写真:乾口 達司
地図を見る「奈良豆比古神社(ならつひこじんじゃ)」は京都府との県境にほど近い奈良市奈良阪町に位置しています。祭神としては、当地の産土に当たる平城津比古大神のほか、薨去後、「春日宮天皇」の名を追尊された志貴皇子(施基親王)とその子息に当たる春日王がまつられていますが、志貴皇子や春日王がまつられている理由は、当地に皇子の離宮があったためといわれています。
奈良豆比古神社の「翁舞」は各地に残る翁舞のなかでも特に古い形態を残しているとされ、能楽の源流にある民俗芸能であるといわれています。その希少性ゆえ、現在は国の重要無形民俗文化財にも指定されています。
翁舞が演じられるのは、奈良豆比古神社の秋祭の宵宮に当たる10月8日。夜8時、舞の演者や囃し方が拝殿に着座すると、まず前謡が謡われます。その後、舞台に立つのが、ご覧の「千歳の舞(ちとせのまい)」。「千歳の舞」は13歳前後の少年(千歳)が演じるように決められています。千歳の初々しい舞をまずはご堪能ください。
写真:乾口 達司
地図を見る「千歳の舞」が終わると、翁役の太夫が面をつけ、舞いを演じます。翁舞は天下泰平を祈願する舞とされていますが、ここで特に注目したいのは、太夫がつけている翁の面。面の製作年代は室町時代と考えられています。そのような文化財クラスの面ゆえ、普段は奈良国立博物館に収蔵されていますが、その点からも翁舞がいかに貴重な芸能であるか、おわかりいただけるでしょう。
写真:乾口 達司
地図を見る太夫が一人で舞った後、さらに脇二人の翁が太夫の舞に加わります。いわゆる「三人舞」ですが、奈良豆比古神社の翁舞ならではの特徴の一つに、この三人舞が挙げられます。
民俗芸能史上、きわめて貴重な舞とされる三人舞。じっくりご覧ください。
写真:乾口 達司
地図を見る三人舞を終えた翁は退場。代わって舞台に立つのは「三番叟(さんばそう)」です。三番叟は五穀豊穣を祈る舞とされており、翁舞と同様、日本各地にその舞が伝えられています。しかし、奈良豆比古神社の三番叟には、一風、変わった特徴があります。
三番叟はまず面をつけずに舞を舞います。その後、面をつけて先ほど舞いを舞った千歳と問答をおこないますが、注目したいのは、ご覧のように、一方が相手の方を向けば、他方は別の方を向いて問答をおこなっている点です。両者が決して対面せずに問答をおこなう形式は、先ほどの三人舞と同じく、奈良豆比古神社の翁舞ならではの特徴とされており、中世以来の古い形態をいまに伝えているといわれています。
写真:乾口 達司
地図を見る千歳との問答を終えた三番叟は、鈴を片手に舞を舞います。ときには鈴を鳴らして舞台を踏みしめ、ときには身体を大きく揺らして舞いますが、これは農耕の所作を表しているとされます。
この三番叟の舞をもって翁舞は終了。所要時間は約1時間ですが、珍しい所作がいろいろ見られるため、ときの経つのを忘れて見入ってしまうことでしょう。
奈良豆比古神社の翁舞がどのようなものか、おわかりいただけたでしょうか。境内でかがり火がたかれるなかで演じられる舞の数々は幽玄でもあり、雰囲気も抜群。中世の伝統を伝える貴重な翁舞をご堪能ください。
2024年9月現在の情報です。最新の情報は公式サイトなどでご確認ください。
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(2024/10/3更新)
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