「十字峡」でしょう。峡谷を流れる黒部川の左右ほぼ同じ場所から沢が十字に流れ込む、大変に珍しい地形です。
他にも、花崗岩の白壁が両岸に迫りくる「白竜峡」や、くねくねと蛇行して流れる「S字峡」など、目を見張る光景が連続し、長い距離を歩いていても飽きる事がありません。
このような、多種多様な見どころのある下ノ廊下はまさに自然美の極致、日本を代表する峡谷景観と言えます。事実、その類稀なる谷の深さとダイナミックな景観から、文化財保護法における国の特別名勝および特別天然記念物のダブル指定を受けています。
写真:木村 岳人
地図を見る十字峡を越えて旧日電歩道の終盤に差し掛かると、その高さは谷底から100m以上にも及びます。30階建てビルの屋上の縁を延々歩いているようなものですね。そう考えると非常におっかないですが、この辺りまで来るとすっかり感覚が麻痺してしまい、高さへの恐怖はあまり感じなくなっています。
もっとも、そのような油断は大事故を招く事にもなりかねません。最後までしっかりと油断せず、気を引き締めて歩く事が肝要です。
この旧日電歩道は普通の登山道より平坦ですが(それでも、チェーンを使ってよじ登る鎖場など、体力を使う場面は多々あります)、いかんせん、距離が長いのでサクサク進まないと、あっという間に日が暮れてしまいます。余裕を持ったスケジュールを心掛けましょう。
写真:木村 岳人
地図を見るとまぁ、下ノ廊下は肉体的にも精神的にもかなりハードな道のりです。それなりの登山経験と装備が必要な、気軽に行くにはちょっと難しい場所ですが、しかしご心配無く! 下ノ廊下のゴール地点である欅平には黒部峡谷トロッコ電車の駅があり、富山方面から簡単にアクセスする事が可能なのです。
黒部川の幅が極端に狭くなり、そこを猿が飛び越えたという逸話が残る猿飛峡(さるとびきょう)や、800mもの大岩壁がそそり立つ奥鐘山(おくがねやま)など、欅平駅の近くには見どころが盛りだくさん。下ノ廊下を歩かずとも、黒部峡谷の壮大さを垣間見れます。
特にこれからの紅葉シーズン、色付いた木々が白い岩肌やエメラルドグリーンの清流と相まって、素晴らしいコントラストを目にする事ができるでしょう。
一年のうちわずか二ヶ月間しか歩く事ができないものの、普通の登山とは一味も二味も違う、現実離れした峡谷のトレッキングを楽しむ事ができる下ノ廊下。行くならやはり、紅葉が始まる10月中旬がベストです。
健脚な方にぜひともオススメしたいルートではありますが、くれぐれも事故にだけにはご注意下さい。阿曽原温泉小屋のwebサイトに下ノ廊下の報が掲載されていますので、出発の際には必ずチェックしましょう。
アウトドアに慣れていない方や、より気軽に峡谷景観を楽しみたい方には、下ノ廊下と同様に素晴らしい景観を楽しむことができる、黒部峡谷トロッコ電車をオススメします。
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この記事を書いたナビゲーター
木村 岳人
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