屋敷の竣工は江戸時代、1802年に弥彦神社の権宮司宅として建てられました。権宮司とは神社の職階のひとつで、副代表に相当します。
弥彦神社は1912年の大火でほとんどの建物が燃えてしまい、明治天皇の行在所があった宮司宅も消失したため、この住宅は弥彦の歴史を伝える大切な存在となっています。
昔ながらの和の風情を残す歴史ある邸宅というと、たいていはその地方の豪商や豪農の家です。そのような家は文化財クラスになると資料館や料亭、旅館などに活用され、公開も一部のみという所が多いですが、ギャラリー喫茶余韻は台所や浴室などの水回り以外はすべて公開されており、古民家好きにはうれしい限りです。
実はこの家は一度空き家となってしまい、そのときに取り壊しの話が持ち上がりました。しかしこの歴史的価値のある家を守らなくてはいけないと立ち上がった有志の人物により、なんとかその危機を免れました。その後、この家を多くの人に知ってもらいたいと、ギャラリーとしてオープンしたのが「余韻」誕生のきっかけなのです。開館から数年後には喫茶営業も開始し、さらに気軽に立ち寄れるようになりました。
奥の間や内蔵など、邸内のいたるところがギャラリースペースとなっているので、作品鑑賞を楽しみながら、邸内巡りも一緒にできます。屋敷の歴史に興味のある方は、ギャラリーのオーナーにぜひ一声かけてみてください。この家は明治時代には岩倉具視が宿泊したり、近年ではあの池上彰氏やモンゴル大使が訪れたりと、弥彦の迎賓館としても使われているところ。楽しいエピソードが聞けるかもしれませんよ!
2階部分は主に企画展に使用されています。広々とした空間なので、大きめの作品も楽々と展示ができます。この家が建てられた当時、2階建ては庶民には許されない贅沢なものでした。そのため大名屋敷や旅籠などの建物以外で、このように江戸時代の2階建ての邸宅が現存しているのは、あまり例のないこと。
作品を鑑賞しながら、そのような背景にも思いを馳せると目の前に広がる座敷もひと味違ったものに見えてくることでしょう。ちなみに5月に訪れた際には、長岡市の英雄・山本五十六の資料展を開催していました。
喫茶に使われているのは1階の座敷。ここは神職の方が暮らしていた家のため、一般庶民の家にはない「社家造り」と呼ばれる意匠をそこここに見ることができます。天井の竿縁配置から、欄間、ふすま絵など、見どころはたっぷり。公開されている文化財住宅にありがちな「ここから先は立ち入り禁止」という表示に阻まれて残念な思いをすることは決してありません。お茶と共に思う存分、屋敷の細部もお楽しみください。
提供元:渡辺治(アートスタジオ)
地図を見る喫茶メニューは、コーヒー、紅茶、抹茶から選ぶことが出来ます。やはり屋敷のイメージからか、一番人気のメニューは抹茶です。
書、絵画、写真、陶器など多彩なジャンルの企画展を行ってきたギャラリー喫茶余韻。展示に合わせてトークショーやコンサートなどのイベントを開催することもあります。詳しい情報はブログに随時アップされますので、ぜひそちらでご確認ください。
新潟県弥彦村の「ギャラリー喫茶余韻」は土・日・祝日のみの営業となっております。JR弥彦線弥彦駅からは徒歩6分。車の方は駐車スペースが2台分しかなく、前の道路も細いため、徒歩圏内にある弥彦競輪駐車場などの利用をオススメします。
余韻が建つ通りは現在は静かな住宅街ですが、かつては参宮通として多くの人でにぎわった場所。そんな往事に思いを馳せて、ゆっくりとまち歩きしながら訪ねてみてはいかがでしょうか。
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