南海電鉄高野線の大阪狭山市駅から10分程度歩いた場所に、この大阪狭山市のほぼ中央に位置する狭山池が広がっています。この池の最大の特徴は、今から1400年前の西暦616年に築造された『日本最古のダム式ため池』ということで、その様子は日本書紀や古事記にも記されているほどです。
その歴史の長さに加え、731年には奈良時代の僧である行基、1202年には東大寺を再建したことでも有名な重源、さらに1608年には豊臣秀頼に従えた片桐且元など、歴史上の偉人が時代ごとに狭山池の改修に関わっていたことも判明しており、当時の貴重な土木遺産が数多く発掘されています。
そんな歴史のある狭山池の北の畔ある「大阪府立狭山池博物館」は、平成の大改修によって発掘された、現代までの狭山池築造に関係する土木遺産を展示する施設として2001年に開館しました。池の遠方からでもみることができるキューブ状の巨大展示館は、フラッと訪れた人を「なんだあの箱は!?」と驚かせるような強烈なインパクトがあります。
大阪市で生まれ育ち、今なおも建築事務所を市内に構える安藤氏にとって、大阪はまさにホームグラウンド。茨木市にある「光の教会」や、大阪市港区にある「サントリーミュージアム(現 大阪文化館・天保山)」、河南町にある「大阪府立近つ飛鳥博物館」など数多くの代表作がありますが、この博物館はそんな中に隠れた、ちょっとニッチな大阪の安藤建築なのです。
博物館入口を通ってしばらく進むと、床が丸ごと地下にガボッと落ち込んだような水庭空間に到着します。巨大展示館の真下にこんな空間があることにも驚きですが、庭の両脇の壁から滝のように一斉に水が流れ落ちる光景は圧巻の一言。天候が良い日には虹をみることもできます。
滝と水庭による親水空間で表現することで、訪れる人々を狭山池の水の歴史空間へと引き込む幻想的なアプローチになっています。時間が経つにつれて影がどんどん大きくなり、刻一刻と水庭の表情が変わっていくのも面白いポイントです。
館内に入ってまず最初に見えてくるのは、高さ約15m・幅約60mにも及ぶ三角形状の巨大な地層断面です。これは平成の大改修で発掘された北堤の断面を、特殊な土ブロック体に貼り付けて保存したもので、築造された飛鳥時代から現代までの1400年分の地層の重なりが一目でわかるようになっています。
堤体の地層断面を実物大で丸ごと保存し、なおかつそれをコンクリートの直方体でガボッと被せてしまうという大胆な発想に圧倒されながらも、これを実現させようとした安藤氏、並びに関与した様々な方のパワーに感服させられます。
巨大な堤体断面とコンクリートの大空間に唖然とさせられますが、この堤体断面は常設展示品の一部に過ぎません。奥に進むと重要文化財に指定された木製の樋(とい)や、移築展示された江戸時代の木製枠工・大正時代〜昭和初期まで親しまれた取水塔など、狭山池の造成に関わった数々の土木遺産を観覧することができます。
鑑賞後は上のフロアにカフェが設置されており、安藤建築を眺めながら一服することもできます。さらに階段のスペースには設計事務所が作成した模型・図面が展示されているので、建築がお好きな方はぜひご自身の目でお確かめください。
夏のオリンピックイヤーでもあった2016年は、なんと狭山池築造から1400年という記念すべき年でもあり、それを記念したバルやガイドウォークなども続々と開催予定です。2016年は狭山池がアツい!この記念すべき年にぜひ「大阪府立狭山池博物館」へ一度お越しください。
博物館の最寄りとなる南海大阪狭山市駅までは、南海難波駅から区間急行で約20分ほど。急行・特急は停車いたしませんのでご注意ください。常設展示室の観覧料は無料です。特別展などの情報は、公式サイトよりご確認ください。
この記事の関連MEMO
- PR -
このスポットに行きたい!と思ったらトラベルjpでまとめて検索!
条件を指定して検索
(2023/12/8更新)
- 広告 -