木曽山脈に残る奇跡の廃村「大平宿」で楽しむ古民家宿泊

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木曽山脈に残る奇跡の廃村「大平宿」で楽しむ古民家宿泊

木曽山脈に残る奇跡の廃村「大平宿」で楽しむ古民家宿泊

更新日:2016/09/09 16:38

木村 岳人のプロフィール写真 木村 岳人 フリーライター

長野県飯田市西部、木曽山脈の山間に「大平(おおだいら)」という名の集落があります。いや、ありましたと過去形でいう方が正確でしょうか。というのも、大平は住民が誰もいなくなって久しい、いわゆる廃村なのです。

しかしながら、大平には江戸時代から明治時代にかけて建てられた古民家が在りし日のまま残されており、しかも格安で宿泊することが可能です。

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大平街道の宿場であった山村集落

大平街道の宿場であった山村集落

写真:木村 岳人

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大平の歴史は江戸時代中期まで遡ります。伊那谷の南部に位置する飯田は飯田藩の城下町として栄えていましたが、主要街道の中山道が通る木曽谷へ出るには木曽山脈(中央アルプス)を大きく迂回する必要がありました。

そこで飯田藩は宝暦4年 (1754年)、中山道の宿場町である妻籠宿と城下町を直線的に結ぶ「大平街道」を新たに切り拓き、それにより最短距離で木曽谷へ出ることが可能となったのです。その際、木地師の大蔵五平治や穀商人の山田屋新七などが大平高原に移り住み、開拓を始めたのが大平の始まりです。

大平の人々は炭焼きなどの林業や街道を利用した穀物流通などで生計を立て、またその集落は街道を行き来する人々が休憩・宿泊する茶屋町・宿場町の機能を持ち、江戸時代を通じて「大平宿」として重要な役割を担っていました。

廃村となってからも、人々によって守られてきた大平宿

廃村となってからも、人々によって守られてきた大平宿

写真:木村 岳人

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大平街道は明治時代に入ってからも飯田と木曽谷を結ぶ主要道路として利用され続けていましたが、大正時代になると飯田に鉄道が開通し、また昭和30年代には別の峠を越える国道256号線が開通したことにより大平街道の交通量は激減してしまいます。エネルギー革命により大平の主要産業であった木炭の需要もなくなってしまい、集落は徐々に衰退していったのです。

そして昭和45年(1970年)には住民の総意によって集団移住が決定され、全住民の移住が完了した同年の11月30日をもって大平は廃村となりました。雪が降る前の慌ただしい移住だったことにより家屋を取り壊す暇がなく、ほぼそのままの状態で残されたのでした。

定住者はいなくなったものの、その後も大平の家屋と環境は有志の方々によって維持がなされ、現在もNPO法人「大平宿をのこす会」によって管理されています。伝統的な家屋が軒を連ねる姿はまさに日本の原風景というべき光景で、平成16年(2004年)には山田洋次監督の作品「隠し剣 鬼の爪」のロケ地としても使用されました。

旧街道沿いに並ぶ「せがい造り」の伝統家屋

旧街道沿いに並ぶ「せがい造り」の伝統家屋

写真:木村 岳人

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大平街道の道筋に沿って並ぶ大平宿の家屋は、緩い勾配の切妻屋根が特徴です。現在はトタン屋根に変えている家もありますが、昔ながらの板葺屋根を石で留めた「石置き屋根」の家も数多く、森林資源に恵まれた山村集落らしい風情を醸し出しています。

またこれらの家屋は「せがい造り」と呼ばれる建築技法で建てられています。「せがい造り」は「出桁(だしげた)造り」ともいわれ、二階部分を手前にせり出して軒を深くしているのが特徴です。かつてはこの軒下で、旅人たちが休憩したり雨宿りをしていたことでしょう。

このような造りの町家は妻籠宿や奈良井宿など中山道の宿場町に多く見られ、山村集落ながらも宿場町の特徴を併せ持った、とてもユニークな町並み景観を作り出しています。

囲炉裏を中心とした寒冷地ならではの内部空間

囲炉裏を中心とした寒冷地ならではの内部空間

写真:木村 岳人

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標高1150メートルの高原にある大平宿は、冬になると雪に閉ざされる寒冷地です。その為、家屋の内部は囲炉裏のある広間を中心とし、それを取り巻くように各部屋が配されています。囲炉裏から出る熱が万遍なく家屋全体に行きわたる工夫ですね。

またいずれの家も囲炉裏の前面は土間になっているのですが、これは茶屋として客を迎え入れいた頃の名残です。旅人は靴を履いたまま土間に入り、床の縁に腰掛けながら囲炉裏で沸かしたお茶で一息入れていたことでしょう。

囲炉裏の上部は天井を張らずに小屋組が剥き出しになっており、見事に組み上げられた太い梁と柱に目を見張ります。山深い土地ながらいずれの家屋も質が高く、往時の繁栄が偲ばれます。

古民家に泊まって昔ながらの生活を体験しよう

古民家に泊まって昔ながらの生活を体験しよう

写真:木村 岳人

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通常、大平宿の各家は施錠されていて家屋内部に入ることはできませんが、一週間前までに「大平宿をのこす会」に申し込めば休憩や宿泊することも可能です。宿泊に必要な費用は協力費一人一泊2000円+一人300円以上のトラスト募金。すなわち一人につき2300円以上と格安です。ここまで安く借りられる古民家はそうないのではないでしょうか。

ただし民宿ではありませんので、囲炉裏の火熾しからお風呂の湯沸しまですべて自分たちで行わなければなりません。当然ながらゴミはすべて持ち帰り、翌朝も掃除をしてから帰る必要があります。アウトドア技術が必要なやや上級者向けではありますが、その分、昔から変わらない古民家での生活を思う存分楽しむことができます。

また大平宿は中央アルプスの摺古木山(すりこぎやま)、安平路山(あんぺいじやま)への登山口になっており、その拠点とすることも可能です。より気軽なアクティビティとしては、大平宿から西に行ったところにある大平峠から兀山(はげやま)への登山道が伸びており、往復2時間半程度のハイキングを楽しむことができます。

グループでわいわい古民家体験

現在は無住でありながらも昔ながらの古民家を残す「大平宿」。山深い土地ながら、これほどの伝統家屋が密集して残る例は少なく、極めて貴重な町並みといえるでしょう。しかも格安で宿泊が可能という、ほかに類を見ないまさに奇跡の廃村というべき存在です。ぜひともご家族やご友人など、グループで宿泊してみてください。昔の人々が営んできた生活の苦労と楽しさを味わえますよ。

なお宿泊をする際には下記の関連MEMOにある「大平宿をのこす会」のサイトをご覧いただき、注意事項を確認してから申し込むようにしましょう。現地では鍵の受け渡しはできず、必ず飯田市街地にある事務所で受け付けを済ませる必要があります。

また大平宿へのアクセスは公共交通機関はなく自動車のみ。冬季期間(12月中旬〜4月中旬)は積雪により道路が封鎖されますのでご注意ください。

この記事の関連MEMO

掲載内容は執筆時点のものです。

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