写真:塚本 隆司
地図を見るお釈迦さまの遺骨の一部を納めた仏舎利塔。仏教が日本に伝わって以来、五重塔や三重塔として建築された。近代になってからは、インドやネパールなどで見られるドーム型をした「ストゥーパ」を模したものが造られている。
ここ名古山霊苑は、1954(昭和29)年に姫路市にインドの首相から仏舎利が贈られたのを機に造営された、日本で最初の墓地公園といわれている。
高さ38メートルの仏舎利塔を中心に6つの小塔をもつ連立式ドーム。金色の魚の置物が輝く噴水池や香炉堂、4つの納骨堂、魅惑的なヤクシー像などを納めた石仏堂など、日本とは思えない風景が広がる。
公営墓地であるため、宗教・宗派は問わない。霊苑であるため観光スポットと呼ぶには若干の抵抗があるものの、春にはサクラやツツジ、夏には新緑、秋には紅葉やイチョウ並木と季節が感じられる憩いの公園でもある。
写真:塚本 隆司
地図を見る実は、仏舎利塔の内部は、地元の人でもあまり入ることがないスポット。もちろん、名古山霊苑も仏舎利塔も有名ではある。ただ、霊苑だけに観光目的で訪れていないため、知られていないというわけだ。
姫路城十景のひとつということで訪れる観光客もいるが、仏舎利塔まで行かない人が多く、もったいない話である。内部に入れば、壁画や絵画、像などの美しさに圧倒されることになる。
仏舎利塔内部の中央に、仏舎利が納められた光輝く六角の御厨子・仏舎利殿がある。仏舎利とは、仏教の開祖・釈迦(しゃか)の遺骨のこと。仏舎利の回りを十二神将立像が守っている。
丸天井の高さは27メートル。視線を向けると、中央の天蓋(てんがい)の周りに2羽の鳳凰(ほうおう)が舞う姿が描かれている。その下には、雲に乗った雲中観音。さらに、まばゆいばかりに輝く釈迦三尊像と左右に釈迦の十人の高弟がぐるりと天に居並ぶ。日本の仏教寺院とは異なる美しさに圧倒され、つい見入ってしまう。
写真:塚本 隆司
地図を見る釈迦の高弟が居並ぶ下側の壁面には、10枚のモザイク画が飾られている。釈迦の一生を描いた「釈迦一代記全十場面」だ。およそ150万個のプラスチックをはめ込んだモザイク仕上げの大きな壁画は、懐妊から涅槃(入滅)に至るまでを順に描いている。
釈迦の一生についてあまり知らない人でも、壁画を見ていると気がつくことがあるはずだ。仏教画や建築物に「象」の姿が多く描かれる理由は、釈迦の誕生に白象が関わっているためである。一番目の絵には、白象の夢を見て懐妊する場面が描かれている。有名なところでは、生まれてすぐに七歩歩いて「天上天下唯我独尊」と声をはなったという王子誕生の場面もある。
写真は、釈迦の入滅を描いた「大涅槃(ねはん)」の図。
写真:塚本 隆司
地図を見る釈迦一代記全十場面の壁画の下に、日本に仏教を広めた偉人たちの座像が並ぶ。実は塔内の中央付近に立っていると、多くの視線を感じることになるのだ。視線の主は、空中観音をはじめ、釈迦三尊に十人の高弟。そして、仏教界の偉人たちだ。
日本に初めて仏教を広めた聖徳太子や弘法大師・空海や伝教大師・最澄といった各宗派の開祖たちがズラリと並ぶ。全てを見通し語りかけられているような気分だ。心地よく感じるか、居心地が悪いかは、人それぞれ。その日の気持ちが正直に表れるのかも知れない。神秘的な空間であることは確かだろう。
柱には、各開祖の色彩画や説明板がある。ひとつひとつ見ていくだけでもためになりそうだ。宗派を超えた珍しい空間となっている。
写真:塚本 隆司
地図を見る1994年に姫路城が世界文化遺産に登録されたことを記念して、「誰でも自由に行ける」「お城を取り巻く方向にある」を条件に、公募によって選定された10の地点を「世界遺産姫路城十景」という。素晴らしい眺めばかりで、この十景を巡る観光客もいるほどだ。
その一つに、名古山霊苑からの風景が選定されている。ここからの眺めは、大天守と3つの小天守からなる姫路城の姿がよくわかる。また、城の立地もよく見え、天守の建つ姫山と西の丸がある鷺山、写真の左側に見える男山、右側には景福寺山と小高い山が点在する地形に建っていることがわかる。
この名古山も3つの山が連なった形のため「波丘」と播磨風土記に記され、太古から姫路の要所だったようだ。霊苑内には、弥生時代の住居跡もある。
仏舎利塔以外にも、陸軍墓地や外国人兵士の墓、釈迦が修行したといわれる須弥山をイメージした建物もあり、ちょっとした冒険心をくすぐられる。
名古山霊苑は、宗教・宗派を問わず霊を祭るところだけに、さまざまな思いが込められた施設。姫路城からは、わずか1キロメートルのところにありながら、見落とされがちな名所なのだ。素晴らしい眺望と異国情緒あふれる建物。仏舎利塔内部の荘厳さは一見の価値あり。姫路城だけじゃない姫路の穴場スポットなのだ。
名古山霊苑仏舎利塔
期 間:1月1日〜12月28日 8:40〜16:30
入場料:大人200円、5〜13歳未満100円
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(2023/11/29更新)
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